その部屋のドアⅦ

「美咲さん」
竹下はヒカルの返事も聞かずにドアを開けた。
「春子から緊急です。お願いします。」
「解ったわ、ごめんなさいね、今日はここまでにするわ。明日また」
「もう、来なくていいですよ。」
とヒカルが言うと美咲はヒカルの右手を取って、自分も左胸に押し当てた。速い鼓動が柔らかな感触とともに伝わった。
「私も同じよ。必ず来ます。」
　次の夜、ヒカルは「ベース」にいくか迷っていた。昨日の美咲の言葉の意味が解らなかった。というよりも妄想が思考を支配していた。欲望は言葉の意味を肉体的に解釈させた。ここしばらく、珍しくマサルとも学内で会わなかった。ただ、マサルにも同じことが起こっているのか気になった。いたたまれない思いでヒカルはウォッカをあおり、浅い眠りに付いた。