象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

100円寿司の限界と未来〜大衆が回転寿司を追い詰める

2023年02月02日 03時47分03秒 | 独り言&愚痴

 私は回転寿司があまり好きではない。正直、美味しいと思った店は1つもない。故に最近は、余程の事があっても回転寿司に足を運ぶ事はない。
 ”安くて美味しい”のが売りだが、普通に食えば千円を優に超えるし、ネタもその価格程には美味しくはない。特に夏場は、酢の匂いが店内に蔓延するし、鮮度にも疑問が残る。
 これなら、スーパーのパック寿司の方が包まれてる分、衛生的にも安心でかつ安くて自分の嗜好に合ってると思う。それに、サイドメニューの多さやテーマパークみたいな派手な店内の作りも、自分の趣味には合わない。

 ”赤字覚悟で”とか”お客様が喜ぶ姿を見たい”とか綺麗事を並べるが、果たして本音だろうか?
 1皿100円を維持し、低価格を売りにしてきた大手回転寿司で不祥事や嫌がらせが相次いでいる。その背景には、回転寿司業界の異常なまでの過当競争があると、多くの論者が述べている。
 まずは、「なぜスシローやかっぱ寿司で不祥事が?」から抜粋です。


スシローのケース

 回転寿司は外食の中では比較的コロナ自粛の影響が少なかった。しかし、ロシア=ウクライナ戦争による原油高・魚の価格高騰・輸送コストの高騰・人手不足など、値上げをせざるを得ない状況に追い込まれ、多くの問題が噴出してる様に見える。
 消費者は”安くてうまい”が当り前だと、回転寿司に過剰な期待を持つ。2000年代以降、回転寿司チェーンが取ってきた”安かろう、良かろう”戦略はスシローが主導し各社が追従し、デフレの勝ち組として成長を続けてきた。
 しかし、それが限界に差し掛かってきたのではないか。

 ”安くてうまい”は(特に今の時代)実現できる訳がない。そこを企業各社は努力と知恵を絞るが、一時的に起こせた奇跡も条件が少しでも変わると持続可能ではなくなる。
 一方で、消費者は過剰に期待しすぎた。結果、スシローの”おとり広告”事件に繋がったのではないか。
 本来できない筈の事を他社はどうやって実現してるのか?その秘密を知りたくなるのが人間だし、不正が行われたとしても不思議ではない。
 確かに、回転寿司業界は典型の薄利多売である。例えば、原価率50%とされる業界No.1を誇るスシローだが、07年→19年→21年→22年の売上(経常利益)の推移(単位:億円)は、591(29)→1991(144)→2408(216)→2813(76)と、利益率はピーク時もコロナ時も7~9%で、これも企業努力が生んだ快挙と言える。
 他の大手4社も奮闘はしてるが、売上利益共にスシローには大きく及ばない。

 そのスシローだが、厳選した食材を使う事で回転寿司ファンを歓喜させてきた。しかし、会社が大きくなる一方、国内の漁業環境は乱獲などが原因でどんどん悪くなり、価格を上げざるを得ない。事実、日本の漁協の8割は赤字で、浜値が100円の魚がスーパーでは500円で販売される流通を変えないと”乱獲は止まらず未来はない”と、漁場市場の現場は警鐘を鳴らす。
 ”昔の大手回転寿司は100円でネタも大きくうまいものを出してくれた。今は値上げしているが昔ほどでない。堕落した”と苦言を呈する人も多い。が、そもそも近海で魚が獲れなくなってるのだ。
 それを埋め合わせる為に輸入を増やしてるが、中国に買い負ける。輸送の為の燃料価格も上がり、更に日本政府は港湾の整備を怠り、今では大型貨物船が入港できる中国や韓国などの港で詰め替え、日本に運んでるという悲しい状況である。
 つまり、魚の乱獲を止め、港湾の大整備をしないと、魚価の高騰は止まらず、僅か100円で消費者が狂喜する寿司など提供できる訳がない。
 故に、スシローの”おとり広告”も、魚介類の確保が十分にできなかった事と過度な消費者の期待が生んだ悲劇とも言える。
 

かっぱ寿司のケース

 くら寿司の急成長も目覚ましいが、所詮は薄利が進み過ぎて、儲けに繋がらないのが現状である。そんな中、くら寿司の山梨県甲府市内の店長が、店舗の駐車場で車内にて焼身自殺した事件は痛ましい。
 週刊文春によれば、上司によるパワハラが背景にあったとされる。つまり、本社の過度な期待が店長を心理的に追い込まれていた可能性も否定できない。

 はま寿司は、07年は僅かに15店しかなかった。以降、コロナ禍で停滞した時期もあったが、22年は1507億を叩き出し、恐らく15年前より100倍くらいは伸びている。
 つまり、はま寿司の親会社ゼンショーは牛丼「すき家」に次ぐ事業の柱を、ハンバーガーから回転寿司へと全面的に乗り換え、大成功したと言える。
 田邊容疑者がはま寿司の取締役に就いたのは14年で、17年には営業本部長として人型ロボットを導入した。現在は撤去されたが、一時期はま寿司の顔として飲食業のロボット活用に一石を投じた。
 一方で、かっぱ寿司の親会社コロワイドは、田邉のこの様な画期的な試みを買っていた。

 その田邊もかっぱ寿司社長として成功し、(前職場の)ゼンショーにリベンジしたい心理があった。
 しかし、上位3社(スシロー、くら寿司、はま寿司)が15年で急成長したのに対し、かっぱ寿司の一人負けは否めない。
 かっぱ寿司が最も利益を上げていた04年、売上が527億円に対し経常利益は84億円で、利益率は何と15%。席数130席以上の大型店を業界に先んじて出店し、昨今の郊外ロードサイドの回転寿司大型店は、かっぱ寿司が普及させたものだ。
 05年、タッチパネルと高速レーンを回転寿司に初めて導入したのもかっぱ寿司で、常に業界の最先端を走っていた。
 かつては他社が羨み、マネする程の業態だったが、全盛期の7割程度に衰退していた。

 14年末、コロワイドがかっぱ寿司を買収し、再建に取り組んでるが、ここ8年間で6人の社長が交代する異常事態となっている。
 (ゼンショーから転職し)21年2月にカッパ・クリエイト社長に就任した田邊容疑者だが、短期間で成果を上げようと焦った挙句、はま寿司の仕入価格や売上データを盗む“禁じ手”に及んだ。
 つまり、コストカットに熱心なあまり、”安かろうマズかろう”のイメージを払拭しようとした。が、そこに根本的な矛盾がなかったか。

 09年から出店し始めた魚べいは、回転レーンを無くし、高速レーンを2段3段に重ね、出来立てを提供する”回転しない寿司”の元祖である。
 今やグッドアイデアとされ、はま寿司とかっぱ寿司も”回転しない寿司”化を進め、ここでも競争が激しくなっている。
 ただ現状は、値上げに踏み切ったスシローとくら寿司より、1皿110円にこだわるはま寿司、かっぱ寿司、魚べいの方が集客が良く映る。つまり、マイナスイメージに繋がる報道があっても、安いという理由でかっぱ寿司を選ぶ消費者は多い。
 しかし、身を削っての奉仕にどこまで耐えられるか・・・顧客志向は良い事だが、無理な価格維持は新たな問題を引き起こさなければいいのだが・・・
 以上、ITmedia Onlineからでした。


”回転寿司テロ”が止まらない

 (上で述べた様な)危惧された新たな問題が起きてしまった。
 事の発端は、はま寿司で撮影された、レーンを流れる寿司にワサビを勝手に乗せる動画だった。以降、スシローやくら寿司でも類似のイタズラ動画がSNSで次々と拡散されている。
 ただ今回の回転寿司テロは、不況の中でも値上げをしなかった100円回転寿司チェーンの店舗で起きてる。が、この背景には、”低価格の維持”と”テクノロジー化”や”ファミレス化”という戦略上の苦し紛れの課題も見えてくる。

 値段を上げられない背景には、多くの日本人の可処分所得が減っている事情があると。一方、原材料費だけでなく人件費の高騰も追討ちをかけ、その上原価率は50%に近い。
 こうした過酷な程の低価格戦略を維持する為、各社はテクノロジーの活用に必死だ。各店舗は省人化が進み、客と店員のコミニュケーションは疎遠になる。
 コロナ禍では外食産業やファミレスの苦戦が目立った一方、ファミレスと遜色ない回転寿司は家族連れを中心に好調で、コロナ禍の勝ち組とまで言われた。

 しかし、なぜ回転寿司テロが100円回転寿司チェーンで多発するのか?
 それは、テクノロジーの活用で省人化が進み、“悪ノリ”しやすい環境になってしまったとの指摘もある。
 そんな中、過去にくら寿司は、飲食店を中心に相次いだ”バイトテロ”の流れに終止符を打った実績を持つ様に、毅然とした(刑事民事の両面からの)法的措置も対策の1つとなろう。
 が、テクノロジーの問題はテクノロジーで解決するしかない。
 一例として、同じくら寿司の”抗菌寿司カバー”がある。抗菌カバーはウイルスや飛沫から寿司を守り、コロナ禍では人気が高かった。
 つまり、注文者しか開けない仕組みにすれば、防御策になる可能性は高い。更なる設備投資が必要だが、回転寿司テロによるを客離れを考えたら安いものだろう。

 元々回転寿司は、高級だった寿司を庶民でも楽しめるようにと考案された。その後、各社の熱意と創意工夫があり、誰もが手軽に安く寿司を食える様になった。今回も業界の創意工夫が問題を解決してくれる事を望むばかりである。
 以上、東洋経済ONLINE「格安チェーンで起こる特殊事情」より一部抜粋でした。


最後に〜回転寿司のジレンマ

 長々と回転寿司の苦悩と奮闘ぶりを紹介してきましたが、思った以上に値下げ競争は過酷で、様々な弊害を生んでいる。
 (元々外食産業にありがちな)現場をこき使う”ブラック体制”に加え、経営陣の不祥事や不況による原材料費や人件費の高騰、それに省人化のスキを狙った食テロの出現。
 勿論、店舗や本部の奮闘や創意工夫も大事であろうが、既に回転寿司自体に限界が来てるのも事実である。

 私の田舎にも、(あまりパッとしないが)はま寿司とかっぱ寿司がある。ずっと前には国道沿いに数件の回転寿司屋があったが、いつの間にか消え去った。
 レビューでは”店員の態度がねぇ・・”との声が多いが、その傾向は昔からの事だ。
 それに、レビューにばらつきがあるのがとても気になる。良いと悪いが極端すぎて、何をどう信じたらいいか・・・ごく偶に開店セールとかで行ってみると、ネタはパサパサで巻き寿司以外は食えたもんじゃない。
 (店にとっては)家族や団体客の方が収益も上がるし好都合かもだが、(そういう意味でも)とても私の様な個人客は敬遠される傾向にある。

 故に、どうしても寿司を食いたい時はスーパーのパック寿司(タイムセール時)を買い、晩酌のつまみにする。
 田舎にも本格的な寿司屋はあるが、ネタ的にはパック寿司とそんなに変わらない。それに、有名店であろうと微妙に値上がりした寿司を、家族連れや団体客でバカ騒ぎする店に出向いてまで食う気にはなれない。

 ”お客が喜ぶ為に”と思って無理に全国展開した100円寿司屋が、そのお客の過剰な期待と裏切りによって潰される。
 これほどの皮肉が何処にあろう。
 回転寿司業界の内部を知れば知る程に、外食産業の限界と暗い未来予想図が見えてくる。
 自宅で食えば安くて安全に済むものをあえて外で食う。そう、人は無駄に社会的に出来てるし、社会的ジレンマは格安の回転寿司の世界でも起きている。
 外食バブルが崩壊する時、人は”料理は餌に過ぎない”というの食の本質に気付くのかもしれない。いや、その餌に娯楽や贅沢を求める事こそが、回転寿司屋を追い詰めるのかもしれない。

 客は安くて美味しいという自己本位の利得を追求し、店側もそれに応えようと必死にあえぐ。
 これこそが”回転寿司のジレンマ”と言えなくもないが、度を過ぎた過当競争は消費者の過度な欲望や裏切りを呼び覚まし、お互いに不幸になるだけである。



6 コメント

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ビコさん (象が転んだ)
2023-02-05 20:30:03
貧すれば鈍する
これこそが外食産業を追い詰めてるのかもですね。
言われる通り、回転する寿司という小手先の芸に流石の日本人も辟易したって事もあるんでしょうか。
私から見れば、スーパーのパック寿司の方が回転寿司よりもずっと美味しいと思うんですが。

政治家も自分が貧するのが怖くて、鈍してます。
嫌な時代に、いや嫌な日本に成り下がったもんですね。
コメント有難うです。
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Unknown (1948219suisen)
2023-02-05 15:42:05
前の記事になりますが、この回転寿司に限らず、最近の問題の根本には日本の貧困化があると思います。貧すれば鈍するの諺の通りで客は浅ましくなり、それに奉仕する従業員の質の劣化は目を覆うばかり。日本は三流国に成り下がったのです。これからは外食できるのは一分のエリートだけになるかもしれません。かつての日本人の大半がそうであったように…。私達日本人はもう小手先の廻る寿司などには騙されまさんよ、日本の貧困化を食い止める政治家よ、現れよ!
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paulさん (象が転んだ)
2023-02-04 17:01:07
昔ながらのってやつですね。
陳列棚から好きなのをとってきて・・
私の田舎にもそういう店があって、かなり人気でした。
衛生的にもコスト的にも理想的で、何よりスペースが空く。

寿司が回転するという物珍しさが、今では災の元になる。つまり、時代も新旧前後しながら進んでいくんでしょうね。
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セルフサービス (paulkuroneko)
2023-02-04 12:42:56
寿司を回転させるのではなく
客が自ら陳列棚に置かれてる寿司を取りに行くセルフサービスを展開するのも一つの方法だと思います。
それぞれの寿司にはラップが巻かれてあり、陳列棚のガラス扉とでニ重にカバーできますし
そうすれば、寿司を回転させる設備も必要なくなるから、コストもスペースも大幅に浮くのでは

結局、客は”美味しくて安い”が目的であり、回転する寿司ではないんですよ。
昔ながらのテイクアウト式に復活の鍵があるように思いますが。 
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UNICORNさん (象が転んだ)
2023-02-04 08:30:14
流石に今回の件は
回転寿司屋に同情しますよね。
こういう事をされると、店側は何もできないし、全くの不可抗力なんですよね。

言われる通り、コロナ不況の中での一人勝ち状態で、やっかみや妬みもあったんでしょうか。
一方で”抗菌カバー”は、”回転しない寿司”と同様にグッドなアイデアだと思いました。
事実、スーパーのパック寿司もプラ製の蓋のお陰で鮮度が保たれてますから。少なくとも剥き出しの回転寿司よりも美味しく感じます。
店側には、余計なコストが掛からない有効な対策を講じてほしいですよね。
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安くて美味い (UNICORN)
2023-02-04 07:03:53
回転寿司が不況の中でも一人勝ちしてきたのは、原価率の高さにある。
その他の外食産業は、原価率が低いが為に逆に生き残れなくなってきている。
今回の事件は、そんなライバル業界の嫌がらせと考えられなくもない。

これまでは赤字覚悟でグルメ客の満足度をアップさせる一方で、ファミリー客をうまく利用し、サイドメニューを充実させる事で薄利をカバーしてきた。
こうして”安くて美味い”を維持してきた回転寿司チェーンだが、迷惑行為の監視というコストが新たに加わる事で原価率は余計に高くなる。

私もよく回転寿司は利用するが、今回の事件はチキンゲームに付き合わされてる様で納得いかない。
つまり、安くて美味いとは店側にとっては損失に過ぎないのだから、我ら利用者も値上げに対し、容認する心も必要となる。 
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