私がラーメン屋を好きになれないのは、某大手ラーメン店に面接で落とされた事も要因の1つだが、メディアで紹介され、チヤホヤされて有頂天になりかけた店主の作られ感のある仕事っぷりが妙に癪に触るのだ。
どんな業種でも規模の店でも、一家の主という自覚は必要だし、誇れる事でもある。ただ俳優やモデルじゃないし、演じる必要はない。一昔前の大衆食堂の親父みたいに、暇な時は寝そべって競馬新聞やエロ雑誌などを読んでればいい。事実、そこにはリアルで自然な空間で満たされ、だからこそ大衆はこぞって群がったのだから・・
決して安くも美味くもない素っ気ない食堂だが、色んな話題で客は賑わい、日常が充満していたし、ただそれだけで満足したもんだ。
それに比べると、昨今のラーメン屋はテーマパーク化し、メディア受けに傾倒しすぎている様に思える。全く、昔のあの自然な空間と大衆の匂いは、どこへ逃げ去ったのだろうか・・・
いま、外食があぶない
長く地味にやってきた中華屋がどんどん潰れていく。
後継者がいないとか、原材料費や人件費が高くなったとかの理由もあるが、宣伝効果が高くてインパクトの強い全国展開型のチェーン店に客がどんどん流れてしまう。
そんな時、決まった様に昔ながらの常連客は”続けてくださいよ〜残念だな”と店の老主人に縋る。だが、この言葉は厳密には本心ではない。
勿論、残念なのは本当だが、仮にその店が値上げしたら、その客は多分来なくなる。
つまり、”続けて欲しい”のは美味いラーメンが”安く食える”からであり、安くなければ客は簡単にそっぽを向く。
長年、沢山の色んな客を見て、その本性を知り尽くす店主もそんな事は承知の上だ。だから、値上げをせずに倒産を決断する。どんな世界でも、惜しまれて辞めるのが華なのだ。
某バラエティ番組では、老夫婦がひっそりと営む定食屋が紹介されていた。
”お腹いっぱい食べさせたくて・・”と、戦前戦後の貧しい時代を知り尽くす夫婦は、利益を度外視し、この店を切り盛りしている。
確かに、視聴率を稼ぐには格好の感動ネタではある。安い出費でお腹を満たし、常連客が満足して店を出ろうとすると、”これ持っていきな、余りもんだけど・・”とさり気なくおまけの惣菜を差し出す。
当然の如く、番組の最後には”これからも頑張って続けて下さいね・・”とのテロップが流れる。がしかし、本当に老夫婦とその店の事を思うのなら”もっと楽して儲けて下さい”と言うべきだろう。酷な言い方だが、”続けて下さい”とは”これからも儲けずに客の満足だけを考えて下さい”という意味が含まれる。
世の中には、”儲けない=美徳”だと信じてる人がいる。昔ながらの格安中華屋を巡って全国に宣伝し、勇気づけ励ましてると思ってるだろうが、逆に店主の首を絞めてる様なものだ。
つまり、夫婦経営の小さな飲食店が薄利で切り盛りするのは、店の体力からして自殺行為に等しい。その一方で、大手有名店の1000円超えラーメンに客は狂った様に飛びつく。初期投資が高く付く高利多売が故に、体力のあるチェーン店だけが生き残る。
結局、安い大衆中華屋に客が群がる程に、店は圧迫され、窮地に追い込まれる。
昔みたいに、ボソボソと気楽に気長にやってれば長く続けられたものを、メディアという媒体が群がったお陰で、店の寿命を短くする。
TV局側は倒産を防ごうと思ってやってる事が、逆に倒産を加速する。これも、悲しい意味での適者生存であり、自然淘汰でもあろう。
チェーン店の躍動と個人飲食店の倒産
飲食店の倒産が過去最多のペースらしい。2024年1-9月の倒産件数は650件となり、このままだと過去最多の20年(780件)を上回る、870件前後となる見通しだ。
650件を業態別にみると、居酒屋系の”酒場・ビヤホール”が160件で最も多く、ラーメン店などの”中華料理店その他”が117件、西洋料理店(90件)、バー・キャバレー・ナイトクラブの水商売系(70件)、日本料理店(53件)と続く。
深夜時間帯営業の居酒屋系と水商売系を合わせると230件となり、全体の35.4%を占める。また、大都市圏で増加が目立ち、特に東京と大阪で全体の29.8%を占めた。
負債額最大は、ビヤレストランやビヤホールを展開するアサヒフードで約90億円。650件のうち10億円以上の倒産は5件に留まり、一方で1億円未満の小規模倒産は562件を占めた。”夫婦経営”型の小規模事業者が多い飲食店業界は、食材・光熱費の高騰や人件費増などで収益を圧迫し、価格転嫁率が36%と、全業種の44.9%を大きく下回る。
つまり、コスト上昇分を価格に転嫁出来ればいいが、アフターコロナで競争も激化する中、値上げに踏み切るか否か、中小クラスを中心に倒産や廃業の増加は避けられない(以上、帝国データバンクより)。
一方で、2024年1~9月のラーメン店の倒産は47件(前年同期比42.4%増)と、年間最多だった23年の45件を抜く結果となった。また、22年の倒産はコロナ支援策に支えられ、21件の減少に留まったが、コロナが収束したにも拘らず、物価高や人手不足など業績の回復に苦労してるのが実情だ。
ラーメン店は参入障壁が低く開店し易いが、その反面、廃業率が高く、生存競争は厳しい。ラーメン店の倒産原因は販売不振が約7割を超え、負債額は1億円未満が42件(同89.3%)、従業員数は5人未満が42件(同89.3%)で、小・零細規模のラーメン店が費用圧迫と売上不振に苦しむ。
こんな厳しい市場環境の中で、滋賀県を基盤に249店舗展開する「来来亭」と苦戦する個人経営店の生き残り策を紹介する。
以下、「ラーメン店の倒産が過去最多に・・」より簡単に纏めます。
”1000円の壁”とラーメン屋の限界
2002年有限会社「やる気」を設立し、同年11月に(株)「来来亭」に変更。多店舗化を視野に入れ製麺工場も立ち上げる。強固な運営力による店舗展開で、100人以上の社長を輩出。社員独立を積極的に後押し、フランチャイズ展開も積極的だ。
京都風醤油味の鶏ガラスープに背脂をふんだんに浮かせているのが特徴で、コクがあるのに口当たりはスッキリで、最後まで飲み干せる。麺はコシのある細麺でスープとよく絡み、年齢・性別問わず”美味しい”と言ってもらえるラーメン作りを目指す。
30店舗程までは、豆田社長自身が直接指導してたが、店舗の拡大戦略として戦略策定と運営を分離させた組織に刷新。各担当者に権限と責任を明確にした組織運営に変更し、今後も安定した経営基盤で確実な店舗展開を目指す。
一方、この業界では”1000円の壁”というものが存在する。故に、ラーメン以外の粗利益が高い品揃えで利益を確保し、メニューの充実を図る事も必要だ。
事実、地域で存在感を増す町中華や”本場”ガチ中華は、個性豊かで独自の強みを持ち、店を支える家族と常連さんで一体感が醸成されている。因みに、中華料理店は店舗数5万5000店舗、市場規模は1兆1629億円(2018年)で、内訳は中華料理とラーメン店でほぼ2分される、人気の業種である。
こうした店ではオンリーワン戦略を展開する事で差別化が図れ、客は群がる。ラーメンを表看板にしてお客さんを吸引し、町中華の一品メニューで利益を稼ぐ。ラーメンは食材費が高騰すれば値上げは難しいが、中華一品なら代替食材に変更し、量の配分調整により原価調整が可能だ。
一方で、ラーメン業界はトレンドの変化が激しく、新たな味と共に次々にオープンする新規出店者と既存店の戦いの構図が鮮明で、生き残り競争は激化する。
”売上=客数×客単価”で客数を伸ばすのか?客単価を上げるのか?ラーメンだけでなく町中華で対応すれば、客数も客単価も上昇する筈だが、現実はそんなに甘くはない。
(中華ではなく)ラーメン専門店なら比較的簡単に開業できると思われてるが、開業から1年以内に閉店する店は実に4割で、3年以内には更に3割近くが閉店に追い込まれ、店の平均寿命は個人経営が約2.4年で、チェーンも含めると約5年とされる。
また、個人経営とチェーン店の割合は半々とされるが、個人経営もフランチャイズ加盟でも、安易な気持ちで開業する人が増え続ける事で競合店数は増え続け、多くのラーメン店が価格競争に埋没し、閉店へと追い込まれる。開業費用は他の業種と比較したら低いが、決して安くはなく失敗した時の損失は大きい。
以上、SPA編集部からでした。
最後に~ラーメン屋と売春宿
私は基本的に外食はしないし、特に晩酌専門だから、余計な出費が嵩む外食は、私にとってはタブーとも言える。
鮮度が命の回転寿司ならともかく、ラーメンなんてのは油ギトギトで塩分や調味料は半端なく、濃厚スープなんて塩湯にしか思えない。そんな健康に宜しくないものを1000円の壁を跨いで食べようとも思わない。
全く、都市伝説じゃないが”ラーメン党は知能が低いのでは”と疑う所もある。
だが、なぜ多くの日本人は1000円以上も払って、身体に悪い筈のラーメンに群がるのだろう?勿論、”晩酌だって身体に悪いじゃないか”と言われれば御愛顧だが、休肝日を設け、アルコールの適量を守り、脂身の少ない肉(鶏肉など)や野菜をふんだんに摂れば、そこまで身体には悪くはない(多分)。
一方で、スープを飲み干さないのがラーメン党の健康志向とされてるが、ラーメンの命はスープにある。故に、飲み干すのが店主に対する礼儀だとの声もある。トンカツ屋で健康の為だと、トンカツを1/3だけ食って店を出るようなものかもしれない。
スープが濃厚な程に人は病みつきになるし、店も長生きできると言うが、寿命が短くなっても美味しいものを食いたいとは・・・これまた欲が過ぎる。
日本列島からラーメン屋が消滅した時、日本の外食産業はどう変化するのだろうか?
町中華は勿論、回転寿司でもファミレスも大衆食堂でも、ラーメンをメニューにする事はできるし、元々ラーメンは低価格で食べれる庶民の為のものだ。
高価で高級である必要はどこにもないし、場末の娼婦と同じで、安くてそこそこ若くてヤレれば、ただそれだけでいい。
但し、外食産業がこぞってメディアに煽られ、テーマパーク化するのだけは、ご勘弁願いたい。
外食と言っても、所詮は大衆と日常の一部に過ぎないのだから・・・
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