象が転んだ

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「サイコパスインサイド」に見るサイコの脳と遺伝と環境”その5”〜社会適応型サイコの脳の仕組み

2018年03月01日 12時17分41秒 | サイコパス

少し間が空いたので、いつもの様におさらいです。

 前回は、DNAを引き継ぐ時、環境の変化で上手に翻訳できず、突然変異を起こしたり、余計なタグを受け継いだりと。環境の変化は、人間の行動や性格同様、DNAも大きく変貌する。

 脳の全ての回路が、30代半ばでほぼ完成するという事。故に、早期の環境破壊だけでなく、それ以降の環境如何でも、様々な精神疾患の元になる。

 遺伝と脳ではなく、様々な負の環境要因がストレスと絶妙にブレンドされ、同じサイコでも外性と内性に別れていく。
 ここまで読んでくると、サイコの99%は過酷な環境にあるという事かね。特に幼少時の或いは、成人になる以前のです。

 脳とか遺伝子は、ローテクで十分と。後は独りでに勝手に育っていくんです。良すぎる環境も、傲慢さを生み出すだけで。極々普通の環境こそが、理想の環境なのだ。しかし。

 
 ファロンのサイコパシーの三本の柱。①サイコ(殺戮)の遺伝子②幼児期の虐待③サイコの脳。
 彼は幼児期の虐待がなかったから、サイコにならずに済んだと考えていたが、どうも違うらしい。


 実は、彼には特殊の遺伝子があった。彼の脳は検査の結果、前頭葉と側頭葉の半分と下部、腹側の活動が殆どない。サイコパスの中でも犯罪性の高い、反社会性障害の脳であったのだ。

 しかし、彼には5−HT2Aというセロトニン受容体を大量に産出する変異体を有してる。この高性能の受容体はセロトニンを奪い取り、眼窩前皮質(OFC)を消灯させてたと。この特殊な脳機能パターンは、享楽者、社交家のそれと一致してると。頭のいい泥棒が脳内にいたんですな。

 前述した様に、欧米人のMAOA(戦士の遺伝子)は30%程で、アフリカやアジアよりずっと多い。アラブ人も欧米並みの高いMAOA比率だが、彼らは非常に大らかで大人しい民族だ。
 多分、砂漠の中での厳しい環境が、彼らを、”脳内酵素”を、脳内環境を変えたのだろうか。


 著者の思春期に起きた強迫性障害は、腹側前頭皮質のストリーム回路の過剰活動にあった。つまり、倫理性・道徳心の強迫症状と眼窩前皮質OFCと腹内側部(vm−PFC)の、”熱い認知”の機能亢進である。

 通常、青年期に入ると、冷たい認知の背外側部(dl−PFC)神経回路が成熟し初め、"熱い認知"の領野の機能が抑えられる。そして、25歳頃までに腹側(熱い脳)と背側(冷たい脳)を行き戻りしながら、"感情と理性の均衡"は成熟していくとです。


 しかし、彼の場合、十代後半に、このスイッチの切り替えが行われた時に、腹側のシステムが消灯してしまったのだ。この"熱い認知"の機能を犠牲にして、論理機能の"冷たい認知"を大きく増大させたのだ。
 故に、20代の時、このバランスが取れず、統合失調症になった訳だが。故に彼は社交的ではあったが、共感が欠如してた。

 結局、著者の脳に起きた事は、”熱い認知”の腹内側部の働きが、10代前半に活発すぎて、その反動で10代後半になり、”冷たい認知”の背外側部の回路を、増強する様にスイッチが入り、前頭全皮質のバランスに変動が生じたのだ。

 単に、前帯状皮質のスイッチの不具合で、背側と腹側のバランスが取れなかったのだけなのです。よって、腹側システム(熱い脳)は停止し、背側システム(冷たい脳)が亢進したと。


 しかし、本書で著者が重要視するのは、そんな事ではなく、知覚と情動性の2つの競合する、相互に抑制し合う回路の事で。
 恐怖や不安、攻撃性や快感といった、基本的欲動を仲介する扁桃体のような辺縁系と、情緒や道徳、感情や協調を掌る眼窩前や腹内側部との相互作用である。
 つまり、熱い認知と情動の互助作業という事か。

 この2つの領域からの出力の一部は、基底核運動領野と、脳幹のセロトニンやドーパミン細胞へと、下降(ストリーム)しながら送られ、他の一部は背外側前頭皮質へと送られる。

 そして、この背側部は受け取った信号を、動物的欲動(扁桃体)と社会的倫理的文脈(眼窩前や腹内側部)とを比較•検討するんですと。
 つまり、欲動と社会的文脈との相反する葛藤を、冷たい脳の背外側前頭皮質は眺め、決断してるのです。
 脳みそ内でも、冷静沈着な監督がしっかりと見張ってんですね。

 要するに、外性サイコパスの脳は、熱い認知が完全に停止してるから、残虐で冷酷な犯罪や罪を起こしても、何にも感じない。ある意味、犯罪者にとっては、とても便利な脳なんですね。



2 コメント

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Unknown (ootubohitman)
2018-03-27 00:55:29
こんばんわ。
人の脳みそって思った以上に複雑ですね。複雑多岐に行きわたる脳神経の謎です。互いが相互に影響しあって、様々な判断を下してる。

起きてる時も寝てる時も、色々と信号を送り合ってんですね。
NHKでも放送されてたんですが、記憶の脳というより、記憶を蓄積する海馬を
探る脳なんです。
喋ろうと思っても、喋ろうとする脳が働かないと喋れない。喋ろうとする脳があっても、その言葉群を準備する脳がないと喋れない。
これら記憶したり喋ったりする脳は最もストレスや虚血に対する影響が大きいとされ、非常に脆弱とされます。

高度な脳ほどに脆いんですね。ブログも高度なものほど脆いのですかね。無理なさらずに。
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Re:Unknown (lemonwater2017)
2018-03-27 16:59:00
こちらこそ、久しぶりです。こんにちわです。

ホント、人間て脆いですね。
 ブログも脳神経と同じで、書く人がいてネットいう送り手がいて、それを受け取る読み手がいて、そして適確なコメンターがいる。
 それらは非常に繊細で複雑で、かつ脆くもあるのでしょうか。 

ootubohitmanさん言っておられる様に、ブログを書こうとも、物を書く脳が働かないと書けない。書く脳が働いても、ブログを作り出す脳が受け付けないと書けない。

 今の私は難題で脳みそが一杯になってんでしょう。今日半月ぶりにブログを書いたんですが、もう少し時間掛かるみたいです。スンマセンね。
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