49日法要も(問題?の)香典返しも何とか無事に終わり、ホッとしたのか?重圧から逃れたのか?珍しく赤ワインを呑んでみた。
決して不味くも美味しくもなかったが、普段のようには酔えなかった。
法要が終わってから1週間以上が経つが、晩酌しても不思議と酔えない。あれほど美味しいと思ってた純米焼酎も心底、自分を開放してはくれない。
”もうそろそろ自分を開放させてやってもいいんじゃないか”って、天の声が聞こえそうな気がした。
私には法要が終わったら、ぜひ行きたい外人パブがあった。
あるサイトで偶然見つけた店だが、店の娘の写真を見る限り、北欧系の美女揃いである。
”こんな店が久留米にある筈がない”と思いつつも、(落ち着いたら)”一度足を運んでみよう”と気にはなっていた。
実は、法要で叔母たちとのバトルが終わった後、気晴らしに出かけようと思ってたが、その後の香典返しでもイチャモンが付き、なかなか脚が向かないでいた。
「束の間の侘しい息抜き」でも書いたが、1ヶ月ほど前にも柳川市の飲み屋に出かけた。しかし典型の田舎の外人パブで、お金を払って呑むに値する女でも雰囲気でもなかった。
やはり、久留米にまで脚を伸ばさないと、魅惑的な獲物には出会えそうにもないのだろうか?
最初の落胆
ボトル半分ほどのワインを開け、ほろ酔いになった頃を見計らい、電車で久留米へと向かった。まるで神様が私においでおいでしてる様にも思えた。
(寂れた店だったら駅前の焼き鳥屋でお茶を濁し)”すぐに引き返そう”
そう思うと、少しは気が楽になった。というのも本当は、納骨を終えてから羽根を伸ばしたかったのだ。
久留米の繁華街に足を運ぶのは何年ぶりだろうか?少なくともここ7、8年はご無沙汰である。
金曜日というのに、悲しい程までに閑散としている。
”これじゃ柳川と変わりないじゃないか”
少し気落ちした私は、廃墟?と化した歓楽街の大通りを歩きながら、その店を探した。7Fにあるというので、結構大きなビルかなとも思ったが、辿り着いたそのビルもほぼ半分は空テナントである。
少し嫌な予感がしたが、薄暗いエレベータに乗り7Fへと上がる。ドアは開いたままだった。店内に充てんする賑やかな声が聞こえ、中華系のオバさんが顔を見せる。
日本人でない事は、その体型からも風貌からも明らかだ。
”お一人ですか?悪いですけど今は満杯で入れません。1時間ほどしないと空きません”
”やはり、人気の店だったんだ”
私は軽く会釈して、その店を後にした。
店の表看板には女の子の写真が派手に飾られてるが、サイトで見たものとは別モノで魅惑的には思えない。
ビルを出て、そのまま帰ろうかなと思ったが、(神のお告げか)3Fにあるフィリピンパブに脚が止まった。久留米も柳川と同じく、外人パブだけは健在みたいだ。
ハッキリ言って、寄るだけ無駄な店だった。殆どやる気のないオバサンが横に座り、体型が崩れきったタレントの無味乾燥な踊りを見せつけられたが、不思議とその貧相な余韻を浸りたがってる自分がいた。
1時間ほどいて2700円なり。お坊さんの経読みに比べたら随分と安いが、少なくともこの店に”神様は存在しなかった”ようだ。
ロシアンパブかと思いきや
今度こそ、そのまま帰ろうかなと思ったが、一応再確認の為に7Fに向かった。これは神様ではなく自分の意志であった。
先程の賑やかさは消え失せている。
同じ中華系のオバさんだったが(一瞬嫌な表情を浮かべながらも)店内に私を招き入れる。
狭くも広くもない店内には、先程の店と同じく客もまばらだった。
中華系の中年女が横についた。
”ここにても中国かぁ”
ロシア系と思ってたが、どうも雰囲気が違う。女に訊ねてみると、ロシア系じゃなくフィリピンだという。
”アララのラ〜”
私は裏切られた気がした。
”ここにも神様はいない”
10分ほど無駄話をしながら、撤収するタイミングを見計らう。
すると、奥の部屋から1人の女が現れた。スラリと延びた長い脚に八頭身を思わせるようなモデル風の美人だった。
ロシア系でもなかったが、フィリピンにしては美形過ぎる。サイトで見た写真は全くのウソじゃなかったのだ。
小室圭も眞子さまとこの女を比べたら、迷わず浮気するだろうか(笑)。
周りには5人ほどのタレントがいたが、顔は??だが皆スタイルが良かった。
バブル末期だったか、久留米にフィリピンパブが数多く登場した頃、かなりの美形が繁華街を賑わしてた時期があった。
少なくとも、その雰囲気がこの店にはある。いやそう思いたかった。
横についた女は整った容貌の如く、ガードもキツい。熟成した2本の太腿の間に手を滑らせようとすると、少し嫌がった。背中に手を回そうとしても、やはり嫌がる素振りを見せる。
”やはり、ここにも神様はいない”
他にいい娘はいないか?と、私は店内を見渡した。
そうこうするうちに、女の方から私の顔に手が伸びてきた。どうやら私の顔に興味が湧いたようだ。女は私の頭を自らの首元にぐっと引き寄せ、私を支配しようとする。
私は女にするがままにした。
2、3の会話は交わしたが、その必要もなかった。
女に包まれた様な格好になった私は、少しイヤらしい質問を浴びせた。女は少しも嫌がることなく、私にもイヤらしい質問を浴びせ返す。
”ア○コの長さは?太さは?”とか、遠慮なく聞いてくる。
”神様はここにいる”
私はこのまま時間が止まって欲しいと思った。これが夢なら数分で覚めるが、これは現実である。
あっという間に1時間が過ぎた。先程の中華女が精算に来たので、迷わず延長をした。
女はずっと私の横にいて、私の頭を包み込み、自らの首元に引き寄せている。
まるで、”アナタは私のもの”って囁いてる様でもあった。事実、隣の客に”私の彼氏よ”と言いふらしてる。
確かに、イヤらしい事は何にも出来なかった(笑)。しかし、美女に包まれてる感を十全に味わう事は出来た。
私は女には何も飲ませなかったし、女も全くそういうのを要求する素振りすらなかった。
確かに、サイトで見た様な北欧系の美女ではなかったが、”お金を払ってでも抱かれたい”と思わせる女でもあった。
LOVERS
この店を眺めてて思うのだが、(当たり前だが)客はみな大人である。それにみな恋人同士の様に静かに語り合ってる。いや佇んでると言った方が正解かもしれない。
昔流行ったジャズ喫茶みたいに、男は自分の哲学を延々と語り、女は哲学を語る男を延々と抱き続ける。
そういう事を思い浮かべてるうちに、幕切れの時が来た。
私は不思議とその場を離れたかった。陳腐なエンディングのテーマが店内に流れ始めたからだ。
折角の雰囲気が台無しになった様な気がした。女も普段のタレントに戻っていた。
”仕事に戻るね”と一言囁くと、請求書を差し出し、私はお金を払う(6000円なり)。
”神様はここにはいない”
女には軽く会釈をしただけで、私は無言で店を出た。不思議と、女の顔も名前も思い出す事が出来なかった。
エレベータ内は帰りの客でごった返ししている。
私は急に虚しくなった。このビルがありふれたエロ爺と廃れたタレントの寄せ集めに思えたからだ。
私を包み込んでた女も明日からは再び仕事に戻り、タレントという無味乾燥な時間と空間を生きるのだろうか?
”ここにも神様はいない”
タクシーの運転手はポツリとつぶやいた。
”コロナの影響で全てが変わったね。もう昔には戻らんよ”
私は少し笑った。
”でもこれも悪くないですよ”
これも転んだサン流の嫌味なんですかぁ
でもロシアンパブって最近聞かないですね
新型コロナ騒ぎでもフィリピンパブはこれからも健在みたいですよ
最初に入った特は満杯でしたもの。
本音を言えばロシアンパブですが、これはこれで良しとしましょうか。
でも、久留米でこれですから、全国の飲み屋街はスカスカなんでしょうね。
叔母の呪いを解く厄払いだったんですよね。
女の抱擁が呪いを解く呪文にも思えました。やはり神様は存在したんですよね。
本当はロシアン娘に悪魔祓いをして欲しかったんですが、後のお楽しみにとっておきます。