象が転んだ

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ミイラと薬物〜真夜中の訪問者”その121”

2023年01月28日 04時58分37秒 | 真夜中の訪問者

 夢の中で私は、ある高層ビルの一室にいた。
 そこで、ある女性に呼びだされ、あらぬ噂を聞いた。
 実は、コロナウイルスのワクチン接種により、特に多くの若い女性にて、深刻な副反応やそれによる重症化が目立ち、苦痛を和らげ、病苦の進行を遅らせる為に、禁止薬物を実験的に投与してるとの事だ。
 私にそう助言した女も、ワクチンによる深刻な副反応に苦しめられ、何とか通常の日常生活を送る為に、医療用大麻を常用していた。

 私は噂の真偽を確かめる為に、助言の出処を女に聞くと、ウイルス学の権威でもある医学博士を紹介してくれた。
 私は早速、その医師の元へと向かったが、初老の男は言葉を濁し、”具体的な事は言いかねるが、今はそれしか方法がない”とだけ答えた。
 ”ワクチンよりも禁止薬物の方がずっと危険でしょう。重症化を防ぐ為にワクチンを接種してるのに、本末転倒じゃないか。本当は何があったんだ”
 医師は”実はワクチンの副反応を一時的に抑えるには鎮痛剤が有効だと判ったんだ。しかしそれが常用化し、歯止めが効かなくなっている。ワクチン接種の常用化を嫌う反ワクチン派らが、錯乱した精神状態を沈静化させる為に禁止薬物に手をつけたのだ”
 "何という事だ。陰謀説や反ワクチン説の後は禁止薬物か。でも医師が処方するのは毒性の低い薬物でしょう?それに薬物が常習化するのは予測された事でしょうに"

 

 医師は一息ついた。
 "ネット上で、毒性の強い違法な禁止薬物を追い求めるようになった。お陰で、脳も身体もボロボロになり、コロナ感染の初期症状でも死に至るケースが目立つ。本当に困ったもんだ”
 私は何も言えず、その部屋を後にした。
 ビルの各フロアでは、若い女性らが盛んに何かの勧誘をしている。
 よく見ると、薬物医療の宣伝である。
 ”今や、コロナ感染症は薬で治りまーす。ワクチンの時代は終わったし、度重なるワクチンの接種はとても危険すぎまーす”
 私は、何とかしつこすぎる程の勧誘を振り切り、助言を与えた女の所へ向かう。

 ”みんな健康そうにしてるし、肌艶もいい。とても禁止薬物の常習者とは思えないんだが・・・”
 女は私よりもずっと若かったし、プロポーションも抜群だったが、実年齢ほどには微妙に老いていた。スラリと伸びた自慢の脚だが、冬なのに南国へ旅行したかの如く小麦色に焼けていた。それに左右の脚で皮膚の色が違っている。
 私は欲情を抑える事が出来なく、女の両脚に手を載せた。
 ”皮膚病なんですか?焼けたにしては不自然だが・・それにくすみが目立つ年頃でもないでしょうに”
 少し失礼かなと反省したが、女はどこ吹く風である。
 ”薬のせいよ。あの医師を信じた私が馬鹿だった。でも最初は調子良かったの。ワクチンによる副反応に悩まされる事もなかったし、マスクなしで自由に行動できる事を謳歌していた。たまに感染して発病しても、少し強い薬を飲めばすぐに収まったわ”
 ”でも今では後悔してる?”
 ”いや後悔はしてないわ。薬物は一定以上の効果はあったし、少なくともワクチンよりかはマシだった。だってワクチンを接種する度に39度の熱が出るのよ・・こんなの耐えられる?”
 ”オレは無理だね。38度でも死にそうだ”
 ”それが人間よね。そんな時にあの医師と出会って、それで全て洗脳されたの。まだ若かったのよね・・それから博士の元でトントン拍子に出世して、博士の片腕にまで上り詰めたけど、それからが地獄”
 ”先生との関係は何処まで進んでたの?”
 ”愛人というより、タダの肉体関係よ。当時はモデルやってたし、他にも男がいたから、それで丁度良かったの・・”
 ”どおりで、各フロアで薬物の勧誘をしてた女達は美人揃いだったんだ”
 ”博士はね、美人しか雇わないの。それに美人じゃないと宣伝にならないから”
 ”自分だって、薬物アレルギーじゃなかったら、簡単に引っかかってた。実際にアンタの助言を聞く為に、はるばる田舎から上京してきたんだから”
 ”でも、これから私に起こり得る事を見たら、満更無駄足じゃなかった事がわかる筈だわ。こう見えても情深いのね”
 ”なぜ私を信用した?”
 ”うまく言えないけど、そんな気がしたのかな”
 ”つまり、便利屋ってことだ”
 ”そんなでもないわ。ホントはアンタを利用して、こっそり抜けようかと思ったけど、その時はすでにシャブ中だったし”
 ”もっとオレを利用すればよかったのに・・それに若い頃にステロイドで痛い目にあい、禁止薬物には免疫がついてるから・・でも情深く出来てんだ”
 ”人は見かけによらないわ”
 ”多分”

 

 女はコカインの粉を取り出し、ガラス製のテーブルに広げ、一気に吸い込んだ。
 女はみるみる内に灰色に変色し、やがてミイラ化してしまう。更に、ミイラと化した死体はサラサラの粉になり、ビルの外へ舞い散ってしまった。
 呆気ないほどの最後だった。
 沢木耕太郎氏の小説(「深夜特急」インド編)で、ハシシ中毒死の患者の骨はスカスカになり、燃やすとピンク色したサラサラの粉状になるとあったが、それを再現してるかのようでもあった。
 私は女の部屋を後にすると、先程の勧誘の美女たちが群がってきた。
 ”コロナだけでなく全てのウイルスに効く薬があるんです。高名な医学博士も推奨する次世代の治療薬です。幸運な貴方には、年間フリーパスの特権が授与されます。高額な次世代の治療薬が1年間タダなんですよ。これって凄くありません・・・”
 確かに女は若く美しかった。が、それは禁止薬物で捏造された(偽善ぽい)美しさだった。
 私は勧誘に乗るふりをして答えた。
 ”死に至らす薬の事でしょ?今さっきその禁止薬物の中毒症で女性が一人亡くなりました。部屋は○号室です。見れば、どんなに不条理で悲惨かが理解できますよ。勿論タダで死んでくれれば、国家にとってこれほど都合のいい事もないですからね”

 女の表情が少し変わった。
 ”その女性とは誰なんですか?”
 私は女と博士の名前を告げた。
 周囲に緊張が走る。 
 ”人は簡単には人を殺せないが、アンタらは簡単に人を殺す薬物を売りさばいてる。しかし、<死の薬>を勧誘するアンタらが死に至るんだから、これほどの効率のいい毒性の強いウイルスもない。間違ってはいませんよね”
 女たちの表情が崩れ落ちるのが見て取れた。美しい筈の女性たちが次々とミイラになっていく。
 とても現実とは思えない光景だった。

 そしてその時、夢から覚めた・・・。



2 コメント

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ビコさん (象が転んだ)
2023-01-29 21:45:39
まさに、”触らぬ薬に祟りなし”ですよね。
私も、特にステロイド軟膏と風邪薬は百害あって一利なしです。

病院側も薬を処方する時は注意深く慎重にあってほしいんですが、薬に頼る西洋医学は解剖学と共に既に限界があります。
コロナ渦でも現代の医学は大半が役に立たなかった様に思えます。

それでも、、現実には薬に頼らないと生きてはいけない人もいますから、難しい所です。
そういう私も必要最小量の便秘薬を服用してますから、大きな事は言えないんですが・・・
要は、薬の過剰服用が怖いんですよね。
そういう事が無意識に夢に出て来たんでしょうか。
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Unknown (1948219suisen)
2023-01-29 17:30:25
この話は夢ではなくノンフィクションのようですね。

いつも書いていますが、私は少しの期間精神薬を飲んだから薬の怖さは身に沁みています。だからこの話が普通の人より怖く感じられるのかもしれません。親切心から飲んでいる人に精神薬の怖さを話したのですが、その結果が精神薬の副作用以上に怖いことになってしまいました。昔から触らぬ神に祟りなしと言いますが、その通りだと思います。人には親切にするものではありませんね。それにしても生々しい夢ですね。
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