気づいたら、”鏡張りの部屋”も1ヶ月近くのご無沙汰です。マーロウが登場した所から、”シーズン2”にしてもいいんですが、そのまま行きますな。
書きたいブログが結構あって、溜め込んだブログもかなりあるので、中々捗りませんが。
それと、連日”大場政夫”ブログにアクセして下さって有難うです。”大場ストーリー”もついでに宜しくです。
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さてと、前回はようやく大御所マーロウの出番となったんですが。いきなりの尋問でダーレム(主人公の男)の緊張がこっちにまで伝わってきます。
マーロウは、軽い尋問の後、軽く会釈をして名刺を差し出した。
男の緊張感と危機感がマーロウにはすぐに伝わった。
西海岸のサンタフェで、
私立探偵をやられてんですね
名前はよく存じてます
もしかして、チャンドラーの小説に出てくる
あのフィリップ・マーロウさんですか?
マーロウは、少し顔を曇らせた。
ああ、皆よく間違えるんです
フィリップは、実は双子の兄です
でも、もう死にました
殉職と言ったら聞こえがイイのかな?
それで弟の私が兄の後を継いで
私立探偵をやってんですが
私はフィリップ・ヨハン・マーロウです
紹介が遅れました
男は少し冷静さを取り戻し、笑顔を見せる。
私こそ紹介が遅れました
ダーレム・ローガンです
二人の娘の父親です
マーロウさん、何とか二人の娘だけは
娘の命だけは、何とか助けてください
それに、妻も友人も無事なんですね
マーロウは、ポケットからタバコを取り出す。
深く一服した後、知人を宥めるかの様に諭す。
ダーレムさん、家族や友人に関しては
何も問題も心配もない
全て安心してもらっても構わない
ただ、いま貴方に変に騒がれると
家族の命が危うくなる
とにかく今は落ち着いて、
私の言う通りに行動して欲しい
わかったかね、ダーレムさん
いや、ローガンさんと言うべきかな
男はマーロウを心の底から信用した。
いや、この男を信用するしか他に方法がなかった。
男は、早速マーロウに縋った。
私の命も家族の命も、
マーロウさん、貴方に掛かってます
何を言われても、私は動じません
全てを受け入れるつもりです
一体、私に私の周りに何が起きたのですか?
マーロウは、深く息を吸った。
そして、男の目をジラリと睨みつけた。
ローガンさん、アンタは下手に動くと必ず殺される
これだけは確実に言える事です
そして家族も間違いなく、危険な目に遭う
これには大きな闇組織が関わってるんです
慎重に慎重を期さないと
私のプランの全てが水の泡になる
男は青褪めた。
事態は思った以上に、複雑かつ深いのだ。
少しのミスも動揺も焦りも許されない。
マーロウの鋭い眼光がそれを物語ってた。
マーロウさん、私は何も知らないんです
家族も何も知らない筈です。
勿論、友人も愛人も何も知らない
でも私のせいで彼らに何かが起きたら
私の全ては潰れてしまいます
冷静に対処しろって言われても、
何をどう対処したらいいのか?
この狭い部屋に閉じ込められ、
じっと息を殺し、潜伏しろって事ですか?
マーロウはタバコをもみ消し、一言呟いた。
ローガンさん、これはゲームじゃないし、
映画の一シーンでもない
”今起きてる危機”なんです
今の貴方自身をコントロールする事が
出来なければ、
貴方も家族も最悪の事態に陥る、
という事だけは言えます。
男は、マーロウに縋った。
警察はどこまで情報を掴んでんですか?
マーロウさん、貴方はどこまで知ってんですか?
俺は社会の”モルモット”じゃない
それに、私は純粋な被害者だ
悪い事など、一つも犯してはいない
全くの情報なしに
自分をコントロールしろって言われても、
出来る筈がない
そうでしょ?マーロウさん
マーロウは男の両肩を強く掴んだ。
そして、静かに言い放つ。
今の貴方は、社会の”モルモット”なんですよ
貴方が言う様に、アンタは純粋な被害者だ
しかし、アンタには守るべき家族がいる
まず、それを忘れてはならない
その為にも今は敢えて
”モルモット”になる必要があるんです
そこをご理解してもらわないと、
私の仕事は先には進まない
守秘義務とは、つまりそういう事なんです
どうかご理解願います
男は肩を落とした。
そして、何かを悟ったかの様に呟く。
わかりました
このまま”モルモット”になれというのなら、
その通りにしましょう
私はこの狭い部屋の中で
何も考えず、何も見ず、
ただ家族の無事を思って時間を潰すんですね
それが貴方のベストなプランなら
それに従います
それでいいんですね、マーロウさん?
マーロウは、少し安堵の表情を浮かべた。
男の肩に手をやり、励ますように諭す。
モルモットというのは極端な喩えです
何も考えず、何も見ずというのは
不可能な事ですよ
でも、自分をこの狭い部屋の中で
コントロールする事は不可能じゃない
私が言いたいのは、慌てず騒がずという事です
ただそれだけですよ
心配しなさんな、
貴方が思うほど警察も私もバカじゃない
それに、貴方の家族は私が思う以上に
しっかりとしておられる
それこそが”救い”なんです
男の目から涙が溢れた。
どういう事態なのかは、すぐに推測できた。
一つ言えるのは自分が思う以上に、
厄介で危険な事態だという事。
男は今の自分の役割をハッキリと自覚した。
わかりました
とにかく普通にしてればいいんですね
休日に家族と過ごす様に、とはいきませんが
出来る限りの事はやってみます
家族の事は、くれぐれもお願いします
マーロウは、男と硬い握手をし、
分かれる間際に、釘を刺す。
とにかく何があっても暴れちゃ駄目ですよ
ここは静かで辺鄙な所だ
少しでも暴れると、”脚が付く”
少しでも動くと、誤解を招く
このホテルには、
”訳ありの客”が何人か滞在してる
スパイが潜んでるかも知れない
そうでないかも知れない
今からその一人一人を調べ洗い上げるが、
私だって人間だ、ミスもあるし、ヘマもする
しかし、自分を正確に見つめる目を持ってれば
大事には至らない
必要なのは、何事にも動じない冷静さと
物事の全てを見通す洞察力です
とにかく今は、私を信じて下さい
心配なのは、貴方も私も同じなんです
では、今日はこのへんで失礼します
お元気でローガンさん、
いや、ダーレムだったね
ただ、マーロウのイメージというとハッキリと湧かないですね。マッチョじゃしらけるし、韓流系アクションスターでは幼稚すぎるし、肱雲さんみたいに長身でハンサムなら出来過ぎだし(笑)。
ただマーロウの最大の魅力は、彼が発する言葉の魔力と洞察ですかね。それ以外はごく普通の男っていう感じですかな。
とにかく、”鏡張りの部屋”では、華奢で理屈っぽい探偵ということで。
このマーロウもラマヌジャンと同じく、洞察の天才ですか。冷静さと洞察力、この2つがマーロウの武器なんですね〜。マッチョでムキムキで威圧的な私立探偵だと思いきや、結構人間味あふれる神経質な男に仕上がってます。
ここから、主役がダーレムからマーロウにシフトするんですね。そして、受付の若い女(娼婦)がどう動くのか。ひょっとして、犯して脅してハイ終わりという事はないんでしょうね〜。
とにかく、楽しみにしてます。
そうなんですよ、若い女をマーロウがどう追い詰めていくかを考えてる所です。
この女は闇社会を知ってるという設定ですから、男にとってもマーロウにとっても邪魔な存在なわけですが。敵にするにも味方にするにも私次第なんですが。
さてとどうしようかな。
これからも宜しくです。