象が転んだ

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米中貿易戦争で中国が引き下がれない理由〜日本の”失われた20年”を繰り返したくない、習近平の意地と中国のメンツと〜

2019年05月23日 04時17分35秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 合意寸前とみられていた米中貿易協議は事実決裂した(5/10)。

 この5カ月間の交渉で対米妥協を続けてきた中国政府を、土壇場で「翻意」させた本当の理由とは?

 以下、「土壇場で中国が強硬に出た2つの理由〜中国側は持久戦の構え」(Business Insider)を参考です。

 

メンツは譲れない

 先ず一つは、合意文書に調印すれば、「共産党指導の堅持」という共産党の最高指導方針を否定しかねないとの懸念。
 ワシントンでの協議終了直後、中国代表の劉副首相はインタビューで、”中国は原則にかかわる問題では決して譲歩しない”と強く言い放った。

 中国が今回の協議で求めたのは次の3点。
①合意後の追加関税の即時撤廃、
②アメリカ製品の輸入規模の縮小、
③協定本文での中国の主権と尊厳の尊重、

 つまり、共産党の”メンツは譲れない”という事だ。


 トランプが、”中国とここ数ヶ月続けてきた貿易交渉は95%まで漕ぎ着けた”と、一時は胸を張った様に、昨年12月の首脳会談以来、5カ月間に及ぶ閣僚級協議では、中国の産業補助金削減や知的財産権保護、為替政策の透明化など7分野で協定文が作成され、150頁の文言を英語と中国語で互いに詰める段階まで進んでた。
 つまり中国は、自国の法制度を変更してまでも、アメリカの要求に応える準備を進めていたのだ。

 アメリカは今回の”ドンデン返し”を、中国は一度合意した内容を白紙に戻したと、責め立てた。しかし本当にあの中国が共産党が習近平が、自国の法を曲げてでもアメリカに従う準備をしてたのか?

 ところが5/3にアメリカ政府に届いた中国の修正文書は、アメリカが要求した”法律改正の約束”を撤回するものだった。

 このアメリカ側から突きつけられた”合意案”を習近平国家主席が拒否したのだ。
 ”起こり得る結果の責任はすべて自分が引き受ける”と。中国メディアが疑問に思ってた事は本当だったのだ。


 実は対米交渉をめぐり、習指導部の姿勢はこの1年揺れに揺れた。昨年8月は、対米強硬路線が優勢だった筈だが、10月のペンス副大統領による”米中新冷戦”の脅しの後は、協調路線に転換した。

 しかしここにきて、国内のメディアや世論は”譲歩しすぎ”として、対米交渉を中心的に担っていた劉鶴批判が強まる。合意文書をそのまま実行されたら、”産業育成に関わる共産党の統治モデルそのものが崩れる”という警戒が広がった。

 この”土壇場での翻意”は、習自身が「共産党指導の堅持」という基本原則に拘った事を伺わせる。これは憲法にも明記された最重要の政治路線の一つであり、絶対に妥協できない原則なのだから。

 中国は1989年6月の「天安門事件」30周年を控え、政治的に敏感な時期に入る。天安門事件は、民主化を巡る党指導部の分裂が最大の背景であったが故に、基本原則を揺るがす事態は避けねばならない。

 

歴史と悲劇は繰り返される?

 確かにどんなレベルであれ、自国の官僚が外国政府の圧力に屈し、法律を書き換える約束をする等、中国人には考えられないし、耐えられない筈だ。19世紀半ばのアヘン戦争から20世紀半ばの第二次対戦時まで、中国は外国による征服と植民地化という屈辱の歴史に耐え続けてきた。

 米中の歴史家は、”五四運動”100周年記念日の数日後に、米中貿易交渉が決裂した事を歴史の皮肉とみている。

 事実100年前の5月4日、多数の学生たちが北京の天安門広場に集結した。第一次大戦後の、日本が山東省のドイツの権益を獲得するのを認めたベルサイユ条約に抗議する為だ。この時のデモ参加者の一部が中国共産党を創設した。そしてこの70年後(1989)の同じ時期に「天安門事件」が起きた。
 つまり歴史と悲劇は繰り返される。

 こうした経緯がある為、中国の指導者が外国の要求に従う様な姿勢を少しでも見せる事は、政治的な自殺行為になる。つまり、中国政府がアメリカに言われて法改正を約束し、明文化するのを認めるという事は、”まず考えられない”。習近平でなくとも、全ての中国人がNOと言うだろう。

 

追い詰められた習近平?

 しかし、メンツだけでは生きてはいけないのも事実。ここにきて習近平は、トランプの強引で極端な関税引上げに、自国経済がどれだけ耐えられるか、慎重に冷静に見極める必要が出てきた。

 中国の経済成長は近年大幅に減速してる。ただそれ以上に、債務の膨張が大きな問題だ。景気対策の出費がこの債務バブルに拍車をかける。
 それに、依然輸出頼みの中国経済だが。事実アメリカからの制裁関税の影響で、繊維や靴などの製造工場はベトナムなど低賃金の労働力がある国に次々に移転した。

 もしもトランプが脅し文句通り、これまで課税対象から除外してきた3250億ドル相当の中国製品にも25%の関税をかけたら、確実にこの流れは加速する。

 つまり、習近平は何らかの形で、取引に応じざるを得ない。だが最終的にどんな合意がまとまるにせよ、”アメリカの要求に屈し、法律を改正する”という事はあり得ない。
 その為に中国の国営メディアは、必死で愛国カードを強力に振りかざす。”5000年間の風雨に耐えてきた中華民族は、どんな事態に遭遇しようが決して怯まない”と、中国の国営•中国中央電視台のキャスターはそう言い放つ。
 以上、NewsweekJapanからの抜粋です。

 

日米半導体摩擦との類似

 2つ目の理由は、この問題の核心は次世代高速通信規格「5G」をめぐる覇権争いにあると、矢吹晋•名誉教授。
 それに、日米半導体協議(1980)の協定文書により、日本はアメリカに身ぐるみ剥され、結局デジタル経済で完全に後れをとってしまった”失策”をも指摘する。

 この日米半導体協定は1978年、米半導体メーカーが日本の輸入障壁や政府補助に注文を付けたのが端緒だった。”半導体の対米輸出は米ハイテクと防衛産業の基盤を脅かす”という安保上の理由でアメリカは日本を脅した。
 ”国家主導の産業政策”といい”米ハイテク&防衛産業への懸念”といい、今回の米中貿易摩擦と非常に酷似してる。


 日本はアメリカの圧力に折れ、1986年7月に「日米半導体協定」に調印したが、協定を結んだものの摩擦は消えなかった。
 レーガン米政権は翌1987年4月、日本製パソコン、電動工具、カラーTVなどに関税を100%に引き上げる措置を発動した(同年6月解除)。

 この協定が元となり、日本は次々と妥協を強いられていく。結局、協定が1996年7月に失効するまで約20年もの時間が掛った。”失われた20年”は戻ってこないのだ。その後の日本の哀れさは、言うまでもない。

 今中国が、この歴史的矛盾と不幸をを反面教師にするのも無理はない。

 中国経済がこのまま6%台の成長を維持すれば、約10年で中国はGDP総額でアメリカを抜き、世界一のGDP大国に躍り出ると言われる。しかし中国からすれば、「日米半導体摩擦」の様に、協定に縛られ妥協を強いられ続ければ、経済は確実に窒息する。

 結果、すでに危険水域にある”債務バブル”がはじける事態を招けば、中国版「失われた20年」を繰り返す事になる。米中合意文書はその”引き金”なのだ。この懸念こそが、サインを踏み留まらせたのである。

 

戦いながら様子を見る中国?
 
 今回の交渉決裂で、アメリカは”第3弾”の関税引上げ発動に続き、全中国製品に高関税をかける”第4弾”の準備に入った。
 一方、中国側も報復措置を発表した。高関税の応酬再開で、交渉の行方は見通せず、2021年の米大統領選にも影響を及ぼす可能性が。

 前出の朱教授は、中国側の今後の出方について、”中国は持久戦の構えです。10年スパンでアメリカとの冷戦を回避する戦略を貫く一方、戦術面では対抗か妥協かの2択ではなく”闘いながら妥協を求める”新方針で臨むでしょう。再選を目指すトランプ大統領の足元をじっと睨んでいます”と語る。

 

トランプの失意と失策と失脚と?

 国際政治には全くの素人ですが。こうやってアホな私にでも解る様に、プロのジャーナリストに説明頂くと、ホントに助かりますな。

 つまり米中貿易摩擦は、日米半導体摩擦の再現でもある。しかし、今の中国は大きいだけの経済力だけの国じゃない。歴史から何かを学べる、賢い大国に成長した。バブル期の日本とは大きな違いだが、こういう構図を眺めてると、”中国頑張れ”応援したくもなる。
 せめてトランプが失脚するまでは、耐え抜いてほしいものだ。

 一方アメリカが中国に仕掛けた貿易戦争は、トランプ政権にとって失策だったとの声もあるが、私も同じ様に考える。

 つまりトランプは、やり方が単純過ぎるというか、幼稚すぎる。何でも脅せば、圧力を掛ければ、言う事を聞くと思ってる。20世紀の圧力モデルが、21世紀の脅しモデルになり得る筈もない。

 

もはや脅しは通用しない?

 もはや、”圧力”と”脅し”が通用しなくなったアメリカに、どんなカードが残されてるのか?

 確かに今回の決裂は、中国にとっても大きな危機ではあるが。トランプにとってはもっと大きな失意であっただろう。

 第二回の米朝会談では、金正恩がトランプのの足元を見すぎた為に、アメリカの完勝に終わったが。今回は、トランプの怯える背中を見抜いた”中国の判定勝ち”に思えた。

 ”脅す奴ほど怯えてる”とは、言い得て妙だが。

 因みにトランプの語源は、”切り札”(仏)とか”勝利”や”征服”という意味がある。全く縁起のいい名前だが、今回ははっきりと意思表示したカードを中国が示したという点でも、中国にとっては大きくはなくとも、小さくはない”切り札”だった様にも思える。


4 コメント

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中国のことより (びこ)
2019-05-25 02:43:01
日本の弱腰が歯がゆくてたまらない。日本の政治家も、なぜもっと踏ん張らないかと思う。

アメリカに対しても、中国に対しても、ロシアに対しても、韓国に対しても・・・。

皺寄せは全て就職氷河期の青年たち(いまや中年)にいってしまった。

日本の政治家たちには、もっと日本を守れと言いたい。日本の政治家たちにはメンツはないのか!
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失われた20年 (lemonwater2017)
2019-05-25 04:01:38
今は中国がどう出るのかゆっくりと見極める必要があります。出方一つ間違えば、日本は米中戦争の戦場になる可能性が高いからです。

第二次大戦時も日本の大半の国民は日本政府を弱腰と非難しました。その結果が無条件降伏であり、都心部への無差別空爆であり、原爆投下でした。

今の日本は我々国民が思う以上に、非常に危い領域に属してます。ひょっとしたら中国より危ういかもです。

故に、今私達は冷静に米中両国の動向を見守る必要があるかもです。結局、失われた20年は戻ってこないし、戦争で犠牲になった人々も戻ってこない。

国民が成熟しない限り、政治は腐敗するだけでしょうか。
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象転さんへ。 (テレビとうさん)
2019-05-25 08:00:19
「今私達は冷静に米中両国の動向を見守る必要があるかもです。」

第二次大戦で、フランスはビシー政府(枢軸国側)とレジスタンス(連合国側)に別れて、どちらが勝っても生き延びれるようにしました。戦後、勝った方に付いたドゴールは、ビシー政府は無かったかのように扱い「レジスタンスこそフランスの本質だ。」と喧伝しました。

日本には天皇がいるので、根本部分で二分する事は難しそうです。
「勝った方が正義」なので、ぎりぎりまで様子見して、勝ちそうな方に付くしかないのでしょうか?
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TVとうさん (lemonwater2017)
2019-05-25 12:43:05
コメントどうもです。

これを機に、米中両国共に衰退してほしいんですが。分裂したアメリカが戦場になる日も遠くはないかと。

一方中国も、債務バブルが弾けるかもですが。日本は、様子見しかないですかね。
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