「刑事コロンボ」は、コロンボと犯人との軽妙なやりとりが人気でしたが、第40話の「殺しの序曲」では、世界で上位2%のIQ(=130)の持ち主だけが入れるクラブ(実在のメンサがモデル)の一員が犯人です。
その天才がコロンボとの会話中に出す問題です。さあ、あなたもこの天才殺人犯に挑戦しよう。
1枚100gの金貨が沢山入った袋が3つある。そのうちの1袋は全てニセ金貨である。この偽金貨は本物より10gだけ重い。
そこで秤(はかり)を1回だけ使って、ニセ金貨の袋を探すにはどうすればいい?
そこでコロンボは、”3つの袋から1枚ずつ金貨を取り出し、秤の上に乗せ、1枚づつ外していけばいい”と答える。
しかし、IQ130の犯人は”秤は1度しか使えないから、それはダメだ”と突っぱねる。
コロンボは、”それじゃ、うちのカミさんに相談しますよ”と、その場を後にする。
そして、コロンボが再び解き明かした答えは、以下の通りである。
”金貨のパズル”と”エラー訂正システム”
まず、1つ目の袋から1枚、2つ目の袋から2枚、3つ目の袋から3枚金貨をとり、計6枚の金貨を秤に載せる。もし1つ目の袋に入ってるのがニセ金貨なら610g。2つ目なら620g、3つ目なら630gとなり、どの袋にニセ金貨が入っていたかがわかる。
ま、答えを知れば簡単だが、すぐに答えよと言われても、そう簡単じゃない。
それに、金貨1枚の重量が100gで偽金貨が110gと事前に判ってるなら、10枚で100g、100枚で1kgの重量差があるから、3つの袋をそれぞれ抱えただけで、秤を使わなくても当てる事は十分可能だろう。
勿論、1枚づつしか金貨が入ってなければ、不可能に近いが、上の答えもまた無効になる。
故に、ドラマの設定には多少の無理がある。
そこで、金貨1枚の重量が100gだけが判ってるとしよう。偽金貨はそれよりも重いか軽いかは判らない。但し、秤で調べよというからには、同じ重さという事はありえない。
そこで本当の答えですが。
まず、3つの袋から1枚ずつ金貨を取り出し、3枚の金貨を秤に乗せる。もし310gだったら、偽金貨の重さは110gだし、290gだったら、偽金貨は90gという事になる。
つまり、1度だけ秤に乗せる事で誤差(ここでは±10g)が解る。
故にこの誤差が解れば、どれが偽金貨であるかを個別に測定しなくても、コロンボが解き明かした様に、たった1度の測定(秤)で知る事が出来る。これは、3つの袋じゃなくても100の袋でも10億の袋でも同じ事です。
要するに、適当な情報(ここでは金貨の重量)が判ってれば、僅か2回の測定で偽物の重さと量と偽物そのものを指摘する事ができる。
これは、”エラー訂正システム”と言われるもので、これこそが模範解答となります。
因みに、”エラー訂正システム”に関しては、「エラー訂正回路入門」を参照です。
結局ドラマでは、この”エラー訂正システム”を使い、”金貨のパズル”の謎を簡単に判り易く紹介する為に、少し無理のある設定になったんでしょうが、頭の体操にはもってこいですね。
でも私がコロンボだったら、偽金貨の重さを巧みに聞き出し、3つの袋をそれぞれ持ち上げ、秤を使わずに当て勘で、偽金貨の袋を当ててみせますが・・・
それこそが、コロンボ流”金貨のパズル”だったんでしょうが、コロンボにしては珍しくテンションが高かったですね。
The Bye-Bye Sky High IQ Murder Case
「殺しの序曲」の原題は「The Bye-Bye Sky High IQ Murder Case」(1977)です。
世界でトップレベルのIQを持つ人が集まる”シグマクラブ”で起こる殺人事件。
クラブのメンバーである会計事務所の経営者オリバー・ブラントが、友人で共同経営者のしかもシグマクラブのメンバーでもあるバーティを殺害した。動機は、オリバーの横領を知ったバーティが世間に公表すると脅した為だ。
このドラマでは、殺害のトリックが異常に緻密であリ過ぎて、”金貨のパズル”同様に、少し現実味に欠けました。
それに犯人のオリバーが頭脳明晰の割には短気で、容疑をかけられるに十分過ぎる程の素性を持っていた事も少し拍子抜けでした。
しかし、オリバー演じるセオドア・バイケルは、とても好感の持てる俳優さんですね。
でも、まさかコロンボのような”計り知れない程の頭脳の持ち主”が担当刑事として自分の前に現れる事だけが、唯一の誤算だったんでしょうか。
それに、作品中に登場するクラシック音楽は、チャイコフスキーによる幻想序曲「ロメオとジュリエット」ですが、思わずうっとりとしてしまいました。
この頃のドラマには、個性的で優秀な俳優陣が数多く出演してます。
私がこの頃のアメリカのTVドラマが大好きなのはそのせいです。
それに比べ、今のTVドラマは・・・
100つの袋の場合(補足)
もし1つ目の袋に入ってるのがニセ金貨なら110g+5049×100g。2つ目なら110g×2+5048×100g、3つ目なら110g×3+5047×100g、、、100つ目なら110g×5049+100gとなり、1回の測定(計2回)だけで、どの袋にニセ金貨が入っていたかがわかる。
つまり、合計2回の検査だけで偽金貨が入った袋を発見できますね。一応補足でした。
秤を2回使うだけで、ニセ金貨の重さとニセ金貨の入った袋がわかるということでしょうか。
殺害のトリックは金貨のパズルほどに単純ではないのですが、コロンボが頭を抱えるシーンは印象的だったみたいですね。
金貨のパズルは結構有名なもので、少しサイトをググって参考にしました。
記事にするほどでもなかったんですが、コロンボ刑事の真剣な表情が印象的だったです。
この問題の現実的な欠点は、100袋あったら、(100+1)*100/2≑やく5000枚近くの重さをはかって、しかも、手で持ったくらいではわからない、微妙な重さの違いの誤差が出ない精度で、重さが量れなくてはいけないという点にあります。
確かに現実的に見れば、多少の無理はありますね。それが数学と言えばそれまでですが。
でもドラマとしてみれば、とても面白かったです。
コメント有り難うです。
googleでは、”エラー訂正+刑事コロンボ”で、うちのページ検索でるんですが、bingでは引っかからずでした。今回暇に任せてけんさくしたら、ここにたどり着きました。
一部だけ引用だめでしたら、トップページと、このページの2カ所リンクさせてください。
どれが偽物かを一回測定で調べる所までですが。
60年代に読んだパズルの本にでていたものが、たぶんそのまま、再掲されてました。
そういう私もnew3さんの記事を勝手に参考にさせてもらった立場ですから。
これからも色々と教えて下さいね。
こちらこそ宜しくです。
http://new3room.darumasangakoronda.com/
のブログの、右上ブログ内検索で、コロンボというキーワードで、読んでいただけると光栄です。
実は、象が転んださんもNHKの再放送みてこのページかかれたんだと思いますが、その放送直後だけ、ワイのエラー訂正ページの検索回数が増えてました。googleからお知らせがあったかな。
こちらのへのリンク張り作業は終了しました。
ご挨拶まで。