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リーマン予想と素数の謎、番外編その5(19/02/23更新)〜アーベルの総和法とゼータの収束と〜

2018年02月18日 10時35分22秒 | リーマンの謎

 前回”旧その2”で触れた、整数域(>0)のゼータ関数ζ(s)の特殊値ですが。仮に、範囲外である、s=0と−1を入れてみましょう。すると、

ζ(0)="1+1+1+•••"=−1/2、 
ζ(−1)="1+2+3+•••"=−1/12、
と、現実では考えられない値をとるんです。

 というのも、整数域のゼータは負の数では収束せず定義できないんです。故に、級数を””で囲ってんですが。以下でも述べる様に、リーマンゼータにては、これは正しいんです。


オイラーの危険な考察?_________

 上の2つの”奇妙な等式”は、1749年にオイラーが”危険な”計算を用いて証明するんですが。詳しくは、”4の3”を参照です。

 テリー・ガノンはこの等式を”自然科学において最も注目すべき公式の一つ”と評した。

 上述した様に、ζ(−1)="1+2+3+•••"=−1/12は、”オイラーの考察”(1749)と言われ、リーマンが解析接続を使い、複素領域のゼータではこれが正しい事を証明しました。

 以下でも述べるんですが。ラマヌジャンは、オイラー=マクローリンの総和公式を使い、ヒューリスティックスな手法でこれを証明します(1913)。オイラーは危険な計算で、ラマヌジャンは奇怪な計算式で、この奇妙な等式を証明する辺りは、実に興味深い事です。


 ”番外編”として、”その5”から4回に渡り、
ζ(0)="1+1+1+•••"=−1/2を”アーベル総和法”で、ζ(−1)="1+2+3+•••"=−1/12を"振動アーベル総和法"を使い証明します。

 横道に逸れますが、説明不足も多々あり、この4話を順に更新していく予定です。

 因みに、この”アーベル総和法”に関しては、この”その5”から”その8”にまでの4話に渡りますが。これは、https://xseek-qm.net/Regularization.htm、を参考にしてます。”なぜゼータ関数の自然数の和は無限大に発散しないのか?”で検索した方が早いですかね。更新も進んでるみたいで、とても参考になります。
 出来るだけ忠実に紹介しようと思ったんですが。途中で挫折し(悲)、アーベル総和法のみの紹介です。
 
 ”アーベル総和法”を用いなくても、ゼータの特殊値の収束に関しては、上述したオイラーの考察とリーマンゼータによって証明されてますし、”4の3”で説明してるので消そうかとも思いましたが。
  
 別の視点で、”ゼータの収束”を眺めるのも悪くはないかと。故に”番外編”とします。

 

自然数の総和とアーベル総和______

 自然数の総和(1+2+3+•••)は勿論、発散する無限級数ですが。この部分和であるΣ(k=1,n)=n(n+1)/2にて、nを無限大に持っていけば、当然無限大になり、収束する筈もないんですが。

 実はこの発散級数が、”数学的”に意味のある数字(収束値)を持つ事で、その値は複素解析や物理学における場の量子論などの分野において応用があると。

 発散級数から有限値を引き出すオイラーの方法を”総和法”と呼びますが。様々な総和法が発見され、様々な発散級数に有限な数値を割り当てる事を可能にしたんです。
 それにしても、オイラーの勇気と考察には頭下がりますね。


 しかし、この"アーベル総和法"を使っても発散する自然数の総和("1+2+3+•••")は、振動アーベル総和法(減衰振動総和法)を新たに定義する事で、収束させるのですが。
 方法としては、非常にゆっくり減衰し、振動する収束因子を発散級数に掛け合わせ、収束させます。
 
 勿論、通常の総和(1+2+3+•••)は、有限項で発散しますが。この"新しい和"にて、有限項では従来の和と等しく発散しますが、無限項では−1/12に収束するのです。何だか夢みたいな話ですが、まんざら夢でもないんです。

 平ぺったく言えば、発散する筈の無限級数に指数関数を噛ませ、収束させようとした"アーベル総和法"を進化させ、更にCOS関数を噛ませる事で総和を強化し、収束させると。
 つまり、”数学的な力”で収束させると考えたら判り易いか。


 僅か26歳で他界したノルウェーの偉大な数学者ニールス・ヘンドリック・アーベル(1802〜1829)は発散級数を収束させる為、1829年頃に”アーベル総和法”を導入します。このアーベルという数学者も、オイラーやリーマンにも引けをとらない、"知の巨人"なのです。イラストでも解る様に結構なイケメンですね。
 アーベルと言えば楕円関数やアーベル群が有名ですが。アーベル方程式、アーベル積分、アーベル関数、アーベル多様体、アーベル幾何学などリーマンやオイラー同様に、アーベルの名を冠している数学用語は多いですね。

 

アーベル総和法とグランディ級数____

 さて、本題に入ります。

 まず、1−1+1−1+•••という公比1の無限交代等比級数を考えます。ここで無限級数の公式(初項1、公比 r の等比級数{an}、Σ[n=1,∞]an=1/(1−r)、(−1<r<1))を使います。
 因みにこの級数は、グランディ級数と呼ばれ、チェザロ総和法でも収束させる事が出来ますが、アーベル総和法ではより扱いの難しい交代級数 ”1−2+3−4+•••”をも1/4に総和できます。これは次回に回します。
 
 この公式の証明ですが。
 S=1+r+r²+r³+•••の両辺にrをかけ、S−rS=1となり、S=1/(1−r)。故に、初項1、公比rの等比級数S=1+r+r²+r³+•••=1/(1−r)を得ます(訂正です、スンマセン)。この無限等比級数の公式は以降、腐る程出てきますからよーく覚えときましょう。
 
 そこでこの公式に、r=−1を入れると、1+(−1)¹+(−1)²+(−1)³+•••=1−1+1−1+•••=1/(1−(−1))=1/2となりますが。公比−1は範囲外だし、答えは0又は1の筈です。

 ここで、"アーベル総和法"の登場です。数列{an}に対し、S=Σ[k=1,∞]ak=a₁+a₂+a₃+•••の時、Sa=”a₁+a₂+a₃+•••”=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]ak*e⁻ᵏˣ、と定義されるものです。これを使い、新しい級数Sa("新しい和"の事で、特別に""で括ります)を考えます。アーベル総和をSaと名付けます。厳密にはSa(x)ですが、アーベルのaという事で。
 1の代わりに、x→0+の時、1に限りなく収束するe⁻ᵏˣを、数列{ak}に噛ませ、収束を計るですね。

 因みに、{an}と{ak}の表記に関しては、nとkの下付き英字がないので、悪しからずです。またeˣは指数関数の事でexp(x)とも書き、eはネイビア数(e=2.718281...)と呼ばれます。

 ここで、"1−1+1−1+•••"をアーベル総和Saで表すと、Sa="1−1+1−1+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞](−1)ᵏ⁻¹e⁻ᵏˣ、0<x(≒0)、となりますね。
 xは限りなくゼロに近い正数なので、有限項Nではxを0とすると、lim[x,0]Σ[k=1,n](−1)ᵏ⁻¹e⁻ᵏˣ=Σ[k=1,n](−1)ᵏ⁻¹に近付き、この等比級数はゆっくりと減衰振動します。グラフを書けばよく判るんですが。

 ここで、有限項を持ち出すのは、イメージなんですね。アーベル総和法で、通常のこの無限級数がどの様に変化するかをイメージするんです。

 これに、初項:e⁻ˣ、公比:−e⁻ˣの、無限等比級数の公式を当てはめ、実際に収束する事を確かめます。
 Σ[k=1,∞](−1)ᵏ⁻¹e⁻ᵏˣ=e⁻ˣ−e⁻²ˣ+e⁻³ˣ−•••=e⁻ˣ/(1−(−e⁻ˣ)。x→0+より、x=0を入れると、e⁻⁰/(1−(−e⁻⁰)=1/2。
 これは、有限項のグラフと同じ様に、減衰していき、最後は0に収束します。
 
 この結果から、1+r+r²+r³+•••=1/(1−r)の公比rは、−1≦r<1に拡張され、この無限級数は、減衰振動により収束し、収束しない筈の級数を収束できました。
 机上の空想論が現実と化したのです。あくまで、"1−1+1−1+•••"という交代等比級数(グランディ級数)での話ですが。

 

ラマヌジャンのトリック________

 因みに、インドの数学者ラマヌジャンは1913年に既に、次のように計算しました。
F=1−1+1−1+•••とし、これを1つずらして足し、2F=1+0+0+0+•••=1と、F=1/2をアッサリと導きましたが。この級数の最終項の極限は0ではないので、勿論、この計算方法は”危険”とされますが、結果は見事に当ってます。


 次に、公比1の無限等比級数S=1+1+1+•••を考えます。これも通常なら発散するんですが。

 ここでまた、前述の"アーベル総和法"を使い、Sa="1+1+1+•••"=lim[x,0]Σ[k=1,∞]e⁻ᵏˣ、0<x(≒0)、と定義します。この等比級数も、明らかに指数関数の効果でゆっくりと減衰していきます。

 これも又又、前述のラマヌジャンが、S−F(=1/2)=2Sと計算し、S=−1/2を簡単に得ます。勿論、”危険”な計算ですが、結果はモロ当ってます(笑)。奇才ラマヌジャンの洞察も半端ないですね。このラマヌジャン的考察をヒューリスティックスと呼び、手っ取り早く解を得る事ができる方法ですと。

 

振動アーベル総和法__________

 ここで、上と同様に、無限等比級数の公式を当てはめ、Σ[k=1,∞]*e⁻ᵏˣ=e⁻ˣ/(1−e⁻ˣ)。x=0を入れると、e⁻⁰/(1−e⁻⁰)=∞となり発散します。
 ここでアーベル総和法の限界です。そこで、新たなアーベル総和法の定義を考えます。

 この公比1の等比級数が非常に長い周期で振動してると仮定します。故に、"振動アーベル総和法"という”新アーベル総和法”を定義します。
 
 ここで、"振動アーベル総和"を、Ha(x)=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]e^(−kx³)*cos(kx)で定義します。この公式の証明は私には無理っぽです(悲)。

 そこで、減衰振動する公比1の無限等比級数の振動アーベル総和を、Ha(x)="1+1+1+•••"=lim[x,0]Σ[k=1,∞]e^(−kx³)*cos(kx)とします。実際、x=0.05を代入し、オンラインで計算すると、Ha(0.05)=ー0.49999•••≒−1/2となるそうです。
 
 故に、"1+1+1+•••"の(発散)値が、"振動アーベル総和法"を使えば、−1/2になる事が解りました。架空上のトリックが現実のものとなったのです。何と不思議な事でしょう。
 xは0に近い小さな数ですが、この数の効果で非常にゆっくりと振動します。
 よって、ζ(0)=”1+1+1+•••”=−1/2となるのです。あくまで、”新しい和”という概念上の話ではありますが、現実の話でもあるんです。

 この”新しい和”の概念と、アーベル総和Saや振動アーベル総和Haとの違いを頭に入れてです。この”新しい和”を総和法上での和と覚えとくと、解り易いですかね。
 
 今日はここまでです。更新が長くなり、悪しからずです。



4 コメント

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キツネに抓まれたような (paulkuroneko )
2018-02-20 14:39:54
こんにちは、
アーベル総和法ですが。収束する指数関数を無限級数にかけ合わせ、収束させようとの事ですが。公式に当てはめると実際に減衰するというから、とても不思議です。

何だかキツネに抓まれた様で変な気分です。
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Re:キツネに抓まれたような (lemonwater2017)
2018-02-20 19:54:46
再び、今晩わです(笑)。

 数学というのは、考えたら負けですね。そうなるんだとイメージしてかからないと。頭がおかしくなる。
 でも、発想自体は単純なんです。e関数とかcos関数をくっつけるだけですから。でもその後が、それを証明するのがですね。

 アーベルやオイラーやリーマンみたいな知の怪物が今の時代に生きてたら、どんな時代になってんでしょうか。
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何だか頭が混乱する (unknown)
2018-03-01 04:59:23
考える程に混乱しますね。
確かにイメージで理解出来なくもないのですが、”新しい和”という世界がどうもしっくりこなくて、無理やり収束するように仕込んだ様な気がして。

アーベル総和法の方は、実際に公式に当てはめ、証明してる訳だからトリックには見えないけど。

振動アーベル総和の方は考えようではインチキにも見える。でも、宇宙の果てまで拡張させたら、自然界で発散したとしても、やはり収束するのかな。
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Re:何だか頭が混乱する (lemonwater2017)
2018-03-01 13:14:18
全くです。

 10日に1回位しかこういったガチな本には目を通さないので、少しでも考えると頭が混乱しますね。

 イメージとしては、通常発散する級数も、無限という領域には、宇宙の果ての様に、発散しながら収束すると。広がりながら萎む、つまり発散しながら収束するというか。

 その宇宙の果てに相当するのが、振動アーベル総和に近いのでは。恒星が爆発する時、無限に発散する様に思われるが。広大な宇宙の中ではまたたく間に闇の中に包み込まれてしまう様に。

 私達が目にする星の光とは、爆発した時の光が何億光年も掛けて、辿り着く光の残像であり、私達の目に届く頃はその星も既に跡形も無くなってる。

 つまり、有限での世界では私達が目に出来る無限の光も、無限の世界では萎む前の儚い残像なんですかね。

 解析によって引き伸ばす程に、発散する無限級数は、薄く薄く引き伸ばされ、消えてなくなるのか。拡張する空間が広く大きいほどに、自然界に存在する有限上の数字とは、とても微弱なものかも知れない。

 長々とスンマセン。
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