象が転んだ

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「サイコパスインサイド」に見るサイコの脳と遺伝と環境”その4”〜外性サイコパスと内性サイコパスとの違い

2018年02月19日 12時28分47秒 | サイコパス

 サイコパスもいよいよ佳境です。そうでもないか(笑)。

 〈その1〉では、サイコの脳(=冷めた脳)を、〈2〉では、悪の遺伝子が衝動殺戮にサイコの脳が計画殺人に結び付き、環境因子がそれら悍ましい犯罪行為を、決定付け。そして、〈3〉では、サイコの脳と悪の遺伝子が絶妙にブレンドされ、増殖して行く事をです。


 著者であるファロンがサイコの脳を持ち、遺伝子もサイコパスのもの(本人も家族も戦死の遺伝子を持ってた)であった事は先も述べましたが。
 この著書の最大のテーマである、外性サイコと内性サイコの一番の違い。それに、サイコパス犯罪者の99%が、幼児期に虐待を受けてたという事実とデータ。

 発育過程で、環境と遺伝子は数多くの方法で相互に作用し合うという。
 一つ目は、遺伝と環境の相乗効果。血で血を洗うではないが、暴力が暴力を招き、確実に継承されると。

 二つ目は、"エピジェネチック·マーキング"(余分なタグ)。聞き慣れない言葉だが。この科学情報を担う小さな断片は、太古の時代から受け継がれてきたもので、環境ストレッサーにより誘発される遺伝子コードの一つだと。"天性と育ち"の相互作用の基盤となるんですな。

 このエピジェネ的相互作用は、免疫疾患(代謝•癌•感染病)への感受性や統合失調症やサイコパスに至る、精神障害の一部を理解する大きな鍵となるそうで。何だか複雑になってきますが。

 それに、もう一つのエピジェネである"エピジェネチック·チェンジ"とは、"遺伝子の突然変異"の事。エピジェネチックスにより、DNAからRNAへ翻訳されたメッセージはタンパク質へと転換されるが。翻訳される過程で、メッセージが変わったり削除されるそうな。ここら辺は少しややこしいですね。
 
 つまり、ゲノムとは生まれた時に受け継いだ本であり、エピゲノムとは、貴方が本を読む、その読み方であると。つまり、気難しい翻訳屋さんですな。DNAの配列を変える事なく、DNAの働きを決める仕組みを担ってると。


 さて、皆さんがよく耳にする"レトロウィルス"ですが。勿論、古いウィルスではないのですよ(笑)。これは、遺伝子の"第三の秩序"と言われるトランスポゾンの事です。
 このトランスポゾンとは、ゲノム上の位置を転移する塩基配列の事で。"動く遺伝子"、転移因子とも。

 つまり、レトロウィルスとはトランスポゾンの一種で、DNAの断片が直接転移するのをDNA型といい、RNAの断片が"逆転写"するのをRNA型といい、レトロウィルスと呼ぶそうです。
 この転移は突然変異の原因と成り得るが、多様性を増幅する事で、生物の進化を促進してきたとされます。このトランスポゾンは、遺伝子組み換え技術等でも使われるそうで。


 先に述べた、"エピゲノム(遺伝子の翻訳屋)"の最も有り触れた機能の一つ。これこそ、人生早期の環境ストレッサーが、メチルとかアセチルとかいう、小さな化学基を遺伝子の"ヒモ"に付加させ、遺伝子の活動を制御してるというのです。

 つまり、"エピゲノム"は、"タンパク量"を変化させ、脳回路の神経伝達物質のバランスを変え、思考や感情や行動の変化を生み出してるのだ。脳みそがタンパク質を欲しがるのも、これで理解できますな。
 小さい頃は、良質のお肉を食べさせましょうね。ご飯ばかりじゃ、デブでアホになるだけだよ(笑)。もっと判り易く言えば、ご飯で道路は出来るが、インターチェンジは出来ないと。

 これら主要な環境ストレス(虐待や薬物、妊婦の不安やアレルギー食物)は、この"余分なタグ"を遺伝子に付着させ。そして、この事がサイコパシーの病因論や原因群の重要な鍵となるのです。パソコンの厄介なレジストリと同じですな。でも、遺伝子は定期的にフォーマットできないしね。
 

 さて次は、ゲノムから離れ、脳機能の成熟についてです。

 "熱い認知"の脳領野は、幼児期の早い段階で発達し成熟する。"冷たい認知"の脳領野はそれよりも遅く成熟し、個人差も大きいと。更に遅れて、思春期に"性ホルモン"が放出し、これら皮質の結合を固定させます。つまり、情緒が先で、お勉強は後でいいんですね。

 思春期を過ぎると、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリン(血圧血糖ホルモン)などの、重要な神経伝達物質の前頭前皮質(PFC)への入力が成熟するそうで。
 また神経伝達物質の層分布が完成するのは20代で、脳はほぼ完全に成熟すると。

 前頭前皮質は20代半ばで、脳の全ての回路バランスは30代半ばで、ほぼ完成すると言われます。統合失調症や躁鬱病のようなモノアミン系疾患が明白な症状を表すのもこの時期だと。
 つまり、サイコパシーは早い段階で発見可能だが、モノアミン系精神障害は、主要な神経結合が成熟するまでは、完全に現れないのです。フムフム、解った様な、わからん様な。

 ストレスが、このモノアミン系精神病を促すのは、ストレスがコーチゾル(血圧&血糖ホルモン)を大量に分泌させ、免疫機能を低下させると。お陰で、モノアミン(神経伝達物質)を阻害し、ドーパミンが皮質内で大量に氾濫し、気分の激変化を生じさせるのだと。

 つまり、ストレスがホルモンバランスを崩してしまうんですね。精神疾患も、サイコパスと同じ様に、"脳と遺伝と環境"が密接に絡みあってんですね。


 最近耳にする言葉ですが。ストレスに強い子供と弱い子供。前者はインディゴチルド、後者はオーキッドチルドとも呼ばれ、都市伝説化しつつありますね。

 一方は、共感に富み、独立心旺盛、IQも高く、直感的で権威を異常に嫌う。他方は、ストレスを異常なまでに感じやすく、繊細で愛情豊かに育てられると、見事に開花する。『幻滅』のリュシアンと同じですな。全く、ここでもバルザックです。


 この事は、外向性と内向性の違いもあるが。前述したセロトニンの"運び屋"とも大きく関係してる。しかし、感受性が高い事はマイナスでもあり、プラスでもある。もし、サイコの脳と悪の遺伝子を持つ著者が、極悪な環境で育ったなら、ギャングのボスになってたであろうと。

 しかし、子供に愛情を与えすぎても馬鹿げてるし。特別に悪い環境や悪いDNAでなければ、子供は一人でに育ち、なりたい人間になっていく。植物も人間も、"過度"ではなく適度なストレスと世話により、見事に開花するんです。
 
 結局、厳しく育てても、過保護に育てても、上手く開花しないんですね。長文失礼します。ここまでです。



2 コメント

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サイコパスとドーピング (paulkuroneko )
2018-03-04 14:57:11
ドーピングのゲノム操作ですが。植物や動物に対して行われてきた、タブーとされる実験をトップアスリートにも施そうという、とても危険な試みです。

理論からすれば、ゲノムの位置をずらすだけですが。サイコ系犯罪をなくす目的で使われるならまだしも、アスリートに使えば立派な犯罪でしょう。

でもアスリートもそれを覚悟で使用するのですから同罪かもしれませんが。類は類を呼ぶのですね。だからドーピングはなくなる筈もないのでしょう。

サイコとドーピングが密に繋がってる事も興味深いです。転んださんはそういう事を意識して、ブログに書かれてんでしょうね。
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Re:サイコパスとドーピング (lemonwater2017)
2018-03-04 22:56:35
こんばんわです。
全くの偶然ですね。

リーマンやアーベルじゃないけど、発散するはずのモノが収束するというか。

複雑なものほど最終的には収束するかと。様々な分野に拡張する程に。

サイコパスとドーピングとベースボールとオリンピックと。政治と金儲けと、人間の強欲と。全ては繋がってんですね。悲しい事ですが。 
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