象が転んだ

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「空母いぶき」迎撃ミサイル当たり過ぎ〜専守防衛が先か?敵地攻撃が先か?〜

2020年01月05日 04時57分10秒 | 映画&ドラマ

 「空母いぶき」を見た。とても面白かったし、臨場感や緊迫感も抜群だった。ハリウッドのスケールが大きいだけのガサツなアクション物とは、一線を画してた様にも思えた。

 日本も、これだけの作品が作れる様になったんだなと、少し胸が熱くなった。一時はチャンバラ映画しか作れなかった島国だったのに。
 一方で、軍事力で国を守るという事が、”絵に描いた餅”である事にも気付かされた。それでも、必死で全面戦争を避けようとする人間ドラマも見応えがあった。

 確かに、粗や欠点も沢山あった。コンビニのシーン(中井貴一さん思い切り余計)やネットニュースの記者が平気で動画を漏らすシーン(斉藤由貴さんもハッキリ言って余計)など、なくても構わないシーンが結構あった。
 それに北朝鮮をイメージした敵国(東亜連邦)の戦術や戦力がやや貧相すぎる点なども。

 最後の最後で多国籍軍と国連軍が勢揃いしたシーンも、今から思うとわざとらしかった。
 でも、ハープーン対艦ミサイル、アスロック(魚雷)、主砲、対空砲、デコイ(おとり)など戦争専門用語を、全くの素人でも判り易く描写してくれてはいた。

 個人的には、東亜連邦が一斉に放った200発程の弾道ミサイルが日本を襲い、結局「空母いぶき」は何も出来ないまま、日本全土が焦土化するという悪夢に艦長の秋津(西島秀俊)がうなされ目が醒める所で、幕が降りるというのもアリかなと思った。


迎撃ミサイルの命中率って?

 それ以上に気になったのが迎撃ミサイルの的中率が高すぎた事だ。
 そこで、実際の的中率はどれ程なのか?

 日本のMD(ミサイル防衛)システムは、飛来する弾道ミサイルをイージス護衛艦から発射した艦対空ミサイル(SM3)で迎撃し、討ち漏らしたら地上配備の地対空ミサイル(PAC3)で対処するというものだ。
 色んなサイトで調べると、1/3から100%まで様々である。果たしてどれを信じたらいい?

 肝心の的中率だが、これにはバラツキがある。米ミサイル防衛(MD)システムの命中率はたったの”44%”だったとの寂しい報告(2017)もある。
 事実オバマ大統領政権時は、”総額3千億ドル(30兆円)以上を費やした迎撃ミサイルなどの防空システムは本来の目的を達成できない”との判断を下していた。
 実質は、この数字よりも的中率は落ちると専門家は見てる。日本のMDシステムもアメリカが開発したものだから、これと同レベルとされる。
 この箸にも棒にも引っ掛らない?レヴェルの防衛システムを改善&整備する為に、米空軍は日本の大学研究者128人に8億円もの資金援助をしたとされる。
 つまり、ミサイル防衛の”伸びしろ”は十分に残されてる訳だ。そういう意味では、日本の科学者は現時点で先端的な軍事技術の研究を行う能力と環境を備えつつあるとも言える。
 
 一方で、アメリカで行なった実験ではイージス艦搭載のSM3は89%で、PAC3は83%(新ソフト搭載後は100%)とされる。専門家の中でも90%以上の確率で落とせると言っている方も多くいる為、命中率はかなり高いともされるが。この数字をそのまま信じるバカはいないだろう。
 レーダー探査型のSM3よりも地上発射型のPAC3が命中度が高いとは到底思えない。それにいくら命中度が高いとしても、日本全国にPAC3は16箇所しか配備されていない。
 こんなんで日本全土を守れるか?と言われれば100%不可能だと言わざるを得ない。

 現在日本は、このSM3を搭載するイージス艦を4隻持っている。レーダーの向きがあってないと感知できないのが弱みだが、射程高度が70〜500kmとかなり高い所にあるミサイルも迎撃可能だ。裏を返せば、それ以上の高度となると迎撃は不可能という事。
 それにイージス艦1つ当りに搭載できるSM3は最大で8発。つまり、一度に打てる迎撃ミサイルは、日本には8発×4艦=32発しかない。一方で北朝鮮は、日本を攻撃できる弾道ミサイルを200発以上は保有してるとされる。という事は最低でも400発の迎撃ミサイルが必要となる。2発セットで100%の迎撃が可能だとしての話だが。


原初的な弾道ミサイルにのみ有効?

 但し、海自のイージスBMD艦(8艦)や陸自のイージス•アショア(2セット)が勢揃いする2023年頃までには、北朝鮮の弾道ミサイル戦力は質量ともに強化されいると考えるべきだ。日本だけが軍事力を強化してる訳でなく、それ以上に北朝鮮や中国は軍事力を強化し続けている。
 つまり2023年頃には、400発では話にならず600発いや800発の迎撃ミサイルが必要になってくるのかもしれない。
 映画「空母いぶき」では、最後に敵軍機が一斉に攻め込んできて、もはやお陀仏かと思いきや、多国籍の国連軍の潜水艦が”いぶき”を守ってくれた。しかし、実際には専守防衛ナなどと議論してるうちに、最低でも日本列島に200発クラスの弾道ミサイルが降り注ぐ事を覚悟する必要がある。

 結局、”ヤラれる前にヤレ”っていう単純な論理が幅を利かす。専守防衛なんて”絵に描いた戯言”になる可能性も高い。かと言って、大規模な先制攻撃を仕掛け、全面戦争になるという結果だけは何としても避けたい。
 以下、”弾道ミサイル防衛を再吟味しなければ国防が危殆に瀕する”から抜粋です。

 つまり、せいぜい原初的な北朝鮮弾道ミサイルにのみ日本のミサイル防衛システムは有効という事になる。映画「空母いぶき」の中で100%近い迎撃率を誇ったのは、単に相手が弱すぎたからだ。
 まして北朝鮮とは違い、多弾頭型弾道ミサイルやステルス性の高い長距離巡航ミサイルを多数(日本攻撃用の弾道ミサイルは100発以上、長距離巡航ミサイルは少なくとも700発以上)取り揃えている中国のミサイル攻撃に対しては、日本が取り揃える努力を傾注してる”超高額”弾道ミサイル防衛システムは殆ど役に立たない。
 こうした中国軍の高性能弾道ミサイルを撃墜できる確率は、北朝鮮軍の単純な弾道ミサイルに対する迎撃率より大幅に低い。特に新型多弾頭型弾道ミサイルの場合、現存するそして現在開発中の迎撃用ミサイルではとても歯が立たないとされる。
 それに、そもそも弾道ミサイル防衛システムは、飛来してくる弾道ミサイルを迎撃するシステムであり、全く原理が異なる巡航ミサイルを撃破する事は想定してはいない。

 悲しいかな、日本政府が莫大な税金を投入(その大半はアメリカに支払う)し、取り揃えようとしてる弾道ミサイル防衛用兵器(イージスアショア、イージスBMD艦、SM3(IB)、SM3(IIA))は、超高額兵器であるといっても、現在北朝鮮軍が運用中の対日攻撃用弾道ミサイル(ノドン、スカッド)に対応可能な程度のものだ。
 この様なミサイル防衛システムを自衛隊が手にしただけでは、とても抑止効果などは期待できない。


超高額なミサイル防衛は役に立たない?

 もし、弾道ミサイル防衛システムにより、日本に飛来するいかなる弾道ミサイルを100%近い確率で撃墜でき、日本領内には一発の弾頭も着弾しないのならば、万難を排し、ミサイル防衛システムと大量の迎撃用ミサイルをアメリカから輸入調達しても、日本の為に有益な投資言えるかもだ。
 しかし、現状のミサイル防衛システムはその様な完全なシステムとは程遠い。現に、アメリカ自身もミサイル防衛だけで弾道ミサイルの脅威から身を守ろうとしている筈もない。

 イージスアショアだけでなく、イージスBMD艦やそれらに装填するSM3の開発も含め、”ミサイル防衛に多額の投資をする事により、どの様な防衛効果があるのか?” ”アメリカ側の宣伝•売り込みに言い包められてるのが現状ではないか?” ”ミサイル防衛以外に弾道ミサイルの脅威を減少させ、封じる方策はないのか?”といった真剣な議論が国会などでなされる事はまずない。
 「日米同盟の強化」などという名目を掲げ、アメリカから超高額弾道ミサイル防衛システムを購入し続けるならば、近々日本の国防態勢そのものは破滅してしまう。

 以上、GLOBE+からでした。

 つまり、このコラムで言わんとしてる事は、日本の同盟国であり、世界の警察?であるアメリカの防衛&軍事システムが、既に時代遅れになりつつあるという事だ。
 専守防衛と言っても、その”防衛”システムが不完全で時代遅れであれば、憲法9条ですら意味をなさない。”戦争をしない”という事は”戦争をさせない”と同義である。
 つまり、戦争をさせないという事は、完全な防衛システムを揃えるという事かもしれないが、金の掛かり過ぎる時代遅れの、効率の悪いシステムでもある。

 前述した様に、北朝鮮や韓国が一斉に600発ほどの高性能弾道ミサイルを打ち込んできたら、超高額なミサイル防衛も殆ど歯が立たないのは明らかだ。これこそが現代版の”特攻”兵器である。
 つまり、”九死に一生”ですらない”十死零生”の高額すぎる防衛システムという事になる。

 映画「空母いぶき」では、最後にそういう所を描いてほしかった。開き直った東亜連邦が、なりふり構わず一気に襲ってきた時、全てが終わる事を夢の中でいいから描いてほしかった。
 専守防衛や憲法9条は、そんな不条理で絶望的な土壌の上で泳いでるのだ。しかし悲しいかな、映画上でも実際の国会でもそんな議論はなされない。

 最悪の全面戦争を避けるには、世界の軍事システムのソフトウエア上での無効化が必要なのかも知れない。
 そんな事が出来ればの話だが。”数学は苦手だ”と言ってる間は、やはり無理なんだろうか。イヤそうでもないか。



2 コメント

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高く付き過ぎたぁ〜 (hitman)
2020-01-05 14:43:33
ミサイル防衛システムです。
確かにミサイルを迎撃するという発想は
第二次世界大戦でも通用しないシナリオですよねぇ〜。
アメリカの口車に乗せられ挙げ句がこのザマで〜す。映画空母いびきはそれを曝け出してくれました。

ミサイルを撃ち合うシーンはガキの喧嘩を見てるみたいで、一緒に見たウチの倅は大喜びでしたが。私は悲しくなりました(;_;)
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ガキの喧嘩? (象が転んだ)
2020-01-05 17:06:53
まったくですね。
私も見終わって、子供騙しの映画かなと少し悲しくなりました。

迎撃ミサイルを発射する度に黒電話のベル音がして、”いてまえ〜”って怒鳴るんですよ。
あれ見てると、日本人も昔とちっとも変わっちゃいないなと。
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