韓国映画はこれだからヤメられない。
とにかく勢いが凄い、暴力が半端ない。そして人情味が十全に溢れ、人の弱みも脆さもくっきりと描き出す。
マ•ドンソクという役者さんは、「新感染•ファイナルエクスプレス」(2016)で強烈な衝撃を受けてたので、見る前から大きな期待があった。
そしてその期待は、大きな躍動となって観る者を咆哮の域へ誘い出す。
とにかく強い。セガールよりもバンダムよりも強く、スタローンよりもシュワルツェネッガーよりも力感が漲る。
そこにあるのは、飾り立てられたアクション活劇でもなく、わざとらしく作り上げられた筋肉でもない。あるのは圧巻の破壊力だけだ。
だから故に、爽快感が壮絶感が違う。リアルが違うし、暴力の生々しさが臭う。
暴力というものがここまでドラマチックでドメスティック(内に秘めた)で身近に感じる映画もまた珍しい。
ドウェイン•ジョンソンとガチで殴り合ったら、多分マ•ドンソクの方が強い。
とにかく殴る殴る、不器用な程に殴って殴って殴りまくる。見てて笑える程に殴りつける。
「無双の鉄拳」(2018)の英語版タイトルは「Unstoppable」。つまり、”この親父、怒らせたらとまらない”ってとこか。
一度キレたら誰にも止められない“雄牛"という異名で恐れられた男ドンチョル(マ•ドンソク)だが。普段は愛する妻ジス(ソン•ジヒョ)と慎ましやかに暮らす、怪しげな冴えない労働者だ。
ある夜、些細な諍いでジスを怒らせたドンチョルだが、そのジスが何者かに誘拐される。
誘拐犯の異様な行動に警察の捜査はままならず、怒りに震えるドンチョルの拳がついに火花を散らす・・・
展開的にはシンプルすぎる程のアクション劇だが、そのアクションにしても凝った所は殆どなく、只々延々と殴るだけだ。
しかし、リアルで自然な重厚感があるが故に、観る者を只々圧倒する。ワイヤーアクションもCGも使わず、余計な肉体美も技巧もない。破壊力と迫力だけでどんどん前へ突き進む。
ハリウッドや香港のアクション活劇に辟易してた私には、とても新鮮に映った。
「パラサイト〜半地下の家族」(2019)が米アカデミー賞の主要4部門を独占し、韓国映画が世界を圧巻する中で、マ•ドンソクも世界に通用する重厚で不器用なアクションスターである事に異論はない。
そんなマ•ドンソク(49)だが、韓国ソウルで生まれ、18歳で家族と共にアメリカに移住、コロンバス州立大学で体育学を学び、トレーナーやボディビルダーとして活動する。
格闘家のマーク•コールマンらのトレーナーを務めてた事もある筋金入りの“雄牛"だ。
ミュージカル俳優としてデビュー(1994)した事もあり、茶目っ気たっぷりのロマンチストでもある。
これだから、韓国映画はヤメられないし、止まらない。
サモアンフックに似てて、打撃音がここまで伝わってくる感じでした。ロッキーやターミネータと戦わせたいです。