帯は宮部みゆきさんの「この本の面白さがわかる人は小説が書けます」ここは小説はかけませんので反応しませんでした。でも「読む」とは「書く」とは、こういうことだ!読書達人の特別講義。で買ってしまったのです。
まず一度読み、それから何度も読んだのですが書く事が纏まらないので、しばらく休み、読みたい本が押せ押せ状態になったので、この本は一度休もうとメモ書きをまとめました。
2005年、6年と早稲田大学で表現の講義をしたものを再構成したのだそうです。
どこを読んでも興味深く「読書」に限ってですが、本物の読書人はこうなのかという好例でした。
小説家とか物語を作り出す、創造する人にとっては又違った掘り下げ方があるようにも思いますが、北村さんの興味の向かった方向が、どの部分をとっても北村さんらしい視点が染みてくるような一冊でした。
参考に挙げてある書籍も多く、少しは読んでいましたが、それを追っていけば一生困らない読書ができそうでした。
内容について、目次はたくさんあり長くなるのですが
1書きたいことは何か
2創作の糸口を見つける
3連想する、想像して創造する
4物語のまなざし ―― 視点と文体
5短編小説を読む
6演習 話を聞いてコラムを書く
7演習 天野慶さんにインタビューをする
8演習 それぞれのコラムを読む
9「伝える」ということ
10独自の表現
11「出会う」体験
12書籍編集という仕事
13作品にふさわしい真実 ―― 表現と個性
14「語る」妙味
15《もの》を見る目 ―― 作家の好奇心
16「分かる」ということ ―― 特別な能力
赤木かん子さんのことp296/ 目覚めの瞬間301/ワクワクについて303/「アマデウス」307/「分かる」ということ309/「読む」という表現312
あとがき ―― 講義を終えて
16だけ小見出しを入れました。赤木さんの自筆の文章が公開されているのですが、子供時代の6年間森の中で暮らした私は、今でもそこの暮らしが帰るところのように思っています。大阪という混雑の中で長く暮らしていても、赤木さんの言葉を味わうと、都会で生きている人と自然体で生きたいと思う自分との本質的な違いがまざまざと感じられ、何か懐かしい思いがしました。
最後にこういった例えが取り上げられていることからもこの一冊が持っている味わいを感じ取れます。
ゲストの歌人天野慶さんの言葉で
わかってもらうこと売れることについて、他からの共感は商品としての歌と作品の境目がむつかしい、共感より共鳴を求める、しかし作家はこれを大きな問題として抱える。と率直に語っています。
編集者の裏話も面白かった。
今回読み直してまた衝撃を受けたのは
浜田到さんの
こんこんと外輪山が眠りをり死者よりも遠くに上りくる月
人と月との心的物的な距離と美しい夜の風景がとても幻想的で、その情感宇宙観に魅せられました。
俳句も好きですが(言葉数が少ない所がよりいいです)歌は素晴らしいと思いました。
また都筑さんのハードボイルド論からヘミングウェイの例等を挙げ、「ハードボイルドとは、人間への向かい合い方であり描き方であるという。映画《裸の街》、見るものの胸に人間存在の切なさを、そっけないだけにいっそう鋭く感じさせる場面でした。あれがハードボイルドです」
最近TVでまた「ファーゴ」を見ました。コーエン兄弟の映画は私なりにハードボイルドの見本のようで大好きです。
「文芸」と「エンターテインメント」「翻訳できない言葉」の例。など興味深い所も多くてまた保存本が増えました。