2022年。ベストセラーで幕開け。20歳で両親を亡くした柏木聖輔、母が勧めてくれた東京の大学を中退して職探しを始める。彼はめげない、輝く向日性は周りを暖かく明るく照らす。
料理人の父は東京で修業して、母の郷里鳥取に戻って店を始めた。店はうまくいってなかった。運転する車が猫をよけて電柱にぶつかって父は亡くなってしまった。下りた保険金は店の借金で消えた。母は大学の食堂で働き始めていた。郷里からの突然の訃報に驚いて帰省したが母の死に目には間に合わなかった。鳥取大の木のベンチで項垂れて泣いた。
聖輔は母の勧めで東京の大学に進んでいた。軽音でベースを弾いていたがもう続けていけなくなった、退学と同時にやめた。
下宿に近い砂町銀座を歩いていた。空腹だった。惣菜店の匂いに誘われるがポケットには55円しかなかった。
一個だけ残っていたコロッケが見えた、50円、税込なら54円お釣りが1円か。買おうとして近づいたところ、後ろのおばあさんの勢いに負けで譲ってしまった。
20時間何も食べてなかった。それでも自転車にぶつかりそうだった女性に道を譲り、コロッケも譲り、空腹を抱えて店の前に立っていた。
目の端に入った「アルバイト募集」の貼り紙。彼は即決心した、惣菜店「おかずの田野倉」で働きたい。
店主は密かに見ていた、学校をやめた「いろいろの事情」も深堀しない人だった。「一応履歴書持っておいで、ホイおまけだ、揚げたてハムカツ」
好みだ、厚すぎず、薄すぎず、で熱すぎる、うますぎる。道の陰で頬ばった。久しぶりに人と喋った。これではいけない聖輔は前を見ることにした。
彼はいい。採用だ。
同僚の映樹は気がいいし要領もいい。店主の督次さんも奥さんの詩子さんともうまくやっていけそうだ。
彼は両親譲りの器用さでうまくジャガイモの皮をむく。手作りのお惣菜店。調理を任せられるにも順がある。
皮むきを任され、揚げ物を任され、店先の挨拶も板についてきた。近所の注文に出前もする。
と道を譲った女性がやってきたアレ?見たことがある。彼女は鳥取の同級生でびっくり。
彼女は高校の学園祭でベースを弾いた聖輔の応援団だった、あの時友人と模擬店を抜け出して、席から立ち上がり振り付きで拍手をしてくれた、あの人だ。名前は青葉さんだった。
看護師を目指して健康福祉学部だそうだ、お母さんは看護師。離婚し再婚しても何とか生活できた職業だから、それを目指している、求人も多いから。
彼女には慶応の彼氏がいた。東大早稲田慶応にはついスゴイと言ってしまう。
慶応の彼がきた。どうも目線が違う、しかし彼はそう育ってきたらしい。
彼女は郷里の知り合いだろう、と念を押された、そんな人柄は微妙。
そう郷里の知り合いだからか青葉さんは一人で来て、連絡先を聞かれた。それから気軽に東京を二人で歩く、小さい遊園地や銀座など。気取らず楽しく懐かしい。彼氏は育ちの差というかどことなく感覚がずれて、などと言いながら聖輔と一緒にいると気楽そうだ。
店の休みに両親が働いていた店を訪ねてみる。まだ当時の知り合いがいた、板前は恰好がいい向いているような気がする。別に店を構えた知り合いがお父さんはいい腕だったと言ってくれた。
昼間は空いている下宿で休ませてというバンド仲間が、熱が出たので督次さんに帰るように言われて帰ってみると彼女と寝ていたり。ゴメンもう二度と使わないって。でもバイト先に近いし時々休ませてといったり。
店の映樹さんは彼女の妹の方に気が移って遂に妊娠騒ぎで足が地に着かなかったリ、姉の方はそんなことは露知らず映樹の遅刻の言い訳をするほど気の優しいいいひとだったり。
妹の妊娠は間もなく解決したが、暫くして姉が妊娠、結婚することになった映樹さんはコロッと変わって真面目に喜んでいたり。
母が残してくれたわずかな金を目当てに叔父が、貸した金を返せと言って来て、督次さんは追い払ってけりをつけてくれた。シミジミ独りだと思う。
督次さん夫婦には子供がない、店を継いでほしいと話が出た時将来を決めた。店は映樹さん夫婦が継ぐのがいい。聖輔は調理師の学校に行き父と同じ道を歩こう。
青葉さんと一緒にいるときは楽しくて気が楽で、彼女は明るく優しい。いつまでも二人連れがいい。今度言ってみようか。
彼は賢く控えめで余計なことは話さない。見習いたいほど。
愛用のベースを巡る話も胸が熱くなる、暖かいいい話です。
聖輔は母の勧めで東京の大学に進んでいた。軽音でベースを弾いていたがもう続けていけなくなった、退学と同時にやめた。
下宿に近い砂町銀座を歩いていた。空腹だった。惣菜店の匂いに誘われるがポケットには55円しかなかった。
一個だけ残っていたコロッケが見えた、50円、税込なら54円お釣りが1円か。買おうとして近づいたところ、後ろのおばあさんの勢いに負けで譲ってしまった。
20時間何も食べてなかった。それでも自転車にぶつかりそうだった女性に道を譲り、コロッケも譲り、空腹を抱えて店の前に立っていた。
目の端に入った「アルバイト募集」の貼り紙。彼は即決心した、惣菜店「おかずの田野倉」で働きたい。
店主は密かに見ていた、学校をやめた「いろいろの事情」も深堀しない人だった。「一応履歴書持っておいで、ホイおまけだ、揚げたてハムカツ」
好みだ、厚すぎず、薄すぎず、で熱すぎる、うますぎる。道の陰で頬ばった。久しぶりに人と喋った。これではいけない聖輔は前を見ることにした。
彼はいい。採用だ。
同僚の映樹は気がいいし要領もいい。店主の督次さんも奥さんの詩子さんともうまくやっていけそうだ。
彼は両親譲りの器用さでうまくジャガイモの皮をむく。手作りのお惣菜店。調理を任せられるにも順がある。
皮むきを任され、揚げ物を任され、店先の挨拶も板についてきた。近所の注文に出前もする。
と道を譲った女性がやってきたアレ?見たことがある。彼女は鳥取の同級生でびっくり。
彼女は高校の学園祭でベースを弾いた聖輔の応援団だった、あの時友人と模擬店を抜け出して、席から立ち上がり振り付きで拍手をしてくれた、あの人だ。名前は青葉さんだった。
看護師を目指して健康福祉学部だそうだ、お母さんは看護師。離婚し再婚しても何とか生活できた職業だから、それを目指している、求人も多いから。
彼女には慶応の彼氏がいた。東大早稲田慶応にはついスゴイと言ってしまう。
慶応の彼がきた。どうも目線が違う、しかし彼はそう育ってきたらしい。
彼女は郷里の知り合いだろう、と念を押された、そんな人柄は微妙。
そう郷里の知り合いだからか青葉さんは一人で来て、連絡先を聞かれた。それから気軽に東京を二人で歩く、小さい遊園地や銀座など。気取らず楽しく懐かしい。彼氏は育ちの差というかどことなく感覚がずれて、などと言いながら聖輔と一緒にいると気楽そうだ。
店の休みに両親が働いていた店を訪ねてみる。まだ当時の知り合いがいた、板前は恰好がいい向いているような気がする。別に店を構えた知り合いがお父さんはいい腕だったと言ってくれた。
昼間は空いている下宿で休ませてというバンド仲間が、熱が出たので督次さんに帰るように言われて帰ってみると彼女と寝ていたり。ゴメンもう二度と使わないって。でもバイト先に近いし時々休ませてといったり。
店の映樹さんは彼女の妹の方に気が移って遂に妊娠騒ぎで足が地に着かなかったリ、姉の方はそんなことは露知らず映樹の遅刻の言い訳をするほど気の優しいいいひとだったり。
妹の妊娠は間もなく解決したが、暫くして姉が妊娠、結婚することになった映樹さんはコロッと変わって真面目に喜んでいたり。
母が残してくれたわずかな金を目当てに叔父が、貸した金を返せと言って来て、督次さんは追い払ってけりをつけてくれた。シミジミ独りだと思う。
督次さん夫婦には子供がない、店を継いでほしいと話が出た時将来を決めた。店は映樹さん夫婦が継ぐのがいい。聖輔は調理師の学校に行き父と同じ道を歩こう。
青葉さんと一緒にいるときは楽しくて気が楽で、彼女は明るく優しい。いつまでも二人連れがいい。今度言ってみようか。
彼は賢く控えめで余計なことは話さない。見習いたいほど。
愛用のベースを巡る話も胸が熱くなる、暖かいいい話です。