18年度の総括、最後はもちろん「映画」。
年々長文になっている気もするが、まぁ勘弁してください、ここは映画小僧による映画小僧のためのページなので。
というわけで、まず4日間をかけて本年の21傑を発表。
最後の5日目に総評を展開してきます。
ではいくぜ!!
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第21位『素敵なダイナマイトスキャンダル』
雑誌やっているひとで知らないひとは居ないであろう、伝説的編集長・末井昭の自伝エッセイをベースにしたパワフルな喜劇。
母親がダイナマイトで心中。
出版したエロ雑誌が警察に目をつけられ発禁処分に。
そんなムチャクチャな男を描いて、つまらない映画が出来るわけがない。
末井を演じた柄本佑も好演しているが、前田敦子や尾野真千子など女優陣の健闘を称えたい。
そして末井本人も登場するので、お見逃しなく。
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第20位『ちはやふる ―結び―』
第1作目の新鮮な感動には及ばないものの、人気の高い原作漫画の世界観を壊すことなく、それでいて映像表現の特質(かるた競技の描写)にも目を配り、見応えのある三部作に仕上げた監督の手腕は、もっと評価されてもいい。
それにしても、広瀬すずでしょう、やっぱり。
ナンダカンダいわれる子だが、若手女優のなかで頭ひとつ抜きんでているのは否定しようがない。
彼女の魅力は、このシリーズを観れば分かると思う、好き嫌いを超えてね。
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第19位『デトロイト』
徹底したリアリズム信奉者、キャスリーン・ビグローが67年に発生した「デトロイト暴動」を描く。
白眉はやはり、40分以上をかけるモーテルでの詰問シーンだろう。
リアリズムというより、ビグローのサディズムが際立つこの場面のおぞましさは、もはや事実かそうでないかなど関係ない、ただひたすらに彼女の強烈な作家性を印象づける。
エンドロールに流れる『It Ain’t Fair』に至るまで、ビグローの演出設計は気を緩めない。
リアリズムがサディズムに負けてしまった…今年触れた作品のなかで、最も「監督がすべて」と思わされた映画だった。
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第18位『アンダー・ザ・シルバーレイク』
一目惚れをした美女の失踪について調べていくうちに、夢と希望の街・LAの裏の側面を目の当たりにする主人公。
2001年に発表された、『マルホランド・ドライブ』や『ドニー・ダーコ』のような。
つまり、何度観ても分からないのに、何度も何度も観返したくなる奇妙な魅力に満ち満ちた映画が、ときどき現れる。
『イット・フォローズ』で注目されたデヴィッド・ロバート・ミッチェルの新作は、まさにそんな怪作。
分からないのに、面白い。
否。
分からないから、面白い―世の中には、そんなこともある、、、そういいたげな映画なのだった。
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第17位『寝ても覚めても』…トップ画像
『万引き家族』がパルムドールを戴冠「したがために」、想定以上に「騒がれなかった」ものの・・・
カンヌ出品作として比較すると、完成度としては先の作品と互角、そして新鮮な驚きという意味では「こっちのほうだろうよ」と個人的に感じた収穫の一本。
「ほぼ」ではなく「まったく」同じ顔を持つふたりの男を愛してしまったヒロインの「ざわざわ」としたこころの揺らぎを、映画的イマージネーションを駆使して丁寧に描写する。
濱口竜介監督による、力のこもったショットの数々もいいが、主演ふたりの熱演のほうを称えるべきか。
いままで「ぶっきらぼう」に見えた東出昌大を初めてきちんとした俳優だと思えた―ただ、関西弁が成功しているとはいい難い―し、唐田えりの未完成な演技は役柄的にプラスへと転じて効果を上げている。
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第16位『花筐/HANAGATAMI』
がん闘病を告白した80歳の映画人、大林宣彦が太平洋戦争前夜を生きる若者の青春を描く。
たとえば遺作だからとか引退作だから―両方に当てはまらないが―とかいう特別な視点で「ひいき目」の評価はしたくない、
腫れ物に触るかのような接しかたは当人に失礼だろう・・・そんな風に妙に構えてしまったのだが、とても自由にのびのびと撮っていて、思いのほか楽しめた。
日常の営みが戦争によって滅茶苦茶にされてしまう―そんなようなことを正攻法で描くことも出来たかもしれない。
しれないが、パンキッシュな監督は、ハナからそんな映画を創ろうなどと思ってもいなかった。
映像と音楽の洪水は暴力性をも伴って観るものを襲い、強制的に思考停止させられてしまう。
常盤貴子も「寒い」とばかり呟く門脇麦も素晴らしいが、それ以上に、大林宣彦の老人力が際立つ至高のパンク映画として異彩を放っている。
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明日のコラムは・・・
『知らなくていいこと、なんてない。 その弐 ~2018総括(10)~』
年々長文になっている気もするが、まぁ勘弁してください、ここは映画小僧による映画小僧のためのページなので。
というわけで、まず4日間をかけて本年の21傑を発表。
最後の5日目に総評を展開してきます。
ではいくぜ!!
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第21位『素敵なダイナマイトスキャンダル』
雑誌やっているひとで知らないひとは居ないであろう、伝説的編集長・末井昭の自伝エッセイをベースにしたパワフルな喜劇。
母親がダイナマイトで心中。
出版したエロ雑誌が警察に目をつけられ発禁処分に。
そんなムチャクチャな男を描いて、つまらない映画が出来るわけがない。
末井を演じた柄本佑も好演しているが、前田敦子や尾野真千子など女優陣の健闘を称えたい。
そして末井本人も登場するので、お見逃しなく。
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第20位『ちはやふる ―結び―』
第1作目の新鮮な感動には及ばないものの、人気の高い原作漫画の世界観を壊すことなく、それでいて映像表現の特質(かるた競技の描写)にも目を配り、見応えのある三部作に仕上げた監督の手腕は、もっと評価されてもいい。
それにしても、広瀬すずでしょう、やっぱり。
ナンダカンダいわれる子だが、若手女優のなかで頭ひとつ抜きんでているのは否定しようがない。
彼女の魅力は、このシリーズを観れば分かると思う、好き嫌いを超えてね。
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第19位『デトロイト』
徹底したリアリズム信奉者、キャスリーン・ビグローが67年に発生した「デトロイト暴動」を描く。
白眉はやはり、40分以上をかけるモーテルでの詰問シーンだろう。
リアリズムというより、ビグローのサディズムが際立つこの場面のおぞましさは、もはや事実かそうでないかなど関係ない、ただひたすらに彼女の強烈な作家性を印象づける。
エンドロールに流れる『It Ain’t Fair』に至るまで、ビグローの演出設計は気を緩めない。
リアリズムがサディズムに負けてしまった…今年触れた作品のなかで、最も「監督がすべて」と思わされた映画だった。
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第18位『アンダー・ザ・シルバーレイク』
一目惚れをした美女の失踪について調べていくうちに、夢と希望の街・LAの裏の側面を目の当たりにする主人公。
2001年に発表された、『マルホランド・ドライブ』や『ドニー・ダーコ』のような。
つまり、何度観ても分からないのに、何度も何度も観返したくなる奇妙な魅力に満ち満ちた映画が、ときどき現れる。
『イット・フォローズ』で注目されたデヴィッド・ロバート・ミッチェルの新作は、まさにそんな怪作。
分からないのに、面白い。
否。
分からないから、面白い―世の中には、そんなこともある、、、そういいたげな映画なのだった。
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第17位『寝ても覚めても』…トップ画像
『万引き家族』がパルムドールを戴冠「したがために」、想定以上に「騒がれなかった」ものの・・・
カンヌ出品作として比較すると、完成度としては先の作品と互角、そして新鮮な驚きという意味では「こっちのほうだろうよ」と個人的に感じた収穫の一本。
「ほぼ」ではなく「まったく」同じ顔を持つふたりの男を愛してしまったヒロインの「ざわざわ」としたこころの揺らぎを、映画的イマージネーションを駆使して丁寧に描写する。
濱口竜介監督による、力のこもったショットの数々もいいが、主演ふたりの熱演のほうを称えるべきか。
いままで「ぶっきらぼう」に見えた東出昌大を初めてきちんとした俳優だと思えた―ただ、関西弁が成功しているとはいい難い―し、唐田えりの未完成な演技は役柄的にプラスへと転じて効果を上げている。
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第16位『花筐/HANAGATAMI』
がん闘病を告白した80歳の映画人、大林宣彦が太平洋戦争前夜を生きる若者の青春を描く。
たとえば遺作だからとか引退作だから―両方に当てはまらないが―とかいう特別な視点で「ひいき目」の評価はしたくない、
腫れ物に触るかのような接しかたは当人に失礼だろう・・・そんな風に妙に構えてしまったのだが、とても自由にのびのびと撮っていて、思いのほか楽しめた。
日常の営みが戦争によって滅茶苦茶にされてしまう―そんなようなことを正攻法で描くことも出来たかもしれない。
しれないが、パンキッシュな監督は、ハナからそんな映画を創ろうなどと思ってもいなかった。
映像と音楽の洪水は暴力性をも伴って観るものを襲い、強制的に思考停止させられてしまう。
常盤貴子も「寒い」とばかり呟く門脇麦も素晴らしいが、それ以上に、大林宣彦の老人力が際立つ至高のパンク映画として異彩を放っている。
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明日のコラムは・・・
『知らなくていいこと、なんてない。 その弐 ~2018総括(10)~』