2020年の映画回顧、本日はその第三夜。
13選のうち、04位~01位の発表です!!
第04位『37セカンズ』
「―もう、わたしのこと、こわくないですか」
身体障害者を扱った映画の、ネクストステージへの到達を告げる傑作。
出生時に「37秒間」呼吸が止まったことにより脳性麻痺になってしまった漫画家の夢馬が、成人誌編集者がいった「作家は経験したことしか描けない」に発奮、車椅子に乗って歌舞伎町を彷徨い、どうにかしてセックスを経験しようとする。
米国で映画術を学んだHIKARIの監督デビュー作であり、夢馬を演じた佳山明は実際に脳性麻痺を患っている。
この映画の白眉は「障害者の性」を描きつつ、果たして「作家は経験したことしか描けない」のか…という、創り手たちが抱える永遠のテーマをも描いているところだと思う。
第03位『スパイの妻』
ベネチア映画祭、銀獅子賞(監督賞)受賞作にして、黒沢清の新たな代表作となった力作。
NHK「BS8K」用に制作されたテレビドラマに若干の調整を加え映画版として公開、
正直いって8Kテレビなんか持っている一般人なんか居ないに等しいので、劇場公開されてほんとうによかった。
満州で国家機密を目にした貿易会社社長の優作と、その妻・聡子、そして、聡子の幼なじみの憲兵隊・津森。
この、緊張感に満ちた3人の関係性を見ているだけで飽きない。
とくに津森を演じる東出昌大の憎々しさは絶品で、あぁ黒沢さんもこのひとの「正しい使いかた」を心得ているのだなぁと苦笑してしまった。
第02位『はちどり』
「誰かに殴られたりしたら、黙っていては絶対にダメ」
女子中学生ウニの平穏なようでいて「じつはそうでもない」日常を切り取った、韓国の新鋭キム・ボラ監督のデビュー作。
舞台は94年のソウル。
日本人でも知っている聖水大橋崩落事故を巧みに絡めたストーリーテリングは、ほとんどベテラン作家のようで韓国映画のレベルの高さを思い知らされた。
白眉はキスシーン「の、あと」の描写。
こういう感覚、分かるけど、映像で観るのは初めてかもしれない。
『パラサイト』は結局のところ鬼才ポン・ジュノ「個人」が生み出した快作だと評価すべきものと思う、だから、韓国映画全体のレベルを知りたいひとにはこの映画を推すことにしている。
第01位『異端の鳥』
ホロコースト下で、ひとりの少年が徹底的に容赦なくこれでもかと虐められるさまを描いた異形の物語。
観ているものにとってもほとんど拷問のような物語で、実際にギブアップするひとも居ると思う、
しかし一部の傑作がそうであるように、救済の微光を用意する結末に創り手たちの思いを見て深い感動を覚えた。
そう、これぞ自分が映画に求める魂ってやつだ。
イェジー・コシンスキ原作の同名小説を、170分の美しきモノクロームで映画化。
コロナショックにより多くの米映画が公開延期する背景も手伝い、この手の映画では特例と思えるほどメディアが取り上げ、興行も健闘しているらしい。
みなに薦めることはないが、映画とはなにか? みたいなことを考察したいひとには強く薦めたい2020年のベストワン。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『「外」からの変革 ~2020映画回顧4~』
13選のうち、04位~01位の発表です!!
第04位『37セカンズ』
「―もう、わたしのこと、こわくないですか」
身体障害者を扱った映画の、ネクストステージへの到達を告げる傑作。
出生時に「37秒間」呼吸が止まったことにより脳性麻痺になってしまった漫画家の夢馬が、成人誌編集者がいった「作家は経験したことしか描けない」に発奮、車椅子に乗って歌舞伎町を彷徨い、どうにかしてセックスを経験しようとする。
米国で映画術を学んだHIKARIの監督デビュー作であり、夢馬を演じた佳山明は実際に脳性麻痺を患っている。
この映画の白眉は「障害者の性」を描きつつ、果たして「作家は経験したことしか描けない」のか…という、創り手たちが抱える永遠のテーマをも描いているところだと思う。
第03位『スパイの妻』
ベネチア映画祭、銀獅子賞(監督賞)受賞作にして、黒沢清の新たな代表作となった力作。
NHK「BS8K」用に制作されたテレビドラマに若干の調整を加え映画版として公開、
正直いって8Kテレビなんか持っている一般人なんか居ないに等しいので、劇場公開されてほんとうによかった。
満州で国家機密を目にした貿易会社社長の優作と、その妻・聡子、そして、聡子の幼なじみの憲兵隊・津森。
この、緊張感に満ちた3人の関係性を見ているだけで飽きない。
とくに津森を演じる東出昌大の憎々しさは絶品で、あぁ黒沢さんもこのひとの「正しい使いかた」を心得ているのだなぁと苦笑してしまった。
第02位『はちどり』
「誰かに殴られたりしたら、黙っていては絶対にダメ」
女子中学生ウニの平穏なようでいて「じつはそうでもない」日常を切り取った、韓国の新鋭キム・ボラ監督のデビュー作。
舞台は94年のソウル。
日本人でも知っている聖水大橋崩落事故を巧みに絡めたストーリーテリングは、ほとんどベテラン作家のようで韓国映画のレベルの高さを思い知らされた。
白眉はキスシーン「の、あと」の描写。
こういう感覚、分かるけど、映像で観るのは初めてかもしれない。
『パラサイト』は結局のところ鬼才ポン・ジュノ「個人」が生み出した快作だと評価すべきものと思う、だから、韓国映画全体のレベルを知りたいひとにはこの映画を推すことにしている。
第01位『異端の鳥』
ホロコースト下で、ひとりの少年が徹底的に容赦なくこれでもかと虐められるさまを描いた異形の物語。
観ているものにとってもほとんど拷問のような物語で、実際にギブアップするひとも居ると思う、
しかし一部の傑作がそうであるように、救済の微光を用意する結末に創り手たちの思いを見て深い感動を覚えた。
そう、これぞ自分が映画に求める魂ってやつだ。
イェジー・コシンスキ原作の同名小説を、170分の美しきモノクロームで映画化。
コロナショックにより多くの米映画が公開延期する背景も手伝い、この手の映画では特例と思えるほどメディアが取り上げ、興行も健闘しているらしい。
みなに薦めることはないが、映画とはなにか? みたいなことを考察したいひとには強く薦めたい2020年のベストワン。
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明日のコラムは・・・
『「外」からの変革 ~2020映画回顧4~』