Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

映画監督別10傑(40)塚本晋也

2019-02-13 00:10:00 | コラム
~塚本晋也のキャリア10傑~

アヴァンギャルド精神、ここにあり。

いつまでも若々しくエッジな独立映画を撮りつづけているように見えた塚本晋也も、来年元日に還暦を迎える。

時代のせい―早過ぎた―か、三池崇史や園子温に比べ未だ「知るひとぞ知る」存在であることが嘆かわしい。


円熟期の現在、塚本映画は第2ステージへ突入。

独立体制の映画創りはそのままに、国家に刃を向け始めた。


塚本映画を観たことのないひとには、21世紀の大島渚だよ、、、と説明すべきかもしれない。


いやその前に。
監督作を観ていないひとでも、沢山の映画・ドラマに出演しているので、俳優として認識しているのではないか。

『シン・ゴジラ』(2016)や『沈黙 サイレンス』(2016)の、あのひとだよ!!


(1)『東京FIST』(95)

身体的な「痛み」をともなうことで、初めて生きる実感がわく。
クローネンバーグや金原ひとみが描こうとしてきたことだが、この映画が持つ説得力は絶大だと思う。

観るのに覚悟の要る物語だが、好きなひとはとことん好きになる映画。




(2)『六月の蛇』(2003)

長年温めていたピンク映画の物語を、黒沢あすかというミューズを発見することによって叶えた快作。

そう塚本さんって、女優を「より美しく」撮ることの出来るひとなんだ。




(3)『鉄男II BODY HAMMER』(93)

塚本神話の誕生は(当然)第1作目のほうだが、破壊の美しさを説く主題が好きなので自分は続編のほうを推す。

お互いがおじいちゃんになる前に、もういちどトモロヲさんと組んで撮ってほしい。


(4)『野火』(2015)

大岡昇平の戦場記、2度目の映画化。

市川崑×和田夏十のコンビによる最初の映画化作品も悪くないが、デジタル撮影の効果だろう、暴力・殺戮の即物性が際立ち、戦争の恐怖を「存分に」体感出来る―そこを評価したい。




(5)『鉄男』(89)

塚本神話は、この1作で誕生した。

ある日、突然「鉄化」していく男の物語―カフカの世界観にも通じそうだが、しかし、鉄化する理由は「いちおう」あるのだった。

そこが面白い。




(6)『斬、』(2018)

最新作。
刀鍛冶を冒頭に置き、映像と音楽で圧倒させる創りは初期と変わらぬが、ひとがひとを殺めることの無常を描いている点にこそ注目してほしい。

殺陣の迫真性は『羅生門』(50)、その無常観は『許されざる者』(92)のよう―と評したら褒め過ぎだろうか。


(7)『双生児―GEMINI―』(99)

江戸川乱歩原作、モックン本木雅弘が主演、制作陣にメジャーのプロ集団が関わったため観る前は「いつもの塚本節が発揮出来るのか…」と不安になったが、雰囲気抜群のホラー映画として完成。

ファンも、おそらく塚本さん自身もホッとしたのではないかな。


(8)『電柱小僧の冒険』(88)

背中から電柱が生えている(?)男の子のタイムスリップ劇。

習作と呼べるものだと思うが、ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞、これにより資金と協力者を得て『鉄男』が制作された。


(9)『ヴィタール』(2004)

人体解剖にのめりこむ男を浅野忠信が好演、ただ塚本演出に慣れ過ぎているファンにとっては、少々喰い足りないところは(正直)あった。




(10)『バレット・バレエ』(99)

銃に取り憑かれた男と、その周辺に蠢く若い男女を荒々しいモノクロームで描く。

塚本さんお気に入りの映画は、自分にとっての神映画『タクシードライバー』(76)。

これは、新世紀に向けての塚本版『タクシードライバー』だったのだと思う。

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明日のコラムは・・・

『vitamin CINEMA』
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シネマしりとり「薀蓄篇」(280)

2019-02-12 00:10:00 | コラム
つ「ま」→「ま」くどなるど(マクドナルド)

牛丼チェーンの好みは・・・
すき家、松屋、吉野家の順。

すき家は牛丼そのものの味が好き、
松屋は、ここでは牛丼を頼まず定食ばかり、



最寄りに上記2店が見当たらない場合、吉野家に行くと。

ハンバーガーショップの好みは・・・
マクドナルド、バーガーキング、モスバーガー、ロッテリア、ウェンディーズの順かな。

マックはてりやきの味がいちばんだから、そしてポテトの味も絶妙だから。



バーガーキングはでかいから、
モスは金はかかるが不味いと思うメニューがひとつもないから、
ロッテリアは変わり種が面白いから、
ウェンディーズはキングほどではないにせよ、ボリュームがあるから好き。

まぁヒトコトでいって「超ジャンキー」ということ。

身体には、まちがいなく悪いのだろうけれども。

それを検証したドキュメンタリー、『スーパーサイズ・ミー』(2004)も観たし。



それでもジャンクなフードが好き、だって美味しいのだもの、
たいしたものだよ牛丼ってハンバーガーってポテトって!


※だから、こんな会話が心底楽しく感じる

「パリのマクドナルドではビールが出てくる。メートル法の国だからな、メニューの名前も洒落てるんだ」




以下、映画のなかに登場する、あるいは言及されるファストフード3つのケース。
(前述した『スーパーサイズ・ミー』と、本コラムで度々取り上げる『フォーリング・ダウン』(93)は除外・・・って、本来のしりとり「マクドナルド」から大幅に逸れてるじゃん!!)


『トゥルー・ロマンス』(93)

つまりQTタランティーノもまた、重度のジャンキーということ。

ひとを殺したばかりのクラレンス(クリスチャン・スレーター)は、「こんなに美味いバーガーは生まれて初めてだ」とハンバーガーを絶賛する。

対するアラバマも、素晴らしい台詞で返す。

「…殺したなんて、ロマンチック♪」


『箱入り息子の恋』(2013)

内気な星野源と盲目の夏帆がデートするのは、吉野家。

付き合いたてだったとしても、こんな関係性がいいよね。




『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2016)

マクドナルドを世界規模のチェーンに成長させたレイ・クロックをマイケル・キートンが好演、これめっちゃ面白い。




次回のしりとりは・・・
まくどなる「ど」→「ど」いつ。

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『映画監督別10傑(40)塚本晋也』
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シネマしりとり「薀蓄篇」(279)

2019-02-11 00:10:00 | コラム
きんぱ「つ」→「つ」ま(妻)

きょうは、映画のなかの妻をテーマに。

母親ではなく、妻。
映画にかぎらず、母親でもあり妻でもある・・・というキャラクターのほうが多いだろうけれど。

だって現実世界が、そうなのだもの。


「うちのかみさんが…」が口癖なのはコロンボ、しかし日常で「かみさんが…」という妻帯者には「最近」あまり出会わない。

「嫁さん」「奥さん」「ウチの」くらいかな、イマドキ「愚妻が…」というひとも居ないだろうし。


以下、個人的に印象に残る「映画のなかの妻」6人+α。

理想の妻はわずかで、ほとんどが「怖い妻」になってしまった。


『フィールド・オブ・ドリームス』(89)

理想の妻、エイミー・マディガン。

彼女が妻だったからこそ、夫は野球場を作れたのだもの。


「―テレンス・マンは狂気の時代に、愛と平和を説いた。60年代を生きているものなら、マンの精神が分かるはずでしょう」
「わたしも60年代を生きてきた」
「いいえ、あなたは50年代を2回生きて、70年代にきたの」




『デーヴ』(93)

ケビン・クラインが演じる大統領、そのファーストレディを演じたのはシガーニー・ウィーバー。

替え玉を見抜いた理由が素晴らしい、「夫は私の脚なんか見ないから」。

実際にも、そういう細かいところで嘘かほんとうかを見分けるもの、、、なのではないかな。


『ロッキー2』(79)

エイドリアンが地味で暗いのは、自分に自信がなかったから。

ロッキーの愛で徐々に自信がついていく過程が楽しめるのは、パート1ではなく2のほう。




『セブン』(95…トップ画像)

ブラッド・ピットの妻を好演。

もともと引っ越してきた街が嫌いで、それであんな結末を迎えるのだもの、そりゃあ印象に残るでしょう。


『ミスティック・リバー』(2003)

主演級のスター3人の共演―ショーン・ペン、ケビン・ベーコン、ティム・ロビンス―で話題だが、裏テーマは「彼らを支える妻たち」だったのではないか・・・と思えるほど、それぞれの妻が「バツグンに」いい。




『蜘蛛巣城』(57)

三船敏郎の濃い演技でさえ霞んでしまう、山田五十鈴のおそろしい妻。

手についた血を洗おうとする姿は、狂気そのものだった。




あすのしりとりは・・・
つ「ま」→「ま」くどなるど。

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都下の酔いどれ天使

2019-02-10 00:10:00 | コラム
某日―。

あまり酒を呑まない年下の子たちを連れて呑み会を開く。

彼ら彼女らは最初の一杯だけ付き合ってくれて、あとはソフトドリンク系を。

まぁ乾杯だけあわせてくれれば満足、では自分は、というと・・・

ビール→ビール→ビール→ハイボール→ハイボール→ビール→ハイボール→グラスワイン→グラスワイン→グラスワイン→グラスワイン→グラスワイン→グラスワイン→グラスワイン→グラスワイン→グラスワイン

・・・で、お開き。

5人で3万前半は、けっして安くはないけれど高くもない。

ないが、飲み物の7割くらいは自分の分であるぜよ。


年長なので、当然自分がほとんどを出す。

呑まない子ばかりなのに呑み放題にしちゃったから、なんか頑張っちゃった。

結果、駅チカなのに駅まで辿り着けず、気に入りの女子に介抱ナビさせてやんの。


これは「酒あるある」のひとつだと思うが、家では2杯目くらいから酔うのに、外だとなかなか酔わない、、、みたいな。

それでエンジンがかかってしまった。というのもある。

少し気が張っているからでしょう、他者の目もあるし。


とはいえ。
気心の知れた仲であれば、ここまで頑張って呑むこともない。

いいトシこいて、未だエーカッコシーなのだね。


40代に突入してから、酒で変わったことがふたつ。

吐くことがなくなった、そして、積極的にワインを呑むようになった。


もちろんバカ舌なので、よいワインが分かるとかそういうのではない。

コンビニで売っている400円くらいので充分。

ガックンのようにはなれないけれど、都下の酔いどれ天使としては、まあまあの線いっている(?)のではないか―。


※映画のなかのワイン―沢山あるが、日常をワインになぞらえて紡いだ『サイドウェイ』(2004)がベストかな。

若いころはお姫様のようだったヴァージニア・マドセン。
(マイケル・マドセンの妹)

中年になったら、またちがう魅力が出てきてグー!!



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『シネマしりとり「薀蓄篇」(279)』
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にっぽん女優列伝(98)岸本加世子

2019-02-09 00:10:00 | コラム
60年12月29日生まれ・58歳。
静岡出身。

インスタグラム


北野武の、自作における女優さん選びって独特だと思います。

菅野美穂を起用したとき「ふつうかよ!」とツッコんでしまったほど、ふだん? は独特です。

たとえば『キッズ・リターン』(96)でデビューして以降、何度も起用しつづけた大家由祐子。



彼女のことを悪くいうつもりはないですが、どのあたりが気に入ってレギュラー出演させていたのでしょうか?
(充分悪くいってますかね苦笑)

『ソナチネ』(93)のヒロイン・国舞亜矢もそうでしたし、『BROTHER』(2001)の冨樫真にいたっては、寺島進に「ブスなんだか美人なんだか分からねぇな」といわせているくらい「ふつうの美人」を使いません。

という前置きで岸本加世子(きしもと・かよこ)さんを取り上げるのは失礼ですかね、さすがに。


いや、少々キツめの顔つきではありますが、岸本さんは美人です。

ただやはり、正統派ではないという。

しかし(?)北野武は女優としての岸本さんをいたく気に入り、何度か自作にヒロインとして起用しています。

面白いよなぁ、、、と思います率直にいって。


ただ「ありがとう…ごめんね」の台詞を上手にいえる同世代の女優さんがほかに居るのかと問われると、すぐには返せないのですよね。



<経歴>

西城秀樹の大ファンで、コンサート中に異様に目立っていた岸本さんを、西城のマネージャーが気に入った・・・のが、芸能界入りのきっかけだったとか笑

77年、女優として・・・というより、まずはアイドルとしてデビュー。




映画俳優デビュー作は、79年の『夢一族 ザ・らいばる』。

テレビ演出で知られた久世光彦が初めて映画に挑戦した作品で、岸本さんがユニークなのは「RG風」にいうと・・・

♪ 有名人の「初監督作」に出演「しがち」 ♪ 

なところ。

島田紳助の『風、スローダウン』(91)、柄本明の『空がこんなに青いわけがない』(93)とかですね。


『悪霊島』(81)、『男はつらいよ 寅次郎紙風船』(81)、『お日柄もよくご愁傷さま』(96)、『新サラリーマン専科』(97)。

北野作品以前にも映画出演はいくつかあったわけですが、正直パッとしませんでした。

このころの岸本さんって、CMタレント(富士フィルムやオリエントファイナンス)としてのイメージが強かったですもの。


98年、北野武の『HANA-BI』で主人公(たけし)の妻を好演。

最後の台詞のために、ほぼ無言の演技を通しました。

以降、『菊次郎の夏』(99)、『Dolls』(2002)、『TAKESHIS’』(2005)、『監督・ばんざい!』(2007)の計5作品の北野映画に出演。

ただ『HANA-BI』の妻を超すインパクトは残せませんでした。


その他の出演作に・・・

『秘密』(99)、『化粧師 KEWAISHI』(2001)、『昭和歌謡大全集』(2003)、『転がれ!たま子』(2006)、
『星守る犬』(2011)、『おかえり、はやぶさ』(2012)、『おしん』(2013)、『先生と迷い猫』(2015)など。

最新作は、去年末に公開された佳作『鈴木家の嘘』(2018)。


ほかのメディアでも充分に活躍されているひとですが、もっともっと映画の代表作が増えるといいですね。

ヤクザ3部作を撮り終えた北野武が、再び起用するかもしれません。


次回のにっぽん女優列伝は、北川景子さんから。

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明日のコラムは・・・

『都下の酔いどれ天使』
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