今年は、広島に原爆が落とされて70年となる年で、NHKなどでも特集番組を放送しているが、TBS系列の地元放送局RCCが広島電鉄とコラボして、当時広島の街で市民の足となっていた市内電車をもう一度走らせている。
今、市内を走っている電車は、スマートで車高が低く乗りやすく音も静かな車両が多い。
高校生の時には毎日通学で乗ったものだが、満員なので入口の階段の所にでも入り込んで乗ったこともあった。床も木製、椅子は別珍のような緑色の生地で、当時はエアコンはなく、暑い夏には窓全開だったような記憶がある。
さて、今回のこの企画は戦前、広島の街を走っていた電車は何色だったのか、というところから始まったようだ。
現在でも見られる古いタイプの電車は、グリーンとベージュのツートンカラーが多いように思うが、戦前は違っていたようだ。
だが戦後70年も経ち、当時の電車のことを記憶している人が僅かになっているし、残っている写真は白黒で、何色だったのかが分からない。
そして、被曝した電車をレストアしていたら下から青い色の層が出てきて問題解決、そして被爆電車は完成した。
この電車に乗るためには予約が要り、8月までの週末のみ、一日2回の運行と知って慌ててインターネットで予約したら、ご丁寧に速達で「乗車証」なるものが送付された。
広島駅前から西広島駅前、そして折り返し広島駅前まで、途中乗り降りなしで一人500円。
6月28日、日曜日、朝10時30分、広島駅を出発進行。
車内は、当時の電車を再現して木製の床や建具、真新しいのだが雰囲気はある。
電車の運転も昔のタイプ。聞けば、このタイプはまだ今でも走っているそうだ。
各所に大型テレビが配置され、この企画の説明や被曝当時の映像などが説明されていて、見入ってしまった。
車窓から見える景色は見慣れた広島の街なのだが、ここだけ異空間のような気がする。
通常のルートを通っているので、停留所や道の所々では記念に収めようとカメラを向ける人も多く、特に相生橋付近では原爆ドームと一緒に写せるであろう場所に大型のカメラを構えた大勢の人が待ち構えていた。
西広島駅に到着したのは11時ちょっと過ぎで、安いけどゆっくりで有名な電車は誰も乗せなければ30分でここまで来れるんだと実感。
ここで10分少々の休憩ですと言われ外へ出た。
夫が「写真を撮ってあげる」というので電車の前でポーズをとっていたら、若い男性に声をかけられている。
スマホである。
きっとさわったこともないであろう、「撮れるんかいな?」と思いながら近づいたら、英語で何やら会話中。
外人さんなの?
聞けば香港から広島に来ているとのことで、電車と歴史に興味があって乗ってみたんだそう。
20年前に行きました、とか憶えている香港の街の名前、昔の空港のことなど夫と一緒になって話したら「11歳でした」と言われた。
帰りも同じルートを戻り、広島駅に着いたのが12時。
昔の停留所などが記載された地図をお土産にもらって電車を降りた。
香港の「彼」にもバイバイした。
現在に戻された気分になった。