僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

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2014年02月19日 | SF小説ハートマン



置いてってくれ。

バーテンダーにそう告げて、あと2杯も飲めば空いてしまうボトルを引き寄せた。

ミリンダは医療チームによって隔離され、ハートマンでも3日間は会えないと担当チーフに宣告されていた。
経過だけでも知りたいと隔離ブースに足を運んでみたが、何度試してみても受付のモニターは冷たく[disable]を表示するだけだった。


今日はどうしたんだ、いつもの俺じゃない。


こんなに飲んだのは久しぶりだ。
左手首に目をやると、バイオ・リストコンピュータがプロパティ15%と表示している。
やれやれ、脳細胞の85パーセントはおねんねって訳だ。ま、たまにはいっか。

このまま酔いつぶれてしまえたらきっといい夢が見られるのだろう。

実際ハートマンはそうしようと思ってこの店に来たのだ。
彼のバイオ・リストコンピュータは彼自身の脳細胞、その稼働していない部分を使用している。
CPUは常に脳細胞のパルスを監視し、リアルタイムでニューロスキャンする事によって見つけ出した空き細胞をリザーブする。

あとは自分のパルスを自在に送り込んでそいつらを強制的に働かせるって寸法だ。
だがハートマン自身はそれを意識することはない。


まったく人間の脳ってやつはなんて大げさにできてるんだ。
持っている能力の30パーセントも使っていないなんて。
初めっから全部働かせることが出きれば本当はこんなバイオリストコンピュータなんていらないんだ。

自分の脳が自分で使いこなせないなんて変じゃないか、
これで人間は本当に進化した生物って言えるのか?


ハートマンは頬杖をついたまま最後のグラスを飲み干した。
後味の悪い酒だ。どうせ合成酒が何割かブレンドされてるんだろう。

ラベルさえブランドものなら中身なんて吟味するヤツはいない。
いつからそうなってしまったのか、酒はブランドネーム=値段だ。
ニヤニヤしたこの店員が店の裏でボトルの中身を入れ替えてるに違いない。

「玉付き」のボトルを注文すれば良かった、
こんな店にそれがあればだが…




もう帰ろう、

振り返ったその時、ライブステージで歌うコーラスガールの一人がじっとこちらを見ているのに気がついた。

歌いながらだが、じっとこちらを見て視線を逸らそうとしない。
何かを訴えかけているようだ。


ハートマンの残り少ない稼働中の脳細胞がメモリーの分析を始めた。

















イラスト「宇宙へつづく道」は 清水 航平君の作品です。 前橋市立笂井小学校6年生
















































コメント
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