GS-DSの大型スペースシップは圧倒的な武力にものを言わせ、宇宙各地から奴隷を狩っていた。
奴隷となるべき宇宙人達は飼育コンテナに監禁され、貨物ブロックに隔離されている。
コマンダー達は帰還コースへのワープを数時間後に控え各持ち場の最終チェックを行っていた。
飼育コンテナの中ではドラッグを投与された宇宙人達が無気力に、あるいは意識を失って
ICUポッド(生命維持装置が接続された低温ベッド)に身を投げ出していた。
まだ元気な宇宙人はミクロバギーに酔い、皮膚を冷たい汗で光らせ、血走った目をギラギラとさせている。
監禁の際抵抗を試みた宇宙人はその場で脳に簡単なロボトミー手術を施されたらしく、白く混濁した目に光はない。
監視役のアンドロイド達はギガトリップで完全にハイになっている。
人間に最も近いE・Tアンドロイド(合成脳細胞の発明でヒューマンアンドロイドの飛躍的進歩を実現させた、エイキチ・タチバナの名前からこう呼ばれる)は
監禁されている宇宙人達の悲惨な状況と自分に課せられた役割を心の中に整理する事ができず、トリプルチューンに手を出すものもいる。
彼らが監視している宇宙人達は、拉致される前まで自分のパートナーだったのだ。
単純作業向けの汎用アンドロイドと違い、新たな命令をプログラムされても完全に別のアンドロイドにはなりきれない自分を感じるのだ。
人間に近いが故に苦悩することもあるのがE・Tアンドロイドの特徴と言える。
トリプルチューンは合成脳細胞用の非常に危険な薬だが、とりあえず嫌なことは忘れられる。
一度その味を覚えるとその誘惑から逃れるのは難しい。ここではそのテのものは望めば何でもすぐに手に入れることができるからだ。
ミクロバギーに酔いうつろな目をした奴隷達に混じって、ポッドにぐったりと横たわるハートマンの姿があった。
希望を失った奴隷達と外見は全く区別がつかないが、ひとつだけ大きく異なっていることがある。
ハートマンの横たわるICUポッドが彼の生命を維持しているのではなく、
プラグインしたペプシマンのバイオリストコンピュータが
スペースシップの生命を、
今はまだ、
維持しているのだ。