僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

草原のクンクー

2014年02月24日 | SF小説ハートマン



遠くで何かが啼いている。

そうか、ここにはクンクーが生息しているんだったな。


クンクー!


何頭かいるようだ。まだ本物にはお目にかかっていないが一度見てみたいものだ。遠視スコープに手をかけた時、突然地面に震動を感じて振り返る。
大きな物体が目前に迫ってくる。
ハートマンは瞬間的にハンディウエポンをホルスターから引き抜いた。


片膝をついてハンディウエポンを構えると、迫ってくるように感じたその大きな物体は実際は動いてはいなかった。

巨大なクンクーがハッシーを咀嚼しながらこちらを見ている。時折前足でハッシーの根元を掘るように地面をたたく。

いつからそこにいたのか。景色に溶け込んでいたので全く気付かなかった。
グリーンの濃淡まだらの体色、全身がきらきらと輝く半透明の体毛で覆われている。
体長は5メートルくらいあるだろう。地球の牛とカバをあわせたような体形だ。堅い表皮とその色は恐竜をイメージさせる。

だがまったくおとなしい、天敵がいないせいなのかも知れない。
体も大きいがその乳房もそうとうなものだ。クンクーの乳は栄養豊富でハッシーミルクとして製品化されている。
だがハッシーに含まれる麻薬成分のアルカロイドは当然のことながらクンクーの乳にも含まれている。
子どもには不向きのミルクだ。

よく見ると12-3頭の群のようだ。おとなしいと分かっていても、その大きさと風貌に圧倒される。
用心しながら近付いてみた。近付くにつれむっとするほどの体温を感じる。
この星の生き物は例外なく体温が高い。太陽光線を体に蓄えるシステムを持っているのだ。
体が緑色をしているのもその為だろう。
体温が平常で40度位と高いのは、夜に急激に低くなる気温に耐えるように自然に備わった生体のシステムなのだろう。

クンクーはハートマンなど全く意識に無いようだ。
そばによって体をたたいてみたが、その場を動こうともしない。

時折クンクー!と啼き仲間とコミニュケーションを取り合っているようだ。
その声はかなり大きいのだが、間近で聞いても遠くの声に聞こえる。


ギターみたいなやつだな。人間とは違う周波数の音で会話しているのか、驚いたもんだ。


地球で昔流行したと言われるクラッシックギターは、近くで演奏しても遠くで鳴っているように聞こえるといわれる楽器だ。
とにかくあの娘の手がかりを探そう。

今思えば名前くらい聞いておけば良かった…
ハートマンが離れるとそれを待っていたかのようにクンクーの群が移動を始めた。



























コメント
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