「やっぱり海はいいなぁ」
「きもちいいね」
「留美子は海でも泳ぐんだろ?」
「うん、昔は叔父さんと良く泳いだよ」
「泳げるヤツはいいな、波があってもぐんぐんいってさ」
「辰雄だって練習すればすぐ泳げるって」
「オレは頑張って25メートルだから無理だけどさ、叔父さんって誰?」
「父親のお兄さん、もう亡くなっちゃったんだけどね」
「そうなんだ」
「ずっと鎌倉の材木座にアパート借りてひとりで住んでてさ、毎日泳いでた」
「へぇ~、海の男だね」
「そう、湘南ボーイって呼ばれてたんだって」
「すごいじゃん、カッコいいなぁ」
「エレキギターも弾いたりして、結構もてたらしい」
「おぉ、んじゃ加山雄三みたいじゃん」
「うん、それよりちょっと昔だから石原裕次郎なんだって自分で言ってた」
「裕次郎って、あの暴走老人の弟だよね?」
「そう都知事のね、でも当時は一番カッコいいスターだったらしいよ」
「名前だけは知ってるけど、映画も見たことないし」
「裕次郎は映画のスターだけど、湘南ボーイは身近なイケメンってとこかな」
「それじゃぁ恋愛とかいっぱいしたんじゃない?」
「あんまりその話はしたがらなかったんだけど、一度だけ親戚の結婚式でお酒飲んだ時聞いたことがあるよ、聞きたい?」
「おおっ、聞きたい聞きたい」
つづく
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