夜に咲く烏瓜の花 (ピンボケですが・・・)
(つづき)
外より茶室の中が早く暗くなるので、朝茶のように初炭を先にしました。
「お炭を置かせて頂きます」
鵜籠の炭斗を運びだし、香合は載せずに盆香合です。
灰器は古染付の四方皿、「おっ~」という声が一瞬聞こえたような・・・聞こえないような・・・。
あまり流儀の規矩にとらわれず、おおらかに自分のお茶に徹したいと願っています。
灰器の四方皿は半東N氏愛蔵の古染付で、中国・明末の戦いの様子が鮮やかにイキイキと描かれています。
正客からいろいろお尋ねがありました。
「お釜は?」
「糸目桐文車軸釜で、四客の長野新さんの作でございます。
7年ほど前、本で見た糸目の車軸釜が忘れられず、写しを作って頂きました」
あとは長野さんが質問を引き受けて丁寧に答えてくださって、作者が同席するのも好いものですね。
お気に入りの「糸目桐文車軸釜」 (長野新氏造)
「この車軸釜を茶席で見るのは初めてだと思いますが、如何でしょうか?」と私。
「嫁に出した娘に逢っているような心地です。
よく使ってくださって、順調に育っているようで嬉しいです」と長野新氏。
きっと長野氏は制作時の産みの苦労を懐かしく思い出していることでしょう・・・。
その釜は優雅なシルエットを浮かべ、暗くなりかけた室内にしっくり溶け込んでいるようでした。
炭を置き、月形を切ってから後掃きをし、灰器を下げ、盆に乗せた香合を持ち出しました。
香を焚き、香合を拝見に出します。
香合は大徳寺別院・浮見堂の古材で作られた「やかた舟香合」(誠中斎作)、盆は呂色塗波文四方盆(輝斎作)です。
今回は出船、Sさまがハワイへ帰る舟に見立て、五色のテープを飾りました。
送別のテープというより、Sさまの新たな茶の湯の出立を祝ってのエールです。
そんな暁庵の心をSさまがしっかりと受け止めてくださったようで嬉しいです・・・。
エールの五色のテープを飾って
初炭が終わり、懐石をお出ししました。
担当の佐藤愛真さんが腕を振るって作ってくださった懐石は
「どれも美味しい!」と好評を博し、嬉しいです。献立を記念に記しておきます。
夕去り茶事のお献立
向付 鱚の昆布〆 莫大 花穂 山葵 加減酢 (鮑形・古染付)
飯 一文字
汁 石川芋 順才 八丁味噌 粉山椒
煮物椀 小鯛の素麺巻き 隠元 青柚
焼物 えぼ鯛の塩焼き (織部重箱 鈴木五郎作)
強肴 揚げ茄子の煮もの 鴨ロース 隠元 炊き合せ ふり柚子 (ガラス大皿)
箸洗 海藤花(かいとうげ)
八寸 鮎変わり揚げ 枝豆松葉刺し
香の物 沢庵 水茄子 瓜 (蓮華文青磁鉢)
湯斗
海藤花(かいとうげ)は、タコの卵から製される食品で、兵庫県明石市の名産。
江戸時代に明石藩の儒者・梁田蛻巌(やなだぜいがん)が「海藤花」と命名した。
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夕去りの茶事支度