暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

蓮見の朝茶事(3)  蓮の花の歌声

2009年07月18日 | 茶事
                
後座の花は宗旦むくげと山ごぼうをひさご籠にいけました。
濃茶は重ね茶碗、続き薄で薄茶を差し上げました。

水指は赤紫色の義山「蓮池」、
これは見立てでギヤマンの花器に塗蓋を合わせたものです。
それから薄器は大宗匠お好みの三景(三渓)棗、
三渓園を造り、広く市民に公開した原三渓翁に心から敬意を表して・・・。

茶碗は見込みに蓮華のある青磁、仁清写しの水玉文、
ユーモラスな魚が泳いでいる南京赤絵など。
半東のTさまと一緒に、三渓園の蓮池をめぐるさまざまな景色を
お楽しみいただけたら・・・と考えました。
Kさま、ご連客の皆様が楽しんでくださったようで嬉しいです。

Kさまから、蓮の花の赤紫色(マジェンダ色)は
「日常の中の小さな物事を慈しむ心」
を表していることを教わりました・・・ステキですね。
そんな眼差しで茶事をやっていきたいものです。

茶事の終わりに、Kさまが「蓮の花」を歌ってくださいました。
清らかでひたむきさを感じる歌声をみんなで聴き入りました。

もう二度とないであろう、この時間とご縁を思い、
ふいに涙が滲んできました。
心に残る一会となり、感謝しています。

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   写真は「蓮華微笑」、昨年の早朝観蓮会で写したものです。






蓮見の朝茶事(2)  観世音菩薩

2009年07月17日 | 茶事
「蓮見の朝茶事」まで1週間に迫ったある日、
「観世音菩薩」の色紙が「如蓮華在水」というエール
とともに親友から届きました。

れんかは水にあるがごとし・・・どんな所に居ても自分らしく、
きれいな花を咲かせるという意味だそうです・・・アリガトウ!

蓮の花が大好きだったという原三渓は
三渓園・蓮華院で茶会を催したとき、
東大寺三月堂の不空羂索観音がもっていた蓮華を
茶室の琵琶床に飾ったそうです。

待合の色紙は「観世音菩薩」の布絵、蓮の蕾を手にしています。
軸は「清流無間断」。
曇りの無い清き心で流れに身をまかせて精進すれば、
その縁(仏縁、人の縁、茶の縁)は途切れることなく続いていく
と解釈しました。
今日のお客様とのご縁が途切れることなく続きますように・・・と
願いながら掛けました。

朝茶事でしたが、初炭は盆香合です。
香合は、明治39年に東大寺大仏殿の修復古材で作られた「一蓮弁」。
百年くらい前のものですが、エメラルドグリーンの蓮弁が鮮やかで
お気に入りの香合です。

風炉中拝見のとき、遊び心で七宝のカエルを香炭の上に置きました。
ぎょっと驚かれたお客さまもいらしたようで、ウ、ウレシイ・・・です。

懐石は伏せ傘です。
伏せ傘は始めてというお客さまが多かったのですが、
座が早くなごみますし、時間短縮、亭主の負担軽減になって、
一時やみつきになりました。

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写真は「観世音菩薩」  布絵作家 森下隆子作   

蓮見の朝茶事(1)  合唱曲「蓮の花」

2009年07月16日 | 茶事
横浜市三渓園で行われる早朝観蓮会の季節がやってきました。
今年の早朝観蓮会は7月中の土、日、祝日だそうです。
毎年、開花が早くなる気がしていますが、
地球温暖化の影響でしょうか?

清らかに咲く蓮の花、早朝の三渓園の蓮池を思い浮かべて、
昨年7月26日に「蓮見の朝茶事」をしました。

朝茶事のご案内をしてすぐに、お客さまの一人、
Kさまから次のようなメールが届きました。


「蓮の花」(高校時代合唱部にいた頃に知った歌ですが・・・。)
という唄がとても好きでして・・・。
勤務先の大学構内で蓮の花(大賀ハス)が見られると、
ふと自然と唄が浮かんできます。

 混声合唱組曲『この地上』 
   「蓮の花」  
 詩:高野 喜久雄  曲:高田 三郎

  蓮の花が咲いている             
  泥の中にさえこれだけの             
  きよらかな色と形が    
  ひそんでいるというように             
 
  蓮の花が咲いている             
  忘れたものの遥けさを              
  遥けさと大きさを                  
  思い起こせというように            

  蓮の花が咲いている
  葉の上にいま落ちた雨
  白銀の玉となれに
  なお輝けというように

  蓮の花が咲いている
  問われた問いは大きくて
  問われつつ身をゆだね
  咲くほかないというように

ほんとに蓮の花って、なにかを気づかせてくれる花ですよね・・。
不思議な花だな~って思ってしまいます。  Kより
                           

歌は知りませんが、歌詞を読んで
はっと胸うたれるものがありました。
ご両親を早くに亡くされたKさまにとって、
蓮の花は特別の花のように思えました。
それで、Kさまに「蓮見の朝茶事」のお正客をお願いしました。

     (つづく)
   写真は「三渓園の蓮池」 (写真提供は三渓園)。  

茶道は楽し  真之行台子

2009年07月14日 | 稽古忘備録
関東甲信地方が今日梅雨明けだそうです。
そういえば昨日から温度計は上りっぱなし、
陽射しも強烈で外へ出る気力がありません。
こんなときには「心頭滅却すれば火もまた涼し」の心境で
お茶の稽古に精出しています。

一昨日から今月の相伝の課題、真之行台子に取り組んでいます。
1年間お稽古へ通えなかったので、風炉の真之行台子は実に2年ぶりです。

真之行台子は大好きな点前の一つです。
これが基本となり、台子の割り稽古の形でいろいろなお点前
(小習い、四ヶ伝など)が生み出されています。
一見複雑なようですが、とっても合理的でシンプルな点前だと思います。

一日目はノートだけ読んで、少し頭の錆を取り除きました。
二日目、ノートを横に置いたまま、時々確認しながらゆっくり点前をします。
だいぶ思い出してきて、体が徐々に反応するようになりました。
それで、ノートなしで、もう一度点前に取り組んでみました。
三日目の今日は最初からノートなしです。
一ヶ所だけあとでノート確認しました。

これから稽古日まで毎日、所作が体になじむまで
真之行台子のお稽古をします。
そうすると、忘れても体が覚えていてくれるから・・・。
今や忘れる事が自慢になりました・・・。

さて、どうなりますことやら・・・で始めた真之行台子でしたが、
一つ一つ所作を確認したり、
点前の流れに納得したり、
体が覚えていてくれることに感動したり、
調べる事(道具組)がみつかったり、
茶道の稽古って楽しいですね!

                  




四国遍路  薬王寺で打ち止め

2009年07月13日 | 四国遍路
第二十三番札所薬王寺門前のふなつき旅館の女将さんが
疲れ果てて到着した私を待っていてくれました。
「龍山荘からこの時間に着けたなんて、がんばりましたね。
 お風呂にゆっくり入ってお疲れをとってください」
とねぎらってくれます。

部屋に入り、足のテーピングをとり始めました。
歩き遍路を続けるには何と言っても自分の足が頼りです。
私の足は靴ずれや捻挫予防のテーピングで、足の指一本一本、
踵から足首にかけて、フランケン・シュタインみたいに
ぐるぐる巻きになっているのです。

そっと、テーピングを剥いでいきます。
テープでかぶれた甲の皮膚がズルッと剥がれました。
「痛いっ!」 
赤裸の皮膚はかなりの大きさです。
そういえば、平等寺で足の甲に違和感を感じたことを
思い出しましたが、あとの祭りです。

女将さんに教わって、近所の薬屋さんへ行くと、
「この辺で足を痛めるお遍路さんが多いのですよ。
 どれどれ・・・これはちょっとひどいですね。
 無理しないで、少し休んだ方が早く直りますよ」

龍山荘から30キロの行程を歩ききって、
「さあ明日からは、いざ室戸の最御崎寺へ!」
と思ったところだったので、この展開は想定外でした。
でもすぐに、「きっとこれはお大師さまのお導きだ」と思いました。

「今回は打ち止めにし、しっかり直してまた来なはいや」

こういう時には無理をしないで、引き返すことも必要です。
明日、第二十三番札所薬王寺で打ち止めを決意しました。

                    

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