暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茶室「寿紘庵」

2010年01月12日 | 茶道楽
初釜が行われた「寿紘庵」(じゅこうあん)は
相模原市麻溝台にあります。
何度も車で通っている場所ですが、今までご縁がありません。
初釜の帰りに茶室「寿紘庵」を見せて頂きました。

四畳半台目出炉、点前座には仕付け棚があります。
貴人口上の扁額は鵬雲斎大宗匠筆とのことです。
桃山時代のように、にじり口の側に刀掛けがありました。
水屋も広く設備も完備していて使いやすそうです。

写しではありませんが、如庵を意識して一本も釘を使わずに
1年がかりで造ったそうで、宮大工の千葉修弘さんの施工です。
露地と蹲、腰掛待合、母屋(広間)との渡り廊下もなかなか凝っています。

茶庭にある亀甲竹の景色に惹かれました。
竹の青と亀甲模様の白のコントラストが素晴らしく、
茶室と融和していました。
竹は今頃が一番美しいそうですが、雨の日も風情が増しそうです。

    

でも、今はあまり使われていない様子なので
「使ってあげたらお茶室が喜びそうですね」
とオーナーに申し上げたら、にっこりして
「是非どうぞお使いください」

新春早々、素敵な茶室との出会いがありました。

                        

   写真は「寿紘庵扁額」と「腰掛待合」

庚寅の初釜

2010年01月10日 | 稽古忘備録
1月7日は庚寅の初釜でした。
相模原市にある寿紘庵の広間にて立礼で行われました。
床には妙心寺管長・臥雲和尚筆の「壽山萬丈高」、
床柱には素心蝋梅と春曙紅(ピンクの椿)が竹一重切に
生けられていました。

先生から年頭のご挨拶を頂き、正客のS先輩が社中を代表して
初釜の御礼と今年の抱負を述べられました。
お二人とも茶の道に精進したいという気概が溢れていて
その気迫と情熱に私も思うところがありました。

先生が初炭をなさいました。
香合は神々しくもかわいい「銀の鈴」、宗悦作です。

         

初釜恒例の花びら餅が縁高で出されましたが、
朝のお手伝いのときに正面をお尋ねしました。
「お家元では牛蒡が手前だそうですので そのようにしてください」
長年の疑問が解けた思いでした。
花びらの美しさと柔らかさ、牛蒡と味噌餡のハーモニーを賞味しました。

嶋台の重茶碗で先生が濃茶を練ってくださいました。
茶入は古瀬戸の肩衝、仕覆は遠州緞子、
茶杓は卓厳和尚作「華かがり」、
皆具は中村翆嵐作、鶴の紫こうちです。

濃茶が終わると、お楽しみの福引です。
鶴の一等賞は坐忘斎お家元直筆の扇子と干支の茶碗、
亀の二等賞は鎌倉彫の銘々皿、私は梅で懐紙・小茶巾一式でした。
中に一枚だけ空クジがあり、I先輩が引きました。
「空クジを引いた人はどなたかしら?
 もしかしたら「瓢箪から駒」かもしれませんよ」と先生。

I先輩が紙包みを一枚また一枚と開けていくと
最後に瓢箪の根付が出てきました。
瓢箪を開けると米粒ほどの駒が出てきて、みんなびっくり。
空クジが何と「瓢箪から駒」でした。

重箱の点心と煮物碗が出され昼食です。
お酒も注がれて一層にぎやかになりました。
中立ちのあと、薄茶はY先輩とS先輩が点ててくださいました。

        

干菓子は三種類。
辻占(つじうら)煎餅という干菓子を始めて知りました。
金沢・高砂屋製です。
石川県の金沢市には正月に色とりどりの辻占煎餅を
縁起物として楽しむ風習があるそうです。

二つずつ取って、中に入っている辻占を読みあげ、大笑いです。
私のをご披露すると
 一つ目は、「あきらめられぬ」
 二つ目は、「好いたお方と添いなおる」
・?・心当たりはないけれど意味深長ですよね。
今年は何やら佳きことがありそうな・・?

アイディア満載の楽しい初釜でした。

                          


 写真は、「素心蝋梅と春曙紅」「炭斗と銀の鈴香合」
       「辻占煎餅」


正客あらそい

2010年01月07日 | 茶道楽
「近代数寄者の名茶会三十選」(熊倉功夫編 淡交社)に
はまっています。
高橋掃庵が記した「大阪・是庵茶会」(東都茶会記)を読んでいて、
思わず笑い転げてしまいました。
「正客あらそい」の様子がユーモラスに書かれていたのです。

大正4年(1915年)4月20日、亭主は上野是庵(理一)、
客は馬越化生、益田鈍翁、高橋掃庵、野崎幻庵、戸田露朝という
そうそうたる顔ぶれです。

 
イザ腰掛に立ち出でんとする段取りとなるや、
例によって正客争いは始まりぬ。

鈍翁は近来耳が遠くなりて、
亭主との応対に頓珍漢(トンチンカン)の挨拶をなすことあり、
かくて大阪三界まで奇談の種を振りまきては
末代までの名折れなれば、
正客は是非に化生翁に懇願と言えば、

化生翁は前回鈍翁、幻庵等と嘉納本家の茶会へ招かれたる時、
小間にて天目点と云う六ヶ敷き(むつかしき)茶会なるを内偵し、
一同申し合わせて翁を正客に推し、
辛き(つらき)目見せられたる経験もあれば、
今度はいっかな承知せず、と言い張りて、

何時果てるとも見えざりけるが、
一同、鈍翁の「耳遠し」と云うに同情して、
腕力づくめに化生翁を正客に押し出し、
末客(おつめ)はもちろん戸田露朝。

かくて東西一騎当千の剛の者が頭となり尾となりて、
軍容正々腰掛に立ち出でければ、やがて庵主の出迎えあり。

・・後略・・

その時の情景が見えるようですね。
正客に押し出された化生翁がかわいそう・・と同情しつつ、
正客が決まっていないことにびっくりしました。
名だたる数寄者を招いての茶会なので、事前に正客が決まっていた
・・と思い込んでいたのです。

そして、大正の昔も今と相変わらず「正客あらそい」が
あったことにへんに納得し、安堵しました。

ここまで書いたところで、一通の手紙が届きました。
茶事への嬉しいお招きでしたが、正客が不明なのです。
楽しみな茶事も少し気が重くなります。

感服係りで名高い化生翁ですが、
その日は「正客あらそい」でお疲れなのか、
今ひとつ感服の気魂が乗らなかったようです。
人間ですもの、そんな時もありますよね・・・。

                       
   写真は「木瓜の花」、散歩途中でパチリ。

アバター

2010年01月04日 | 歌舞伎・能など
寅年の年頭にふさわしい映画を見ました。
「アバター」です。

「アバター」どこかで聞いた事が・・・。
そうそう、ブログでキャラクターを紹介する欄に
登場する人形が確か「アバター」。

何の予備知識なく近所のシネマコンプレックスへ行き、
上映時間がぴったりなので入りました。
監督が「タイタニック」のジェームズ・キャメロンなので、
きっと満足できるのでは・・という期待はありましたけど。

パンフのSTORYによると、
「アバター」とは、地球人とナヴィ(地球人に似た、衛星パンドラに住む民族)
のDNAを遺伝子操作によって合成したハイブリットの肉体で、
特殊な装置によって意識を転送、リンクされた人間の「ドライバー」が
遠隔操作することによって、生命体になり活動が可能となる。

最初、「アバター」の概念についていくのが大変でしたが、
すぐに「アバター」みたいに環境に慣れてきて、パンドラ星に住む
ナヴィ族の魅力にぐんぐん引き込まれていきました。

ナヴィ族はパンドラ星の生態系の一員として全ての生命体と共生し、
獰猛な鳥たちとさえ尻尾によって交信し、絆を深め合って生きています。
根源にあるのは、大自然への畏敬の念と生けるものへの愛。

しかし、彼らを理解しようとしない地球人の開発行為によって
容赦なく破壊され、追い詰められていきます。
壊滅的危機を「アバター」にリンクしている青年によって
阻止され、パンドラ星から地球人を追い出して、
再生へ向けて出発するというお話です。

宮崎駿の「もののけ姫」や「天空の城ラピュタ」を見ているような
気にふとなる映画でもありました。
きっとキャメロン監督は宮崎駿のファンだと確信しています。

次第に地球人を演じているアメリカ人が悪者に見えてきて、
新しいアメリカの在り方(すなわち地球?)を模索しているような、
観客もいろいろ考えさせられ、複雑な気持ちになる映画でもあります。

3Dという立体画面で見れるバージョンもあるそうですが、
「これで3Dだったら、心臓麻痺をおこすシルバーがいるんじゃないの?
 2Dで十分迫力があって良かったわね」
と、見終わってから主人と話し合いました。

2Dにしろ、3Dにしろ、お薦めの映画です。

                      
  写真は、アバターのパンフより


「する茶のすすめ」

2010年01月02日 | 茶道楽
平成22年1月号「淡交」に筒井紘一氏の「する茶のすすめ」
が掲載されていて、興味深く頷きながら拝読しました。


明治維新以来、一般的に「茶道」といった場合には
大きく二つに分けて考える必要があり、
一つは「する茶」であり、いま一つは「教える茶」です。
「する茶」とは、茶事を催すことを中心とした茶の在り方であり、
「教える茶」とは、指導・教育を中心にした茶のあり方です。
 ・・・・
現在は「教える茶」が主で、茶道の本来の姿である「する茶」が
後退してしまったが、この二つは車の両輪のようなものなので、
これからは「教える茶」の中に「する茶」が復活するよう
心掛けようではありませんか・・と呼びかけています。
詳しくは是非本文をお読みください。
                       

「する茶」(茶事)を目標に長らく中断していた
茶道の習いを再開して6年になりました。
目標に掲げたものの、「する茶」はすぐには行い難く、
稽古再開の後すぐに茶事教室へ入門し、茶事のあれこれを
講師の諸先生や先輩方から「習い」ました。

茶事教室では亭主、半東、水屋、客に別れて
いろいろな役目を経験しながら茶事を身につけていきます。

ある茶事でN先輩と水屋の係りになりました。
始めての水屋で、何をどうしたらよいのか
やり方、順番、タイミングが全くわからない状態でした。

思い切って(半泣き状態で)N先輩に
「何から準備したらよいか全くわかりません。
 宜しくご指導ください」とお願いしました。

N先輩はあれこれ手を動かしながら
「水屋は先ず火を熾し湯を沸かすこと、
 火が熾ったら火入の灰を暖めておくこと。
 あとは私のやり方を見ておくように・・・」
と、言って下さいました。

・・・有難かったです。
言われたことをするのも難しかったのですが、
N先輩の邪魔にならないように見させていただきました。
茶事の全てが体に沁み込んでいる様な見事な水屋ぶりでした。

私もいつかN先輩のようになれたら・・・と思っていると
「暁庵さん、茶事は自分でやらなければ いつまでも身につきませんよ。
 お客さま二人か、三人をお招きして、兎に角やることです」

このお言葉に勇気づけられて、今に至っています。
今年はどのような試練、どのような出逢いが待っているのでしょうか。
今できる「する茶」を心して積重ねていければ・・・と思います。

本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

                       

写真の色紙は「寅ちゃん」、森下隆子さんの作です。