暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

淡交タイムス10月号の訃報に思う

2024年10月12日 | お茶と私

 

淡交タイムス10月号が届き、2つの訃報を知り、胸が塞がれる思いです・・・。

坐忘斎お家元の巻頭言「思わぬこと」は、御長男・明史さまの急逝の報告でした。

お盆の大文字送り火の頃に体調が悪いと連絡があり、その不調が肺炎を引き起こし、そこから数日で急性呼吸不全で亡くなるなど誰もが思いもよりませんでした・・・と綴られていました。

どのような悲しみの中でこの報告を書かれたかと思うと、私も息子が二人おりますので、道半ばで急逝されたご長男のことが我がことのようで悲しみに沈みました。

心からご冥福をお祈りいたします。

けれどお家元が深い悲しみの中で心を閑めて淡交会会員にお知らせくださったことに感謝いたします。

 

        (裏千家今日庵の兜門)

もう1つの訃報は、阿部宗正先生が8月30日に逝去されたとありました。

阿部先生はもちろん私のことをご存じないと思いますが、私は温かな御心と素晴らしい教えを先生から頂戴しております。

それは2010年にお伺いした今日庵・夏期講習の思い出です

夏期講習は8月末の熱いさなかに行われ、その中で業躰先生と全国から集まった受講者(茶名以上)がそれこそ汗水をいとわず師弟膝を突き合わせて、一心不乱に修練するという講習会です。

その日は京都の蒸し暑い猛暑の中、今日庵の鑓(やり)の間で阿部先生のご指導を受けました。

業躰見習いの方が庭に水を撒いてくださると、

「ありがとう! これで少し暑さがしのぎやすくなりました・・・」とすぐにねぎらいの言葉をお掛けになりました。

最初に炭手前をする若い方(たしか、その朝に科目と担当が決められたような・・?)が「先生、私、炭手前をしたことがありません・・・」というではありませんか。

私は内心「炭手前をしたことがない人を夏期講習に送るなんて、その先生もどうかしている・・」とあきれて、その若い方がお気の毒に思っていたら

「初めてでもどうぞ炭手前をしてください。ご指導しますので・・・」とにこやかに阿部先生がおっしゃいました。

そしてその若い方は阿部先生のご指導の元に炭手前を最後までしっかりとされたのでした。

阿部先生という業躰先生(プロフェッショナル)の指導力にもうもう感嘆し、どんな方にもどんな状況でも根気よく丁寧に恥をかかさないように教える大切さを身をもってお教えいただきました。

 

          (裏千家今日庵の無色軒にて

私は長緒のお点前をご指導頂きました。柄杓や長緒の扱いなど丁寧にお教え頂きました。ちょうどその日は誕生日だったのでそのことを申し上げると

「それはおめでとうございます!」と笑顔でご挨拶頂いたのも良き思い出です。

もう1つ、今でも忘れられない教えをいただきました。

「茶事や茶会で茶室やお道具も大切かもしれないけれど、お点前が一番のご馳走だと思いますよ。どうぞお点前の稽古をしっかり頑張ってください」・・・と阿部先生。

坐忘斎お家元のご長男・明史さまと阿部宗正先生のご冥福を心からお祈りいたします。合掌。 

 

 


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