暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

初めての仕覆づくり

2010年04月15日 | 茶道具
1月から月に1~2回のペースで仕覆づくりを習いだしました。
4月のお稽古に行くと、
「今日は先ず御物袋(ごもつぶくろ)を仕上げてください」

前回、御物袋に茶碗を入れて紐でしっかり結びました。
襞をきれいに整え(これが大変でした・・・)、
水でたっぷり濡らして、そのまま自然乾燥させて帰ったのでした。
やっと今日、仕上がりそうです。

仕覆づくりについて何も知らずにK先生の門を叩きました。
「半襟をつけるくらいしか、針を持ったことがないのですが
 そんな私でも出来るでしょうか?」
恐る恐るお尋ねしました。

すると、K先生は
「大丈夫ですよ。高校の先生をしている男の方も
 習いに来ています・・・。
 それに、作ってみるとわかりますが、縫う処はとても少ないの」
さらに、側にいらしたK先生のご主人が
「仕覆づくりは不器用な方がいいんじゃないかなぁ・・・」

お二人のお言葉に勇気百倍、一歩踏み出しました。
一番の動機は、平和島骨董まつりで買った茶籠です。
「茶籠の茶道具に着物(仕覆)を着せて、早く使いたい!」 

最初は御物袋づくりからだそうで、祥瑞の茶碗を持ってゆき、
茶碗に合う布地を先生と相談して決めました。
御物袋は紫か白で作りたいと思っていましたので、
先生から布地を分けていただきました。

先生が奥から取り出したのは明治時代の白い縮緬。
白無垢の花嫁衣装の裂地かもしれません。
時代のものなので少し生成りになっていて、
それがとても好い感じです。

「出来たら茶碗と仕覆の裂地の時代が合うと良いのですよ」
大正10年頃に製作された茶碗なので、その縮緬はぴったりでした。
こうして御物袋づくりが始まりました。

今日はいよいよ最後の工程です。
初めて組んだ長緒をつがりへ通して結び、
床屋さんみたいに丁寧に緒の端をカットして
出来上がりました! ウッ、ウレシイ・・。

                      

風炉初炭手前

2010年04月12日 | 稽古忘備録

「今日から風炉の総ざらいをしましょう」
と、先生が灰型を整えて待っていてくださいました。

床のお軸は柳生芳徳禅寺の橋本紹尚和尚筆で、
「花簇々錦簇々」(はなぞくぞく にしきぞくぞく)。

風炉初炭手前から始まりました。
半年しか経っていないのに炉に慣れ親しんだ頭と体は
すぐには切り替わりません。

炭斗、羽根、火箸、香合、灰器、灰匙が風炉用になりました。
炭の細さが頼りなく、枝炭も細く短い風炉用の三本です。
香合が陶器から木地に変わり、白檀を三枚、
小振りの灰器に藤灰を少し入れました。

灰器を運び出す時、点前座での足の運びが変わり、
斜め下座へ向いて座り、置く手が左手になります。
炭を継いだ後に灰器を持ち出し、月型を切りますが、
月型を切るのは
「お客さまをお迎えするために、灰型を新たに整えて
 お待ちしておりました」
という意味だそうです。
言葉ではなく所作で表わすところが茶の湯らしいですね。
初炭手前で一番好きなところです。

            


さて、お稽古では
月型を切るために灰器を膝前に置くときの膝の動きが難しく、
所作がきちんと身についていないのでご指導を受けました。

先ず左膝を引いて灰器を取り、
右膝を引いて灰器を膝前に置きます。
灰匙はなるべく端を右手で持って、
次に左手で真ん中を持ちながら縦にして、
右手を進め、左手で手首を固定して月型を切ります。

切った後には逆の手順で灰匙を灰器へ戻し、灰器を右手で浅く持ち
左手で扱って右手で深く持ち直してから
右膝を前へ出しながら左斜めを向き、
左手で灰器を定位置へ置きます。
今度は左膝を前に出して、風炉前の元の位置に戻ります。

文章に書くより実際にやった方がわかりやすく、
特に難しいことではありませんが、
自然体で体が動くようになるまで稽古あるのみです・・。

その日は、初炭手前、濃茶平点前、和巾をお稽古しました。

                          応援してね!

   写真は「利休梅と黒椿」と「散歩道の桜の景」です。

燕の向付

2010年04月09日 | 茶道具
新緑が目に柔らかく、燕が渡ってくる季節になりました。

連休頃になると燕は子育てのために巣をつくり、
せっせと餌を運ぶ姿を目にするようになります。
巣には黄色い嘴の雛たちが餌を求めて、大きな口を
開けて待っています。
その光景は初夏の到来と生命の力強さを感じさせてくれます。

燕の絵のある器が手元にやってきました。
三月三日に瀬谷の吊るし雛を見に行った折、
川口邸前にあった武蔵野焼の工房(相陶苑)で買ったものです。
お近くに武蔵野焼の窯元があることを初めて知りました。

相陶苑の川下善靖氏に窯のことをお尋ねすると
「東京郊外から瀬谷へ移って7、8年になりますが、
 そのまま武蔵野焼を名乗っています。
 二階が工房になっていて、陶芸教室もしています」

緑釉が深くきれいな色で、燕の絵がかわいらしく
一目で気に入りました。
「向付(むこうづけ)に使いたいな・・」

向付は四個しかなく、そのうちの1個は燕の絵がありません。
「たぶん描き忘れたのでしょう・・?」
とおおらかな川下氏。
我家の茶事のお客さまは三名~四名なので購入を決めました。

                     

使う時季は4月から6月頃で初風炉の5月がベストでしょうか。
「どんな料理がぴったりかしら?」
レパートリーが少ないのを忘れて、懐石の献立を考えたり・・。

戸棚の中で出番を待っていますが、来年になるかも・・?

さくらの茶事 (2)

2010年04月06日 | 思い出の茶事
(つづき)

銅鑼の音で身を引き締め、後座の席入りです。
床には東海さくらが満開でした。

静寂のうちに濃茶点前が始まりました。
茶銘は小山園の雲鶴。
茶碗は黒の大樋焼で、小振りで掌に温かく納まります。
黒に映える緑の色彩に見とれ、香りや練り加減も良く、
美味しかったです!

拝見に出されたお道具のいくつかは
「そういえば、前にお目にかかったかしら?」
と懐かしく再会しました。

中でも瀬戸肩衝の茶入はお気に入りでして、
大亀和尚の「松風」という銘がある名器です。
鹿の子斑を連想させる景色が素晴らしく、
勝手ながら「若草山」と名付けて愛で楽しんでいます。
衣装持ちで、仕覆はかわいらしい「苺緞子」でした。

薄茶は水屋方とご一緒に別室で頂戴しました。
桜の下で毛氈を敷いて・・とご亭主は考えていたようですが
春の嵐で室内の薄茶席になりました。

別室はカーテンが開けられ、それまで見えなかった桜が
ベランダ越しに飛び込んできました・・・。
柔らかな若緑の中にピンクの雲が幾重にもかかって
山中のような桜の景です。

御所籠が運び出され、薄茶は色紙点てです。
すらすらと優雅なお点前に感心しながら
干菓子も美味しくニ服頂戴しました。

ご一緒した水屋方は三名で、客三名よりも大勢の方に
おもてなし頂いたことに恐縮しながら、楽しく歓談しました。
お近くに助け合い、研鑽し合っている茶事のお仲間が
いらっしゃることに毎回感嘆し、うらやましく思っています。

そして今回も、皆様のお心こもるおもてなしに感謝しつつ、
たくさんの刺激を頂戴しました。
正客のKさんと次客のIさんはその夜、興奮してなかなか
寝つけなかったとか・・・。

ご亭主様、水屋の皆様、本当にありがとうございました。
これからもどうぞ宜しくお願いいたします。

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さくらの茶事 (1)

2010年04月04日 | 思い出の茶事
4月2日、「さくらの茶事」へお招きいただきました。
あいにく春の嵐が吹き荒れた日でした。
電車の遅れを予測して早目に家を出たのですが、
11時半の席入りを30分遅らせて頂き、到着しました。

ほっとして寄り付きへ入ると、
織部の火入れに灰が美しく整えられ、炭火が人待ち顔でした。
汲出しの湯には一片の桜が香りと甘味を添えています。

三畳台目向切の茶室へ席入りすると、
そこは「壷中日月長」の別天地でした。
正客のKさんと次客のIさんは初めてお伺いしたので
マンション内に創造された茶室空間に目を奪われています。

床のお軸は、極楽寺の西垣大道和尚の画賛です。
「天真」の字と兜をつけたかわいらしい童子の絵で、
中回しは荒磯緞子でしょうか。
ご亭主のお孫さんへの想いが溢れていました・・。

炉には煤竹の太い自在が吊るされ、
手取釜が掛けられていました。
江戸後期の作と言う手取釜は緩やかな八角形を成し、
八景地紋のある釜肌や色艶の味わいが深く心に残りました。

初炭手前が始まり、
釣釜の小上げや大上げに相当する自在の扱いを
興味津々拝見しました。
小上げは自在の先端についた紐を引っ張って調節し、
大上げは自在を下げて鉤を炉の向板に止め置きました。
袱紗で手取釜を扱う所作にも目を奪われました。
手取釜、好いですねぇ~。

懐石が運ばれ、
一文字が柔らかく甘く、頷きながら味わいました。
あとでご亭主から炊き方を詳しく教えて頂きました。
一手間も二手間も手の込んでいる本格的な懐石で、
私の簡便な家庭料理とは大違いです。

サヨリのお向う、鯛の煮物椀、筍の木の芽焼き、イカの雲丹焼き・・。
「どれも美味しく、盛り付けも美しく感心しました!
 懐石のお店が出せますね」と、お正客のKさん。

主菓子は「さくら」の煉りきり。
桜餡がしっとりと程好い甘味で、桜の香が漂いました。
毎回、手作りの菓子をご用意頂き、とても楽しみにしています。

                         
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