暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

山へ! 温泉へ!

2021年11月08日 | 

   (左奥に槍ヶ岳が見えます・・・展望台より)

 

茶事やお稽古が続きました・・・。

真の茶事の後にクールダウンを兼ねて、来たるべき炉開きや口切の行事に備えて気分転換が必要でした。

こんな時は自然に抱かれ、温泉に浸かるのが一番です。

10月19日から1泊2日で奥飛騨・西穂高方面へ車で出かけました。

           (朝6時半出発、中央高速道を奥飛騨へ向かいます)

        (秋の空の雲がステキでした・・・)

目指すは西穂高岳などの北アルプスの山々、もちろん登ることなどできませんので新穂高ロープウエイを乗り継いで終点の西穂高口駅へ到着。気温は7℃です。

展望台からは西から笠ヶ岳、槍ヶ岳、涸沢岳、奥穂高岳、西穂高岳、独標の大パノラマが続き、ゴジラの背のようなジャンダルムもちょっとだけ顔を出していました。

深呼吸をして山々と空と雲の景色を眺めます。何か心が洗われ、新鮮な空気が身体を満たしていくような気持になります。西穂高岳の登山口まで行ってみると、ケルンが積まれていて「ここから先は装備をし、登山経験のある者だけが進むように・・・」と言っているようでした。

宿泊は新穂高温泉の「穂高莊 山のホテル」。8月半ばに予約したのですが、コロナウイルス第5派のためキャンセルしたお宿にしました。

    (宿泊した新穂高温泉の「穂高莊 山のホテル」)

お目当ては温泉、特に露天風呂です。大きな混浴の露天風呂「山峡槍の湯」があって、湯あみを着て入りました。

すでに夕闇が迫っていて、露天風呂から見える広い河原にはススキの穂がなびき、深まる秋の寂しさを感じます。遠くには昼間近くに見たアルプスの山、近くの森陰には里の灯が温かな団欒を思わせて、いつまでもこのまま浸かっていたい露天風呂でした。すっかりお気に入りになり、また来たいです。

朝再び大きな露天風呂へ行くと、雨が降り出しました。山は昨夜から雪になったようで、白くぼやけて見えます。

ツレと私以外、入っている人はいません。相合傘で温泉に浸かっていると雨が強くなり、遠くに白く見えていた山々が急に見えなくなりました。

  (雨が霙のようになり、白く見えていた山が見えなくなりました・・・)

朝食後、ホテルのラウンジで錫杖岳の伏流水でたてたという珈琲をご馳走になり、9時半ころにホテルを出発。松本インターへ着くころにはすっかり雨も上がり、快晴です。

久しぶりにサンリツ服部美術館へ寄って「江戸のやきもの」展を見てきました。

古九谷、鍋島、伊万里の優品を堪能しましたが、ツレと二人の貸し切りでちょっと心配になりました・・・。

ケースの中に展示されていた「呉須染付木瓜香合」(しょう州窯、中国・明~清時代、17世紀)。我が家にある州浜形の染付木瓜香合の本歌がこちらで、ルーツがわかって嬉しかったです。

毎回楽しみにしている茶室風展示ケースは、

  備前徳利花入 銘「時雨」(備前、桃山~江戸時代17世紀)

  いたら貝鐶付姥口釜(伝 西村道仁、桃山~江戸時代17世紀)

  備前種壷水指(備前、桃山時代16~17世紀)

  紅葉蒔絵平棗 (江戸時代18世紀)

  出雲御所丸写茶碗 (出雲、江戸時代18世紀)

  茶杓 銘「舌切雀」 (杉木普斎 江戸時代17~18世紀) ・・・でした。

 

    (帰路は東富士有料道路を通り・・・・)

帰りはルート変更して、大槻インターから東富士有料通路を通り、東名へ向かいました。

10月今頃の東富士有料道路では素晴らしい景観が見れるはずなのです・・・期待通り、富士山とそのすそ野を一面に覆う、銀色のススキの穂波・・・もう!思わず何度も歓声を上げました。

お勧めの、日本一のススキの名所だと思っています。

さあ~、山も 温泉も 富士山とススキも 堪能したので、明日からまた頑張れそうです。 

 

 


真の茶事をしました・・・その3

2021年11月04日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

       広間(薄茶席)の設え(終了後の撮影です)

つづき)

広間で薄茶を差し上げました。

薄茶席は宗泰さんと宗正さんに設えとお点前をお願いしました。

お軸は「清風萬里秋」、御筆は紫野喝堂師です。

花は7種、ススキ、吾亦紅、芙蓉、リンドウ、ホトトギス、紫式部、野紺菊を桂篭に宗泰さんがステキに生けてくれました。

半東・宗貞さんと暁庵は末席に座り、ゆったりとお点前を拝見しながら、薄茶を美味しくいただきました。

各服点なので秋の風情の茶碗が勢ぞろい、一つ一つ趣を楽しみ、談笑しながらたっぷり頂戴しました。

愉しすぎたせいか、干菓子が全く思い出せません・・・トホホ。

薄茶が終わり、後段の料理をお出ししました。

後段は精進落としなので、生ものやお酒が出ます。小向、小吸、飯、5種の盛込などを手際よく運び出し、「別室で相伴させていただきます。ご用事の時はお手をお鳴らしください」と、いつも通リのセリフを言い、別室で宗貞さんと相伴していると、「パンパーンパーン」と手を叩く音がしました。

お酒が美味しいとかでお替わりのご用事でした。酒は新潟産の「麒麟」です。

するとまた、また(?)手が鳴らされ、お替わりのお酒をお持ちしました・・・皆さま、お酒もまわってとても楽しそうです(ヨカッタ!ヨカッタ!)。「カラスミ」が美味しくってお酒がことのほか進んだとか。

相伴も終わり、八寸を持ち出し、お酒をお注ぎして、後段が終了し膳を下げました。

・・・皆で最後のご挨拶をし、これにて真の茶事を終了しました。

 

   (別室で相伴しましたが、食べきれずタッパーに入れ持ち帰りました)

      (八寸・・・車海老と揚銀杏の彩がステキです)

初めての真の茶事の亭主が無事終わり、心から安堵しました。コロナウイルスも急速に鎮静化に向かっていて、延期も中止もなく真の茶事が出来ましたこと、社中の皆様にはさりげなく温かく随所でお助けいただき、感謝でございます・・・ありがとうございました!

とてもとても楽しい、好い茶事でございました・・・ヤミツキになるかも??

また真引次茶事が出来る機会があると嬉しいです。

 

茶事後に頂いたお手紙を記念に記します。

 Nさまより 

コロナ感染者もようやく下火になり、心なしか気が軽くなった気分の中、真の茶事を経験させていただき、ありがとうございました。

普段の茶事とは一種変わった雰囲気、設えの中の茶事には物珍しさも手伝い興味津々でした。

しかし、気心の知れた相客のお陰で楽しい時間を過ごすことが出来ました。

先生には次なる企画もあると思います。お体を厭いながら、いろいろな経験をさせてください。

初めての真の茶事、本当にありがとうございました。 お疲れが出ませんように。 Nより

 

 Mさまより 

謹啓 秋風の吹き渡る季節となりました

先生に於かれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます

過日は見事な御茶事にお招き頂き誠に有難うございました

K様 U様のお祝いということもあり 私自身が茶名拝受をした時の緊張感を思い出し 改めて茶道を修めるべく新たに精進を決意した次第です

また 真の茶事というなかなか経験の出来ない貴重な機会を頂き 大変うれしく思っております

先生の下でご指導頂ける事を感謝しての一席でございました

何卒 お疲れが出られませぬよう御身おいとい下さい。

本来ならばご挨拶に伺うべきところ書信にて失礼いたします  敬具   Mより

 

 Uさまより 

季節が一気に進み肌寒いくらいの日々が続いています。

先日は真の茶事にお招きいただき、ありがとうございました。

一生に一度巡り会えるかどうかの貴重な茶事を経験させていただけた事、心より感謝しております。

茶名拝受の上での参加で身もひきしまる思いが致しました。

緊張感あふれる中での先生のお点前の素敵だったこと・・・私も精進していこうと、気持ちを新たにいたしました。

又 心強い先輩のお仲間に恵まれている事にも感謝いたします。お茶の世界が増々広がって行くような楽しみがふくれあがります。

どうぞお疲れが出ませんようにお身体大切にお過ごしください   Uより

 

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真の茶事をしました・・・その2

2021年11月02日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

  北アルプス・槍ヶ岳 (真の茶事後の10月19日に撮影、新穂高ロープウェイにて)

(独り言・・・あんなに高い山はもちろん低い山にももう登れないけれど、茶の道は諦めずに高みをめざして歩んでいけたら・・・)

 

つづき)

皆で和やかにご挨拶を交わしました。

お軸(持参しました)の鵬雲斎大宗匠の賛について

  今日親聞獅子吼  
   他時定作鳳凰兒        宗室(花押)


  読み下しは、
    今日(こんにち)親シク獅子吼(ししく)ヲ聞ク
    他時(たじ)定メテ鳳凰ノ兒(ほうおうのこ)ト作(な)ル

「獅子吼(獅子が吠える声)は茶の道を歩く者にとって大きく聞こえたり、小さく聞こえたり、吠えているのに聞こえなかったり・・・各人の心持によって声の大きさも内容も様々に聞こえることでしょう。

でもその時々に聞こえる声にしっかりと耳を傾け、前を向いて茶の道を歩いてほしいと思います。

鳳凰の児とは仏教の「さとりの境地」を示していて、私たちもそれぞれ茶の道の目標を定め、その高みをめざして修練してまいりましょう」というようなお話をしました。

皆さまからお祝いの言葉を頂戴しました。さらに茶名を頂いた時のことや今までの歩みなど、言葉は短いけれど各人の茶道人生が垣間見られるお話が続き、もっともっと伺っていたい・・・と思いました。

KさんとUさんからも皆様の祝福を受けてお礼のご挨拶があり、「これからが本当のスタートだと思います。これからもご指導を宜しくお願いします」・・・お二人が茶名を頂いたことが嬉しく誇らしい気持でした。

たっぷり挨拶の時間を取っていてヨカッタ!・・・。 次は懐石です。

懐石(前段)は精進なので、すべて朱の器で出されます。酒はお出しせず、後段の精進落としでお出しします。

配膳は半東・宗貞さんと詰・宗正さんが手伝ってくれて本当に助かりました。

相伴時間をしっかり取ったので、別室で宗貞さんとゆっくりお相伴できました。美味しく、もどき料理が珍しく、いつもの懐石より量が少なめなのが丁度良く、完食しました。

 

     (お相伴の御膳です・・・別室にて)

   もどき料理の「焼」 (蓮根蒲焼 粉山椒)

    「平」 (胡麻豆腐、ひじき、隠元、生姜)

 

懐石が終わり、真之炭、お菓子、中立、真之行台子と続きます。

圧巻の7種のお菓子、茶席「加藤」が注文してくださった打出庵大黒屋(横浜市中区日ノ出町)の特製です。

○ 銘「微笑み」(笑顔まんじゅう)  ○ 銘「秋の峰」(練り切り)

○ 銘「初もみじ」(きんとん)    ○ 銘「名月」(小芋のこなし)

○ 銘「木の実」(外郎)       ○ 銘「山づと」(栗蒸し羊羹、棹物)

○ 銘「里の秋」(栗の渋皮煮、フルーツ)

小ぶりですが、勿論、食べきれず持参のタッパーに入れてお持ち帰りです。

        (圧巻の7種の菓子です・・・我が家で撮影)

 

中立の迎え付けで銅鑼を打ちました。

久しぶりの銅鑼に亭主としての心を込め、これから行う真之行台子を思いながら心を正して・・・「大・・・小・・中・中・・・大」

 

        (始まる前でまだ釜が掛かっていませんが・・・)

真之炭は宗貞さんにお願いし、暁庵は真之行台子をつとめました。

この日のために二人で修練を重ねたお点前を披露させていただきました。

頭でわかっていても身体が自然体に動かないと嫌なので、夜毎、虫の音の応援歌を聞きながら、自分自身の体力を見極めながら、真之行台子を毎日1回5日間修練しました。この時間は私にとって久しぶりに稽古に没頭できる、かけがいのない好い時間となりました・・・。

教授拝受の折にお家元から頂戴した緑の帛紗を初めて使いましたが、これも嬉しいことです。

「お服加減はいかがでしょうか?」

「大変結構でございます」と正客・宗等氏。後で伺ったら大服で飲むのがちょっと大変だったとか・・・。

各服点なので天目茶碗で一碗だけお点てして、次客さまからは宗貞さんが水屋から楽茶碗で濃茶をお持ち出ししました。

真之行台子が終わり総礼後に「どうぞ、広間へ動座をお願いいたします」(つづく)

 

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