通称“九州TLO”と呼ぶ産学連携機構九州(福岡市)の社長の坂本剛さんに先月、お目にかかりました。
TLOとは「技術移転機関」と呼ばれ、大学や公的研究機関(例えば産業技術総合研究所や理化学研究所)などの研究成果から産まれる特許などの知的財産を入手したいと希望する企業などに原則、有料で提供する組織です。その収益を大学や公的研究機関なんどの次の研究開発費に充てる技術移転事業を担う組織です。大学などの“知”を産業などに移転し、我々が住む社会をよくするのが使命です。
産学連携機構九州(福岡市)は承認TLO(技術移転機関)の1社で、主に九州大学の研究成果の技術移転を受け持つ株式会社です。平成12年(2000年)4月に九大の教員や企業などが出資して創業した株式会社です。九大の教員や学生の研究成果から産まれた特許やソフトウエア、ノウハウなどを使う権利である実施権を、企業などに有償で提供する事業を展開しています。いわゆる「特許を売る」と表現されることの多くは、実施権を有料で与えることです(特許そのものを売ることもあります)。“承認”TLOとは、文部科学省と経済産業省が、その技術移転事業などの正当性を認めていろいろと支援する、国が承認した技術移転機関です。
坂本さんは、産学連携機構九州の事実上の初めての“専任”社長です。代表取締役社長です。
これまでは、同社の社長は九州を代表する大企業の会長・社長や九大の副学長が兼任してきました。技術移転事業を受け持つTLOは、ある種のベンチャー企業そのものです。技術移転のプロが少数精鋭で技術移転事業を進めないと、なかなか採算がとれません。日本には現在、46機関の承認TLOがあります。実質的に黒字の所は少ないとみられています。今年になって数機関が承認TLOを辞退し、活動を停止しました。こうした厳しい状況のため、若い坂本さんに同社の経営を任せ、技術移転事業を機動的に進めていくことになったのだと想像しています。
坂本さんは、2010年3月末までは九大知的財産本部(IMAQ)の起業支援グループリーダーを務めていました。今回の社長就任に伴って、九大を退職し、社長に専念する姿勢を固めました。起業支援グループのリーダーとして、九大発ベンチャー企業などの創業支援などを手がけてきた実績を持つため、上司や同僚から「企業経営を支援してきたので、TLOというベンチャー企業を経営もできるだろう」といわれて、「実際に経営できることを示したいと思って、社長を引き受けた」と笑います。
同社は、九大から大学発ベンチャー企業支援と事業化支援の業務委託を受け、その支援活動を本格化させています。大学発ベンチャー企業を支援する事業は、一般的には多くの大学では知的財産本部(名称は各大学で異なる)が担当しています。九大も2009年度までは知的財産本部が担当していました。承認TLOが大学発ベンチャー企業の支援業務を中核業務に据えるのは珍しいケースです。今回、同社が独自路線を踏み出した理由は、九大が2010年3月末に知的財産本部を再編したからです。その一環として、起業支援業務を外部機関である産学連携機構九州に業務委託しました。
九大は大学発ベンチャー企業の創業数を順調に増やしている数少ない大学の一つです。経済産業省の大学連携推進課が平成14年度~20年度(2002年度から2008年度)まで実施した「大学発ベンチャーに関する基礎調査」によると、九大発ベンチャー企業の創業数は平成15年度(2003年度)に35社だったのが、毎年度ごとに順調に増え、同19年度(2007年度)に53社、20年度(2008年度)に55社、21年度(2009年度)に56社と、九大は大学発ベンチャー企業を創業させる有力大学に定着しています。
産学連携機構九州は、九大の教員や学生の研究成果などを基にベンチャー企業を創業する支援策として、アドバイザーなどが教員や学生などが立案した起業案件を検討し改良するメンタンリングを実施しています。これは以前の起業支援グループが実施してきた手法を引き付いだものです。さらに、この支援業務を強化するために「これまで築いてきた“福岡地域での大学発ベンチャー企業支援者ネットワーク”の拡充を図っていきたい」と、坂本さんは説明します。大学発ベンチャー企業の支援に実績を持つ、若い坂本さんが産学連携機構九州を活力ある企業に育て上げれば、赤字に苦しんでいる他の承認TLOにも、明るい展望が開けることになります。坂本さんの腕前を見守りたいと思います。技術移転実務者の方々が坂本さんを支援することによって、日本の技術移転事業を活発化させ、ベンチャー企業が多数産まれれば、日本の産業振興を図ることができます。
TLOとは「技術移転機関」と呼ばれ、大学や公的研究機関(例えば産業技術総合研究所や理化学研究所)などの研究成果から産まれる特許などの知的財産を入手したいと希望する企業などに原則、有料で提供する組織です。その収益を大学や公的研究機関なんどの次の研究開発費に充てる技術移転事業を担う組織です。大学などの“知”を産業などに移転し、我々が住む社会をよくするのが使命です。
産学連携機構九州(福岡市)は承認TLO(技術移転機関)の1社で、主に九州大学の研究成果の技術移転を受け持つ株式会社です。平成12年(2000年)4月に九大の教員や企業などが出資して創業した株式会社です。九大の教員や学生の研究成果から産まれた特許やソフトウエア、ノウハウなどを使う権利である実施権を、企業などに有償で提供する事業を展開しています。いわゆる「特許を売る」と表現されることの多くは、実施権を有料で与えることです(特許そのものを売ることもあります)。“承認”TLOとは、文部科学省と経済産業省が、その技術移転事業などの正当性を認めていろいろと支援する、国が承認した技術移転機関です。
坂本さんは、産学連携機構九州の事実上の初めての“専任”社長です。代表取締役社長です。
これまでは、同社の社長は九州を代表する大企業の会長・社長や九大の副学長が兼任してきました。技術移転事業を受け持つTLOは、ある種のベンチャー企業そのものです。技術移転のプロが少数精鋭で技術移転事業を進めないと、なかなか採算がとれません。日本には現在、46機関の承認TLOがあります。実質的に黒字の所は少ないとみられています。今年になって数機関が承認TLOを辞退し、活動を停止しました。こうした厳しい状況のため、若い坂本さんに同社の経営を任せ、技術移転事業を機動的に進めていくことになったのだと想像しています。
坂本さんは、2010年3月末までは九大知的財産本部(IMAQ)の起業支援グループリーダーを務めていました。今回の社長就任に伴って、九大を退職し、社長に専念する姿勢を固めました。起業支援グループのリーダーとして、九大発ベンチャー企業などの創業支援などを手がけてきた実績を持つため、上司や同僚から「企業経営を支援してきたので、TLOというベンチャー企業を経営もできるだろう」といわれて、「実際に経営できることを示したいと思って、社長を引き受けた」と笑います。
同社は、九大から大学発ベンチャー企業支援と事業化支援の業務委託を受け、その支援活動を本格化させています。大学発ベンチャー企業を支援する事業は、一般的には多くの大学では知的財産本部(名称は各大学で異なる)が担当しています。九大も2009年度までは知的財産本部が担当していました。承認TLOが大学発ベンチャー企業の支援業務を中核業務に据えるのは珍しいケースです。今回、同社が独自路線を踏み出した理由は、九大が2010年3月末に知的財産本部を再編したからです。その一環として、起業支援業務を外部機関である産学連携機構九州に業務委託しました。
九大は大学発ベンチャー企業の創業数を順調に増やしている数少ない大学の一つです。経済産業省の大学連携推進課が平成14年度~20年度(2002年度から2008年度)まで実施した「大学発ベンチャーに関する基礎調査」によると、九大発ベンチャー企業の創業数は平成15年度(2003年度)に35社だったのが、毎年度ごとに順調に増え、同19年度(2007年度)に53社、20年度(2008年度)に55社、21年度(2009年度)に56社と、九大は大学発ベンチャー企業を創業させる有力大学に定着しています。
産学連携機構九州は、九大の教員や学生の研究成果などを基にベンチャー企業を創業する支援策として、アドバイザーなどが教員や学生などが立案した起業案件を検討し改良するメンタンリングを実施しています。これは以前の起業支援グループが実施してきた手法を引き付いだものです。さらに、この支援業務を強化するために「これまで築いてきた“福岡地域での大学発ベンチャー企業支援者ネットワーク”の拡充を図っていきたい」と、坂本さんは説明します。大学発ベンチャー企業の支援に実績を持つ、若い坂本さんが産学連携機構九州を活力ある企業に育て上げれば、赤字に苦しんでいる他の承認TLOにも、明るい展望が開けることになります。坂本さんの腕前を見守りたいと思います。技術移転実務者の方々が坂本さんを支援することによって、日本の技術移転事業を活発化させ、ベンチャー企業が多数産まれれば、日本の産業振興を図ることができます。