ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

元素戦略領域合同シンポジウムを拝聴し、いろいろと考えました

2013年12月06日 | イノベーション
 2013年11月29日に東京都千代田区の有楽町で開催された「元素戦略領域合同 第一回公開シンポジウム」という一般の方にはあまり馴染みがなさそうな学術分野のシンポジウムを拝聴しました。

 文部科学省傘下の科学技術振興機構(JST)は“元素戦略”という学術分野を、「CREST」と「さきがけ」という研究制度によって進めています(この制度の中身はなかなか難しいので省略します)。その「CREST」と「さきがけ」という研究制度の下で進めている元素戦略の第一回公開シンポジウムです。



 “元素戦略”という言葉は、金属などの資源小国である日本が、炭素や窒素、酸素、ケイ素などの身近にある平凡な元素を組み合わせて、高機能な物質・材料を実用化したいという概念です。生物はタンパク質などによって、高度な反応を起こしていることから、平凡な元素を組み合わせて、高機能な物質・材料を実現しています。

 この“元素戦略”という考え方は、日本が世界に向けて発信した科学技術政策の一つであり、「現在多くの研究者が共通言語として使用されるようになっている」と説明されています。

 この「元素戦略」という概念は、科学技術振興機構(JST)が2004年4月に開催した「科学技術未来戦略ワークショップ(物質科学) 夢の材料の実現へ」において提唱されたものだそうです。

 さきがけ「新物質科学と倹素戦略」研究領域の研究総括を務めている東京工業大学の元素戦略センター長・教授の細野秀雄さんは、アルミナとカルシアというセメントの主成分を、高度な機能性セラミックスに産まれ変わらせた研究成果を上げたことで有名な方です。



 その高度な機能性セラミックスの考え方から、細野さんは、現在、シャープがスマートフォンのディスプレーに採用しているとテレビコマーシャルで宣伝している「IGZO」の基盤技術を築きました。

 「IGZO」とは、インジウム・ガリウム・亜鉛の酸化物という意味です。このIGZOを液晶を制御するTFT(薄膜トラジスター)に適用すると、電子移動度が小さいので消費電力が小さいという利点が生じます。

 一見、話が飛ぶように感じられると思いますが、酸化物の光機能・電子機能を追究する中で、細野さんの研究グループは、鉄系超伝導材料を発見します。

 1986年に“高温超電導物質”として、銅酸化物系が発見され、世界中で高温超電導物質の研究開発競争が始まりました。そして、細野さんの研究グループは、2006年に鉄系酸化物の超伝導材料を発見し、その後は高温超電導を示す温度が向上します。

 細野さんは「鉄系酸化物の超伝導材料は、イットリウム系やビスマス系などの実用化が先行する高温超電導ケーブルの開発品よりも製造しやすい可能性が高い」と説明します。これが事実ならば、かなりのインパクトを与えそうです。元素戦略の成果の一つです。