人気小説家の桐野夏生さんの新刊単行本「猿の見る夢」をやっと読み終えました。
この単行本は、2016年8月8日に講談社から発行されました。価格は1700円 プラス消費税です。
昨年8月に発行されたこの単行本は、実は一度は半分ほど読んで、そのままになっていました。中身がなかなかつらい内容だからです。男のくだらなさがなかなかつらいのです。
この小説の主人公の薄井正明は、女性衣料品の“製造小売業”の「OLIVE」の財務担当取締役です。それなりの地位の男性です。元々は、都市銀行大手の銀行マンで、担当していたOLIVEに46歳の時に出向させられ、“都落ち”と自称していました。
ところが、このOLIVEは元々は繊維問屋でしたが、その後に女性衣料品の“製造小売業”に進出して大成功し、売上げが年間2000億円を越える成長企業になりました。東証一部に上場しましたが、その中心人物の会長の織場義一は、会社の規模は大きくなりましたが、会社は自分の意向がそのまま効く“個人商店”意識が抜けない事実上は昔ながらの経営者です。
その織場会長から、相談案件がきます。同社社長の福原光則が出入りの外部企業の女性従業員に対して、セクハラ・パワハラがらみの発言を不用意にして、抗議が来たという相談内容です。社長の福原光則は、長女の婿さんです。
このOLIVEという新進気鋭の女性衣料品の“製造小売業”の経営幹部は、旧来の男性社会を生きてきた男です。
そして、この主人公の薄井正明は、約10歳年下の女性友達の愛人がいます。毎月、3万円を“手当”として渡しています(食費代としては、少ないと苦情をいわれています)。
主人公は、東京都心に自宅を持ち、それなりに優秀な子供が二人いて、世間的には経済的には困らない上流階級の人間です。
自分の母親の死去から、一気に話は進みます。認知症などの症状があった母親の看病を妹夫妻に任せて、自分はほとんど見舞いにも行っていなかった事態が明らかになります。
この母親は、そこそこの広さの自宅を持っていましたが、「母親を介護施設に入居させるために、自宅の土地の半分を銀行の抵当に入れて、介護資金を得ていた」と、妹夫婦から通告されます。
実は、主人公の薄井正明の妻は、この母親の土地半分を遺産として受け取り、自分の長男との二世代住宅を建てるプランを持っていました。どうも、これができなくなりそうです。
しかも、自分の母親の葬式会場に、愛人の女性がやって来て、妻に愛人の存在がばれてしまいます。
結局、紆余曲折を経て、この愛人とは分かれることになり、しかも妻からの離婚を言い渡され、慰謝料を請求されます。将来の退職金である企業年金の相当分を渡すことになりそうです。
結局、自分の妻には愛も無く、愛人と好きな生活をしてきたツケとして、多くのものを失います。しかし、主人公は自分のせいだと感じていません。その場の感情に従って生きてきた人生の何が問題なのかは気がついていません。
この小説を書いた桐野夏生さんは、現在、社会を動かしている男性たちの中身の無さを、具体的に淡々と書いています。なかなか厳しい指摘です。
あらすじには、書いていませんが、この小説には、予言者を自称する長峰という老女がトリックスターとして、いろいろと予言します。この予言者を自称する長峰という老女は不思議な存在です。
この小説の題名の“猿”とは、無自覚に我が儘に生きる男のことを指すようです。
この単行本は、2016年8月8日に講談社から発行されました。価格は1700円 プラス消費税です。
昨年8月に発行されたこの単行本は、実は一度は半分ほど読んで、そのままになっていました。中身がなかなかつらい内容だからです。男のくだらなさがなかなかつらいのです。
この小説の主人公の薄井正明は、女性衣料品の“製造小売業”の「OLIVE」の財務担当取締役です。それなりの地位の男性です。元々は、都市銀行大手の銀行マンで、担当していたOLIVEに46歳の時に出向させられ、“都落ち”と自称していました。
ところが、このOLIVEは元々は繊維問屋でしたが、その後に女性衣料品の“製造小売業”に進出して大成功し、売上げが年間2000億円を越える成長企業になりました。東証一部に上場しましたが、その中心人物の会長の織場義一は、会社の規模は大きくなりましたが、会社は自分の意向がそのまま効く“個人商店”意識が抜けない事実上は昔ながらの経営者です。
その織場会長から、相談案件がきます。同社社長の福原光則が出入りの外部企業の女性従業員に対して、セクハラ・パワハラがらみの発言を不用意にして、抗議が来たという相談内容です。社長の福原光則は、長女の婿さんです。
このOLIVEという新進気鋭の女性衣料品の“製造小売業”の経営幹部は、旧来の男性社会を生きてきた男です。
そして、この主人公の薄井正明は、約10歳年下の女性友達の愛人がいます。毎月、3万円を“手当”として渡しています(食費代としては、少ないと苦情をいわれています)。
主人公は、東京都心に自宅を持ち、それなりに優秀な子供が二人いて、世間的には経済的には困らない上流階級の人間です。
自分の母親の死去から、一気に話は進みます。認知症などの症状があった母親の看病を妹夫妻に任せて、自分はほとんど見舞いにも行っていなかった事態が明らかになります。
この母親は、そこそこの広さの自宅を持っていましたが、「母親を介護施設に入居させるために、自宅の土地の半分を銀行の抵当に入れて、介護資金を得ていた」と、妹夫婦から通告されます。
実は、主人公の薄井正明の妻は、この母親の土地半分を遺産として受け取り、自分の長男との二世代住宅を建てるプランを持っていました。どうも、これができなくなりそうです。
しかも、自分の母親の葬式会場に、愛人の女性がやって来て、妻に愛人の存在がばれてしまいます。
結局、紆余曲折を経て、この愛人とは分かれることになり、しかも妻からの離婚を言い渡され、慰謝料を請求されます。将来の退職金である企業年金の相当分を渡すことになりそうです。
結局、自分の妻には愛も無く、愛人と好きな生活をしてきたツケとして、多くのものを失います。しかし、主人公は自分のせいだと感じていません。その場の感情に従って生きてきた人生の何が問題なのかは気がついていません。
この小説を書いた桐野夏生さんは、現在、社会を動かしている男性たちの中身の無さを、具体的に淡々と書いています。なかなか厳しい指摘です。
あらすじには、書いていませんが、この小説には、予言者を自称する長峰という老女がトリックスターとして、いろいろと予言します。この予言者を自称する長峰という老女は不思議な存在です。
この小説の題名の“猿”とは、無自覚に我が儘に生きる男のことを指すようです。