○ 日本で種類株式発行会社といえば、業績の良くない会社が配当優先株式を発行したり、ベンチャーキャピタル(VC)が出資するときに配当優先・残余財産優先・取締役等の選任権を付した株式を発行させたりする場合などで、例外的に、伊藤園が優先株式を発行してその株券を上場していますが、一般的には、それほどポピュラーではないですね。一方、米国では、VC投資等も一般的ですから種々の種類株式が発行されています。残余財産分配でも、普通株主への残余財産分配への参加は当然として、「3x Participating Liquidation Preference」というような、がめつい残余財産分配請求権をつけるVCも居るようです。ベンチャー投資は当然零になるリスクがありますから、ルーレットの様に儲けようとするのかもしれません。
○ 日本の会社法では、種類株式の定義はどうなっているのでしょう。その前に、2条の定義からですね。「種類株式発行会社=剰余金の配当その他の第108条1項各号に掲げる事項について内容の異なる2以上の種類の株式を発行する株式会社をいう」としています。また「種類株主総会=種類株主(種類株式発行会社におけるある種類の株式の株主をいう。以下同じ。)の総会をいう」としています。従い、普通株式しか発行していない会社が、定款変更して定款に新たに規定する配当優先株式を発行すると種類株式発行会社になります。今までの普通株式も、変身?して種類株式になりますが、従来の経緯からこの株主を「普通株主」と呼ぶと、普通株主の株主総会も「普通株主による種類株主総会」と呼ぶということで、ややこしくなりますね。
○ 108条1項は、①剰余金の配当、②残余財産の分配、③株主総会において議決権を行使することができる事項、④譲渡制限、⑤取得請求権、⑥取得条項、⑦全部取得条項、⑧拒否権、⑨取締役・監査役選任権について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができることしています。
○ 米国の模範事業会社法では、どのように規定しているのでしょうか。6章の株式と配当の6.01条AUTHORIZED SHARESの(b)(c)(e)(f)を見てみましょう。
(b) 項では、基本定款(Articles of Incorporation)で必ず規定する事項ですね。
(1) one or more classes or series of shares that together have unlimited voting rights, (全部の議事に議決権を有する株式)と
(2) one or more classes or series of shares that together are entitled to receive the net assets of the corporation upon dissolution.(残余財産の分配)
(c) 項では基本定款は、以下の様な one or more classes or series of shares を規定して良いとしています。
(1) 法に別途定めの無い限り、議決権について「special, conditional, or limited voting rights, or no right to vote」の株式の発行ができる。
(2) 「redeemable or convertible 株式」ですが、その償還請求や転換請求を下記で行う事ができるとしています。
(i) at the option of the corporation, the shareholder, or another person or upon the occurrence of a specified event;
(ii) for cash, indebtedness, securities, or other property; and
(iii) at prices and in amounts specified, or determined in accordance with a formula;
(3) entitle the holders to distributions calculated in any manner, including dividends that may be cumulative, noncumulative, or partially cumulative; or
(4) have preference over any other class or series of shares with respect to distributions, including distributions upon the dissolution of the corporation.
(e)項では「Any of the terms of shares may vary among holders of the same class or series so long as such variations are expressly set forth in the articles of incorporation」としています。日本では同一種類の株式は同じですが、米国では基本定款に明記すればVariationがあっても良いとしています。株主平等の原則が、日本よりも緩いですね。
(f) 項では「The description of the preferences, rights and limitations of classes or series of shares in subsection (c) is not exhaustive」ということで、創意工夫次第で、又はがめついVCや弁護士がいろんな種類の株式を案出しているようですね。
米国では多種多様な種類の株式が発行されているようです。珍種、変種の株式があれば、教えて頂けるとありがたいですね。
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