○ 株式の英語はShareあるいはStockですね。両者の違いはあるのでしょうか?結論を先に言いますと、米国では殆ど差はありません。かつてはStockとは、株式会社の株主全体が所有する株式の全体のことであり、個々の株式を意味するShareの集合概念がStockと言われたようです。Delaware会社法では、この用法に従って書いている節もありますが、模範事業会社法では、shareとしているようです。
○ 英国の会社法ではStockというのは、英米法辞典を見ると、「不定額面株式」と日本語に訳されていました。Shareは、1株10ポンドとかの額面で発行して、全額払込後100ポンド額面等のstockに転換しうるものであるという説明がされています。
○ では、日本の会社法の英訳を政府がプロジェクトとしてやりましたが、これによれば、株式会社は、Stock Companyとして株式はshareとしています。Stockというのはshareの集合概念として扱っている感じです。
○ では、普通株式はcommon stockとかcommon shareですね。しかし、普通株式という言葉は会社法には定義もありません。Common shareという言葉は米国でも一般的ですが、実は模範事業会社法には出てきません。
○ では種類株式はどのように言っているのでしょうか。日本の会社法では、従来の言い方からは違和感を覚える、一見すると良く意味の分からない言葉が登場していますが、種類株式については、以下の様に英訳がされています。
種類株式 = Class Shares
取得請求権付株式 = Shares with Put Option
取得条項付株式 = Shares subject to Call
全部取得条項付種類株式 = Class Shares subject to Wholly Call
○ また利益配当等に関する種類株式としては、例えば利益配当優先株式としては、未払配当分を後年度の利益で優先的に填補する累積的優先株式と、填補しないものが非累積的優先株式、また利益の多い年度に、規定された優先配当を受けた後に普通株式と並んで利益配当を受けるものとして参加的優先株式、受けないもの非参加的優先株式がありますが、こういった規定は日本の会社法にはありません。定款で各会社が決めるべきものとしています。
○ 一方米国では、慣れ親しんだ、また多分外国で一般的な言葉が使われています。
Redeemable、 convertible、preference (preferred share)、cumulative, noncumulative, or partially cumulative
従い、例えば参加型残余財産優先ということなら、Participating Liquidation Preferenceと言えばいいわけですね。
○ 会社法108条1項では、「異なる種類の株式」ということで種類株式を規定しています。①剰余金の配当、②残余財産の分配、③株主総会において議決権を行使することができる事項、④譲渡制限、⑤取得請求権、⑥取得条項、⑦全部取得条項、⑧拒否権、⑨種類株主総会での取締役・監査役選任権について内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができることしています。
⑤⑥⑦については、定め方がおかしいですね。そのほかの種類株式は株式の内容・性質を基準にしています。ところがこれらは、株式を対象にしているのではなく、その株式の株主と会社の関係を言っています。つまり同じ次元で規定しているのでは無いのです。海外の会社法の定め方と異なりますし、定め方もおかしいと思います。
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