○ 大企業の100%子会社・孫会社等では、代表取締役は親会社が指名・選出・選定したものが就任し、取締役設置会社の場合は他の取締役は、形式的にまた適当に従業員を指名して3名以上の要件を揃えることがしばしば見受けられます。こういった会社では、取締役会もろくに開催されることもありません。登記のときだけ、総会・取締役会を開催せずに総会議事録・取締役会議事録を担当者が作成して登記を行っています。即ち、代表取締役が、親会社の指示を受けて、他の取締役に何も知らせずに、また取締役会等開催せずに独断専行の経営を行っている場合が結構あると言うことです。今回は、名目的であろうとなかろうと取締役になっている取締役の代表取締役等に対する監視義務についてです。<o:p></o:p>
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○ 具体的には会社法362条2項②号の取締役会は「取締役の職務の執行の監督」という職務を行う義務があり、取締役会といっても実際はその構成員である取締役の義務をどのように捉えるかですね。
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○ 名目的取締役や非常勤社外取締役は、やはり名目的・非常勤で社外でもあり種々の事情がありますので、代表取締役に対する監視義務違反の責任を認める判例は必ずしも多くないようですが、そうかと言って代表取締役の不正行為を見て見ぬ振りをしていれば、取締役の監視義務違反の責任を問われる事もあります。名目的・非常勤社外で無い取締役の場合は、なおさら監視義務違反の責任を負いますね。<o:p></o:p>
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○ 最判S48.5.22(民集27巻5号655頁)を引用してみましょう。「株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般ににつき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務を有するものと解すべきである」と述べています。<o:p></o:p>
○ 代表取締役の不正行為等につき、取引先等の第三者から、任務懈怠のあった代表取締役に加えて、他の取締役についても、代表取締役の業務執行を監視する義務を怠ったことを理由に、損害賠償を追求されることが結構あるようです。判例では、代表取締役だけでなく、他の取締役の担当範囲についても、自分の担当範囲ではないからと言って当然責任が無いとは言えないとされています。<o:p></o:p>
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○ では監視義務の具体的内容ですが、調査義務と是正義務からなると言われています。取締役は会社業務の全般を把握して不適正な業務執行については、それを取締役会を通じて(取締役会が機能していない場合には、取締役として独自に可能な範囲で)調査して、不正行為等が明らかになれば、これを是正する義務があります。具体的には、取締役会を開催して代表取締役に不正行為の是正勧告をする。それでも止めない代表取締役なら取締役会で反乱を起こして解職する(362条2項③号)等もありますね。また監査役は385条により、会社に著しい損害が生じるおそれがあるときは取締役の行為の差し止めができますので、この条文を背景にして監査役と手を組んで、代表取締役の不正行為等を止めさせることも必要ですね。<o:p></o:p>
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○ まあ、世の中の社長の中には、結構口では遵法だとか言っている割には、法律を知らない代表取締役もいますし、これを逆手に取って不正行為を止めさせないといけない場合も考えられますね。<o:p></o:p>
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