○ 昔、私は英国Scotlandのある企業A社と取引を行っていましたが、あるとき銀行(そのころはまだそれほど大きくないRBSでしたが)が、Receiver(収益管理人)を選任したというニュースが飛び込んできました。即ち、その会社A社は倒産したわけですね。そのとき膨大なメール(当事はTelex)がきましたが、そのなかに銀行がFloating Chargeをcrystallizeしたという事が記載されていました。ということで、今回は英国の浮動担保の話です。(尚、英国では、ScotlandとWalesでは、少し法律が違うので要注意)
○ Floating Chargeという言い方は英国ですが、国により呼び方に違いはあっても、英法系の国の担保の制度はこの形が基本です。
○ Floating Chargeは、動産・不動産・無形資産等を含めて会社の全資産に対し、現在存在するもののみならず、将来その会社が取得する全資産を対象として設定する担保です。ですから会社が存続して事業を継続(going concern)することが前提で設定されます。全資産と言いましたが、債権者との約定で、担保資産の範囲を限定することも勿論可能です。Floating Chargeを設定しても、その会社は通常の業務(Ordinary course of business)を行いますし、通常業務の範囲内で資産処分ができます。
○ Floating Chargeは登記事項ですね。登記しておかないと第三者に対抗できません。一方、全財産ではなく特定の資産に対しての担保は、Fixed Charge(あるいはMortgage等)といいます。これも当然登記事項ですね。では、このFixed ChargeとFloating Chargeとの優劣、登記の日の関係はどのようになっているのでしょうか。結論は、登記の日の前後を問わずFixed Chargeが優先するのですね。日本の抵当権の制度とは異なりますね
英国では、一般に銀行等はFloating Chargeを設定しています。ですからこれに優先させるには、融資のときにFixed Chargeの設定を行う必要がありますね。
○ 債務者が支払停止したり、融資の返済ができなくなると、それまでFloatしてふらふらしていた浮動担保が結晶化(dormantしていた担保がcrystallize)して固まったしまうわけですね。CrystallizationしたときにFixed Chargeに変化したと考える訳ですね。Crystallizeすれば、Receiverが選任されて、資産管理・処分権は当該Receiverが行う事になります。このReceiverの注意点は、特定債権者が選任するわけですから、Receiverの責務は、選任した債権者の為に働くということです。裁判所選任の管財人等が行う、債権者に平等(勿論担保保有債権者と無担保債権者の扱いは違いますが)などということではありませんね。
○ では最後に少し戻ってFloating Chargeの設定についてです。Floating Chargeを設定するには、債務者が債務を負担していることを証明する必要があります。従い債務者が債務を負担しているという証書=debentureが必要ですね。このdebentureを作成し債権者にdeliver=交付し、この債務の返済を担保するためにFloating Chargeを設定することになります。尚、融資金額が多額になったり協調融資のときは、信託会社(受託会社=trustee)を入れて、融資者(Creditor)を受益者(Beneficiary)として、信託証書(trust deed)を作成して行う事がありますね。
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