○ 神田教授の会社法(7版P241)では、資本金・準備金の減少は、原則として、株主総会決議と債権者保護手続(449条)が必要である。株主総会の特別決議が必要なのは基礎的変更であり、保護手続きが必要なのは、資本金・準備金は会社の責任財産の基準数字であり、債権者の利益に重大な影響が及ぶからであるといわれています。しかし引き続いて、会社法は、資本金・準備金の額の減少を、計算数値の減少と考え、資本金・準備金減少は、金額だけを減少するのであるから、総会決議を必要とすべき理由が無く、立法論としては、これを不要とすべきであると言われています。
○ ここでの疑問点は、①総会決議を必要とすべき理由が無く、立法論としては不要といわれるのは、重要な点が欠落した視点ではないのかと言うこと、②準備金の減少を株主総会の普通決議に何故したのか(例外あり。448条参照)、及び③債権者保護手続が、果たしてどれだけ意味有る手続きかという3点ですね。
尚、債権者保護規定の一般的なコメントは「会社法の債権者保護規定について」下記↓をご参照下さい。
http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070207
○ 特定株主からの株式の有償取得のケースで言えば、出資金の払い戻しのために自社の株式を取得して自己株として、その後株式の消却を行うということになりますね。普通株の自己株取得には、1) 分配可能剰余金があること、2)株主総会の特別決議(買取請求株主は決議に参加出来ない)、3)買取請求した株主以外の株主にも通知を出して同じ買取請求できるようにすること(Tag Along条項)等が条件ですね。
○ 実際は、いわゆる形式上の資本減少、即ちマイナスの利益剰余金を消すための資本金・準備金の減少のケースが大半だと思います。即ち、経営者の経営がうまく行かず、欠損を出したのを、資本金・準備金を減少させ、こんご稼得を目指す利益剰余金で、将来の剰余金分配に備える場合が多いと思います。資本金の減少は、原則は特別決議ですが、(a)定時株主総会で、& (b) 減少する資本金の額が欠損の額を越えない場合は、総会の普通決議ですね。準備金の減少も、資本金の減少とほぼ同じですね。
① 立法論として総会決議は不要というのはどんなものでしょうね。赤字を出した経営者の経営責任を追及するチャンスを逃してしまいますね。経営陣は、きちっと利益剰余金の減少を説明すべきですし、株主は、やはり経営責任の追及をすべきものだと思います。
② 原則特別決議ですが、上記の様に、定時株主総会の普通決議でもOKとなりました。
即ち、増資を行い、そのとき増資の額の半分迄を資本準備金にすることが出来ますね。
例えば、全株式譲渡制限会社で、第三者割当増資をするときは総会の特別決議が必要ですね(定款で別段の定めのある場合は除く)。ですから、この第三者に20-30%ぐらいの持ち株比率になる株式を高値で取得してもらい、その半額を準備金とする。そしてこの準備金の減少決議を、既存の株主が賛成する普通決議で行い、「その他資本剰余金」にしてしまう。
その他資本剰余金は、分配可能剰余金ですね。当該第三者の払込で増えた準備金を、既存の株主を含む株主で、その他資本剰余金として分配することが可能ですね。こういった事例も考えられます。普通決議にせず特別決議であるべきですね。
③ 債権者保護手続についての説明は不思議ですね。債権者の利益に重大な影響が及ぶからであると言われています。資本金・準備金の減少は「計算数値の減少」と言われています。会社の現金・預金の現実の有り高の減少ではありません。計算数値の減少が、「債権者への支払い能力に対する重大な影響」があるのですか?支払い能力との関係での考察・解説がありません。債権者保護手続というのは、債権者への支払い能力に影響のある場合に必要な手続きですよね。原則として債権者保護手続が必要であるとする何の説得力ある説明にもなっていません。まあ、この会社は赤字出してるから、ちょっと注意してねというぐらいの通知の効果はあるとは思いますけれども。
―個別の債権者異議申述催告書にかえて、公告を、官報に加えて日刊新聞紙又は電子公告すれば、各別の催告書の送付は不要となりました。まあこんな公告をまともに読んでいる人は、現実には殆どいませんね。合併・企業再編のときも同じですが、こんな手続は、実際上殆ど役に立っていないというのが私の意見です。
―債権者への支払いというのは、月末払いとか決める場合も多いですが、頻繁に発生します。債権者保護手続中にも現金・預金の有り高は変動します。債権者への支払いというのは、支払期日に支払う現金・預金があるのかということと、そういった資金需要に応じた資金繰り・Cash Flowで、資金を回転させているかという問題です。
「計算数値の減少」と「債権者保護手続」の必要性について、説得力ある記載をしている会社法の本を、私は見たことがありません。
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