○ 未だによく分からないものに、資本金の法的性質とは何か?即ち、会社法において資本金の定義とは何かということです。勿論経理的には元手ということでしょうけど、法律的に何かという定義は見たことがありません。どのように考えれば良いのでしょうか?
○ 資本金という制度は、会社債権者の保護、言い換えれば株主と会社債権者との利害調整のために設けられた制度である(神田 会社法7版 P238)とか、言われていますが、資本金の制度は、全くとは言いませんが、現実的には殆ど債権者保護には役立ちません。資本金が1円でも会社を設立できるようになりました。これが債権者保護ですか?株主との利害調整というのも、ちょっとピントがぼけていると私は考えています。神田教授も言われているように、「資本金・準備金の増減といっても、BS上の資本金・準備金の額という数字が増減することを意味するのであって、これによって現実の会社財産の増減を意味するわけではない」からですね。債権者は基本的には金銭債権の債権者ですから、この債権者への支払いは、支払い期日に現・預金を保有し、その支払いを行う事が債権者への約束です。分配可能剰余金が存在しないときには、株主への配当はしなくてもよい配当とは次元の異なる話です。会社は、キャッシュフローで動いています。やはりもっとキャッシュフローというものをどう考えるのかという視点が必要なのではないでしょうか?
○ 会社法446条では、年度末の剰余金の算出方法が規定されています。即ち、以下ですね。
(イ 資産の額 + ロ 自己株式の帳簿価額の合計額)-( ハ 負債の額 + ニ 資本金及び準備金の額の合計額 + ホ 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額)
自己株式を無視すれば、剰余金=資産の額―負債の額―資本金―準備金 ですね。
○ 資産は、繰延資産を除けば基本的には権利ですね。売掛金等の債権や物権(棚卸資産や固定資産等)です。それに、少し貸倒引当金という一種の見積もり金額がマイナスされますが。負債は、基本的に債務であり義務ですね。引当金も負債性引当金であり、退職給付引当金等は、一種の労働債務ですね。ところが、純資産となると、何なのか分からなくなります。
○ 純資産とは、神田教授の言われるように、資産マイナス負債の計算上の金額であり、資本金+(資本・利益)剰余金相当の現金があるわけでもなく、またその金額を保持しておく義務もありません。資本金を払い込めば、直ちに現・預金になります。剰余金は、資産となっています。純資産は、2種類の金額の計算値ですね。株主の出資金等の資本金と資本剰余金、資本金等を利用して経営者の力量で蓄積した利益剰余金ですね。
剰余金の分配にしても、分配可能額を純資産の項目をもとに算出しますが、例えば分配可能額が計算上あっても、現・預金がなければ、配当は出来ません。現・預金が不足すれば、借入を起こして借金をして、配当をすることになります。
○ 事業譲渡や合併(パーチェス法の適用される税法上の非適格合併の場合)では、原則として会計上の資産・負債=法律上の権利・義務は承継されますが、引当金・準備金・圧縮記帳に関する特別勘定等は、承継会社に承継されません(退職給付引当金は承継されますね。これは、一種の負債・債務だし、従業員にとり重要ですからね)。但し、過去の費用の性質を持つ繰延資産や一括償却資産等は、費用&損金として処理されますね。資産・負債は承継されるけれども、資本金は承継されるとは考えないわけですね。資本金・資本剰余金・利益剰余金等はあくまで、計算の結果出てくる数字ですからね。評価換算差額等も数字ですね。これは、資産であり有価証券ですね。持ち合い株等の含み益・含み損等の数字を直接BSに反映させています。含み益があれば、これを売却した場合の税金部分を繰延税金負債に計上して、残りが評価換算差額に計上されますね。
○ 純資産は、資産マイナス負債という数字というのが定義というのもどうかと思います。資本金とは何か、こんなに重要な概念に定義が無いというのも納得がいきませんね。学者に定義を聞いてみたいものですね。
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