○ 日本では、米国企業と異なり、オーナー型企業を除き、一般的には取締役の報酬が極端に高額になることはないですね。日産は、取締役の報酬等をかなり高くしましたが、それでも1人2-3億円ぐらいでしょう(ゴーンさんは数億円?)。明確なコミットメントが求められ、これが達成できなければ、賞与額のみならず役員をはずされかねない風土をゴーンさんが作りました。しかし最近は突然の乱気流・奈落の底の状況でボーナスなどは無しと決めたようですね。
- 理由は簡単です。取締役等の役員は、従業員の中での成功者(能力では無く、うまく立ち回ってなった者や同じ派閥・部門のおかげで運だけでなった者も日本では非常に多い)であり、従業員の昇格の延長線上にある。従い、取締役となっても従業員兼務取締役が多いですし、平取締役から常務・専務の役付取締役へ昇役しても、一挙に報酬等がジャンプするわけでもありません。代表取締役となっても同じですね。ただ、代表取締役社長等は、責任が一挙に重くなりますので、少しはジャンプする場合もあると思いますが。
- 従業員と取締役との間の報酬等について、極端に差を設ければ、殆ど能力的に変わらないが、上司と運に恵まれずに閑職管理職で止まっている多くの同僚・同期からの恨み・嫉妬等に晒されます。そうかと言って、やはり役員になれば、従業員より多くの報酬等を貰います。従って社内でおおっぴらに開示されると、やはり気まずい思いもします。出来るだけ隠す傾向にあります。
○ 会社法361条①には取締役の報酬等について定めています。即ち、報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(=報酬等)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定めることになっています。
1 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
2 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
3 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
○ しかし、実態としては、多くの企業で取締役・監査役全員の、支給限度額のみを総会決議で承認取得し、個人別支給内容は、取締役会更に代表取締役に委任の上、内規に従って等と言って秘密にしています。条文の趣旨は、個人別の支給額、具体的な算定方法、その他具体的内容を定めるとしているのに、限度額・総枠だけの決め方でも有効と最高裁の企業よりの判例があるためですね。また、これを踏まえて会社法施行規則121IVイ(社外役員は124VIイ)で、事業報告での内容でも、総額表示を容認しているからですね。
○ 取締役についてはお手盛り防止の報酬額規制(*)として(監査役については取締役からの影響排除の独立性確保のため)、定款に記載又は総会決議ですが、定款に記載する例は殆どありませんので総会決議で承認ですが、最近徐々に多少の改善は見られるものの、個人別明細を秘匿する悪習が改善されていませんね。
* お手盛り防止というよりも、総会で選任されるので選任の条件として総会が決定すると考えるべき(神田 会社法7版P189)という見解もありますが、実質は、現経営陣の首脳が後継・新任役員を指名している実態もあり、また、仮にそのように考えるなら、同時に各取締役候補者毎に報酬額を決めるべきですが、これまた実態を反映していませんね。
○ 一方、委員会設置会社の場合は、総会決議は不要ですね。法404③で 報酬委員会は、執行役等(執行役&取締役)の個人別の報酬等の内容を決定するとしています。従い、自分達の報酬等は自分で決める訳ですね。お手盛りですね。委員会は過半数の委員が社外取締役なのでお手盛りの危険が軽減される等と言っている人がいますが、大嘘ですね。米国のレーマンブラザーズの会長は数年で400億円、ゴールドマンサックスの会長は500億円の報酬を得ていました。これも報酬委員会が承認しているんでしょ。
- 今のところ、日本で高額ということで問題視されていないのは、上記の通り企業文化・慣行的理由によるものだと思います。社外取締役も、他社の役員が多いですからね。社長に、自分の10倍の報酬あげるよとは言えないですよね。日本では、金持ちへの嫉妬が根深い社会ですからね。
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