とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

書評『日本会議―戦前回帰への情念』(山崎雅弘著)

2016-07-19 08:23:47 | 読書
 安倍晋三首相のようにいわゆる「国粋主義」的な政治家が増えてきたという実感があります。憲法改正、集団的自衛権、道徳教育、靖国参拝など、以前ではタブーとされてきたことも堂々と話し始められています。それはもちろんいいことです。言論の自由は保障されていますし、自分の主義主張をはっきりすることが悪いことであるはずがありません。しかし、急激な右傾化傾向は大いに気にかかります。「日本会議」という組織がその右傾化傾向の中核を担う団体であり、その成り立ちから思想までを批判的に紹介したのがこの本です。

 日本会議が主張していることのいくつかは納得します。日本の伝統である家族主義を大切にして、みんなで助け合う精神を美徳とする、確かにいいことだと思います。また、日本が戦争においてすべてが悪かったという風評も事実ではない。多くの日本人はよかれと思って戦争に参加したわけだし、全否定するような戦後の一部のとらえ方に対して反感したい気持ちはわからなくもない。

 しかし、戦争の責任は当時の日本の中枢を担っていた人たちにあるはずだし、A級戦犯を祀った靖国神社を国の要人が参拝することは大きな問題があるのは明らかです。それを否定しては戦後に育った私たちは自国を信じられなくなります。もちろん日本と戦った国も日本を信用しなくなります。そもそも日本は敗戦を受け止めそれを反省することによって平和主義、反戦思想を育ててきました。日本会議はそれを否定しているように思います。

 また、日本会議の影響が色濃く反映されたと思われる自民党の憲法改正案によると、天皇の位置づけが象徴という立場から一歩進んで、「日本の元首」という言葉が加えられています。自民党は大きな違いはないというでしょうが、これは大きな違いです。いざというときに政治の天皇利用が可能になります。天皇家の人たちは長い歴史の中で何度も政治に利用されてきました。だからこそ政治的に独立しながら国民の象徴としての現在の在り方の中での在り方を必死に考え実践し、今、とてもいい在り方になっていると思います。それなのにそれをなぜ変えなければいけないのでしょう。

 この本は日本会議による現状の日本の危機をわかりやすく伝えてくれます。

 ただし、不満もあります。一番不思議なのは、日本会議がなでここまで大きくなったのかです。そもそもそこになにがあるのか、この本ではそこまでふれられていません。ぜひそこが知りたいと思います。
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