とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評『ザ・空気Ver.2 誰も書いてはならぬ』(二兎社)

2018-08-06 11:41:05 | 演劇
2018年8月5日 シベールアリーナ
作・演出: 永井愛
出演 安田成美 / 眞島秀和 / 馬渕英里何 / 柳下大 / 松尾貴史

この芝居は報道各社の政治部が入居する国会記者会館を舞台にしている。登場するのは、「官邸記者クラブ」に所属する大手新聞社のエリート記者たちだ。この芝居における現政権はあきらかにウソを言っている。国民誰もが気付いていながら他の人が総理をやるよりはまだましなのではないかという理由で支持率が落ちない。もちろん現在の安倍政権そのものであり、観客はそうとるしかない。

エリート記者たちの思惑はそれぞれである。総理大臣と苦楽をともにしたから味方したいと思う人、ジャーナリストとしての正義をつらぬこうとする人、顔色をうかがいながらどっちつかずの立場にいる人。そうみんな空気を読んでいる。あるいは空気をつくろうとしてる。

正しいことがわかっていながら、それが実行できないのは苦しみだ。その苦しみと戦いながらも、正しいことが「空気」によって揺さぶられていく。いつの間にか「正しいこと」が本当は正しくないのではないかと思えてしまう一瞬がある。そうなればもはや「正しいこと」の力はなくなる。「空気」の力は軽いようで思い。

戯画化しているのでおもしい。観客は笑いながらその笑いが自分に返ってくることを感じる。後に残るのはおもしろさよりもむなしさである。とてもよくできた芝居である。

コメント
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