二兎社の『ザ・空気ver.3 そして彼は去った』を見ました。近年マスコミも政治評論家も政府寄りになっています。政府批判をしてはいけないような「空気」も漂っています。現在の日本の雰囲気を表現した演劇です。わかりやすいストーリーであり、とても面白い作品です。問題の本質がどこにあるのかを考えると、国民ひとりひとりの問題であることも伝わってきます。
作・演出 永井 愛
出演 佐藤B作 和田正人 韓英恵 金子大地 神野三鈴
(あらすじ)
かつては政府に批判的な記者であった政治評論家の横松は、現在は政府寄りの意見しか言わなくなっている。しかし現在の横松の姿に幻滅している報道番組のチーフ・プロデューサー星野がある策略をはかる。その策略が予想以上の効果を表し、予想外にも横松はその日の番組の中で政権を転覆させるような爆弾発言をすることになる。星野は喜び興奮する。しかし、それがひょんなことから局内にばれて、上層部からの反対圧力がかかることになる。横松はやろうとするが、星野は最後の最後には自分では抱えきれなくなり、横松の出演を取りやめにする。
今の日本では政府が主導権を持ち、報道番組やワイドショーなどでも政府寄りの意見を言う人が多くなっています。中には政府広報ではないかと思えるような政治評論家もいます。政府寄りの世論を作り上げようとしているようにも思えます。このような状況に怒りを覚えている人も多くいると思います。私もその一人です。
その状況を作り上げているのは、マスコミの情けなさや政府の情報操作のうまさもあるのかもしれません。しかし実はいざとなると批判の矛先を緩めてしまう一人一人の国民にも責任はあるのです。
振り返って考えてみると、私も自分の言動が周りの人たちの迷惑になるのではないかと考えていまい、自分に強い自信がもてません。だから政治に限らず様々なことで自分の主張をゆるめてしまう傾向があります。しかしそのために正義が失われるのだとすれば、私たちは正義を貫き通す強い意志をもたなければいけないのです。
ただし、それは現実に言うほど簡単なものではありません。自らの弱さを認め、だからこそ団結して助け合いながら間違いを正していくことが必要なのだと思います。そのことを気づかせてくれるすばらしい演劇でした。