宝塚歌劇団のパワハラ問題

　宝塚歌劇団のパワハラ問題は、近年のハラスメント問題について考えさせられる大きな問題です。

　宝塚歌劇団に所属する25歳の女性が亡くなった問題で、劇団側が調査結果を公表しました。劇団側は「過重労働」については認めましたが、上級生からのパワハラ行為があったということは確認できないとしました。それに対して遺族側は再検証すべきだとすぐに反論しました。

　検証チームは主に劇団員からの聞き取りによってパワハラは認められないとしていますが、検証チームが主に行ったのは劇大関係者への聞き取り調査です。これは遺族側からすれば納得できないのは当然です。劇団員は先輩に忖度してしまいます。パワハラがあったとは言いにくい。

　そもそも組織の中には「伝統」があり、それが組織内を結びつける要因になっています。劇団員にとってみればその「伝統」は「当たり前」のものでありパワハラだとは思わないのが普通です。だから忖度以前の問題として、今日的にはパワハラと認められる行為であっても、劇団員としてはパワハラだという感覚がないということもあるのです。

　さらには劇団を守りたいと言う意識が働き、劇団員たちは、自分たちにはパワハラという認識はなかったという風に思い込んだとも考えられるのです。

　学校における教師の生徒に対するパワハラ、部活動における「いじめ」が後をたたないのもこういう理由によります。厳しい教師は意外に人気があります。厳しい教師はその厳しさゆえに生徒はひたすら勉強せざるを得ず、その結果成績が上がります。生徒もその教師のおかげで勉強が「わかる」ようになり、いつの間にか信奉し、カリスマ的な存在となってしまします。一方ではついていけなくなり、不登校になってしまうケースがあります。学校におけるトラブルの典型的な例です。

　部活動も「伝統」があり、それがチームに一体感を作り、強くなる要因になっています。だから部活動におけるイジメ、パワハラの問題は絶えることがありません。

　今回の宝塚の問題、誰かが主犯という問題ではないように思います。だから劇団側を非難するだけでは解決しないと思います。しかし劇団はもう一度丁寧に検証していくことが必要な気がします。さまざまな観点から見ていく必要があるように感じます。