とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

「地球上の『旅人』」を授業でどう扱うべきなのか

2019-06-06 19:20:34 | 国語
 三省堂の現代文Bの教科書『精選現代文B改訂版』を使っている。やさしめの教科書である。その一番最初にヤマザキマリさんの「地球上の『旅人』」という随想文が出てくる。この教材がどう扱うべきなのか悩んでしまった。とらえどころがない文章なのである。

 ヤマザキマリさんは漫画家で『テルマエ・ロマエ』の作者の方だという。こどものころに渡り鳥や『ニルスの不思議な旅』にあこがれ、旅への願望が増長し、さまざまなところを旅する生活を続けてきた。実際に旅をしなくとも、白い紙の上で、さまざまない場所に暮らすさまざまな人々を、過去と現在を混ぜ合わせながら描き出してきた。絵を描くことで時空を旅し続けたのである。

 そして最後にこう言う。

 「地球という、本質的には辺境などどこにもない、水と土でできている惑星の上に、たくさんの多様な生き物たちと同様に、人間という動物である自分が生きているということの、いたってシンプルな確認。そして、旅人である限り、どこへ行っても〝よそ者の傍観者〟であり続ける緊張感のもたらす心地のよさ。帰属を問われない透明人間でいられることの気楽さ。」

 この文章から何を学べばいいのだろう。読解するほどのむずかしさはない。共感すべき内容でもないし、批判すべき内容でもない。

 ヤマザキマリさんに興味のある人ならば、この人はこういう体験をして、こういう考え方でいるのかと読む価値があるかもしれない。しかし、この教材にはそれ以上のものはない。この教材を教科書の一番最初に持ってくる意味がわからない。

 もしこの教材を用いるとすれば、地域社会に生きることの意義を語る文章とともに単元を構成し、グローバル社会について考えてみるとか、想像力について考えさせる評論や小説の導入として用いるなどの工夫が必要である。

 この教材は茂木健一郎氏の「最初のペンギン」と単元となっており、指導書では、
「新年度の最初の単元で両教材を取り上げることには、これからの学習に向けての意欲的なメッセージとしても行こうな素材となるであろう。」

 と単元設定の狙いを紹介している。この単元設定には論理がみられない。
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