テレビドラマの『孤独のグルメ』の映画化作品、『劇映画孤独のグルメ』を見ました。ドラマの雰囲気が好きだったので、映画版は少し違和感がありましたが、それでもこれは映画ならではの感動がありました。心にしみる作品でした。
テレビドラマの『孤独のドラマ』は井之頭五郎が始めて行く店で食べることがメインに描かれます。それ以外の場面はその食事のシーンとあまり関係がありません。とは言えまったく関係がないわけではなく、俳句の取り合わせのような効果があります。なんとなく感応しさっていて、不思議な滑稽さと、時にはしみじみとした人情味をかんじたりします。「軽み」に近いものなのかもしれません。
それに対して今回の映画は、結構筋立てがはっきりしています。思い出の味の再現と、料理人の再生を描いていて、いつもの『孤独のグルメ』の軽さを求めていたので、最初は「ちょっと違うんじゃないかなあ」と感じてしまいました。しかし、逆にありえないようなストーリー展開とそこにリアルな人間描写が組み合わされて、アンバランスなバランスとでも言うべき綱渡り的ないい加減さが描かれます。遊び心がちりばめられながら、人間ドラマが描写されているのです。
もちろんそれを支えているのは食べることです。日本の文化が一番発達したのは食べることなのかもしれません。
俳諧や、戯作、あるいは水墨画や浮世絵、江戸文化が結晶したような映画です。これこそ日本文化の伝統なのかもしれません。
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