抜歯は言霊を重視する思想の現れ
以下、安田教授の著述内容である。”平尾良光氏等の東アジアの青銅器の鉛同位体分析もまた、3500年前の気候悪化によって、メコン川や紅河を下って、東南アジアへと向かう民族移動があったことを明らかにしている。平尾氏等がプンスナイ遺跡の青銅器の鉛同位体分析を行った結果、原料は大半が中国江南産のものであることが明らかとなった。青銅器を持った人々が江南から移動したり、原料が運ばれてきたことを示す。
抜歯の風習は台湾の少数民族に最近まで残存した。抜歯の風習は漢族にはなく、その周辺の少数民族に残っている。その抜歯の風習が盛んなことと、文字をもたないことの間には深い関係があるように思われる。
(津雲貝塚出土縄文抜歯頭骨 笠岡市郷土館蔵 出典・Wikiwand)
抜歯をもたない中原の畑作牧畜民はいち早く文字を発明し、黄河文明を創造した。これに対し、長江文明には文字がなかった。少数民族の稲作漁撈民がつくりだした長江文明は何故文字文化を発明させなかったのか。その原因に抜歯がふかくかかわっていたであろう。抜歯の風習をもち長江文明を発展させた少数民族は文字より「言霊」を重視した。それゆえ文字文化を発明しなかった。「言霊」の出る口は聖なる場所で、それは邪気を払うものであった。”・・・以上である。
言霊(ことだま)とは、一般的には日本において言葉に宿ると信じられた霊的な力のこと。言魂とも書く。声に出した言葉が、現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良いことが起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた。
この言霊が文字をつくらなかった理由とされているが、この因果関係はハッキリしないものの、言霊の概念は今日の日本の習俗に残っている。尚、南越とか大越と呼ぶ、ベトナムや東南アジア深部に残っているのか、不勉強で知らない。
<続く>