毎週水曜日に<古墳時代の七不思議>の七回シリーズを掲載するとしていたが、先週は失念していた。そこで今回は、その2回目として、『大きな馬に小さな人物』とのテーマで掲載する。
古墳時代の馬は、馬埴輪と装飾古墳の壁画に表されている。それは不思議なことに大きな馬に対し、人物が異常に小さく造形されている不思議である。
しかし、例外も存在する。先ずは、それから紹介してみることにする。それは、石川県小松市矢田野エジリ古墳から出土した、騎馬人物と馬曳人の埴輪である。写真は、小松市HPから拝借したものである。
手前の馬曳人は右手を掲げ、貴人が騎乗する馬の手綱を持ち、先導する様子を表わしたものと思われる。見ると、騎乗の人物と馬の大きさに違和感は感じない。縮尺比は同じようだ。しかしこのような比率の騎馬人物埴輪は、当該矢田野エジリ古墳が初例で我が国唯一のものと思われる。
これが示唆するのは、騎馬の人物が被葬者の生前の姿を表し、馬曳の人物は騎乗している被葬者の従者を示していると考えられる。
それと対称的な埴輪と壁画表現が在る。騎馬人物は馬が大きく、人物が異常に小さく表現されている。先ず、装飾古墳である福岡県桂川町王塚古墳の壁画である。
左右に4頭の馬が描かれ、そこには不釣り合いな小さな人物が描かれている。やや見ずらいので、人物と馬にスポットを当てた絵を下に示しておく。
このように、不釣り合いの事例を壁画で示したが、それは埴輪にも存在する。
高原西原古墳群出土・騎馬人物埴輪 太田市HPより
そこで、なぜ人物が異常に小さい不釣り合いが発生しているのか、との疑問である。
この小さな人物は、被葬者の魂を表し、馬は被葬者の魂を常世に運ぶ役割を担ったものである。それゆえ同じ騎馬人物であるが、冒頭の馬曳人物を伴う騎馬人物埴輪とは、本質的にことなることになる。このように人物を小さく造形することにより、被葬者の魂を表現していたのである。
<次週水曜に続く>
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