コロナで広がりうる教育格差
新型コロナの感染拡大を受けた緊急事態宣言。外出自粛や休校により、収入が減少しながら食費や光熱費、生活用品の負担が増えて悲鳴を上げる声が全国に、いや世界に広がっています。
日本では7人に1人の子どもが貧困で、その多くがシングルマザーの家庭であるということを別の記事でお伝えしました。もちろん母子家庭でも貧困でない家庭も多くあります。ただ、事故や病気で夫を失ったり、離婚で養育費をもらえなかったりといった環境で、子どもを抱えて正社員や高額の収入を得る職に就くことが難しい事情も少なくありません。
4月6日21時の時点の調査では、緊急事態宣言が最初に出された7都府県で学校が始まった幼稚園及び小中高校は公立校11%、国立は9%、それ以外の都道府県では公立85%、国立74%でした(文部科学省「学校の新学期開始状況において」)。しかし緊急事態宣言の全国拡大により、7都府県以外でも休校が広がることが考えられます。
そんな中、母子家庭に限らず心配されているのが新型コロナの影響による「教育格差」です。私学やインターナショナルスクールでは、迅速に双方向のオンライン授業を取り入れている学校もあります。都内の公立校でも動画配信をスタートさせつつありますが、双方向の「授業」とは異なり、ICT教育が遅れ、ほとんど教育がストップしている現実は否めません。それにより、日本で子どもの教育格差が広がってしまうのではないかという不安の声が広がっているのです。私学だったり、公立でも自費で教育を続けることができるか否かで、通常の格差よりも大きく差がついてしまうことになりかねません。
また、将来の自立できるようになるには、教育をきちんと受けることも必要です。その子供の能力を活かせる高校や高専に専門学校、大学で教育を受けることで、経済力を身につけられるようになります。子どもの能力を生かしたい、夢を叶えたい、そんな思いで必死に働く親は多いことでしょう。しかし、この新型コロナの影響で、非正規雇用やアルバイト、パートの仕事が激減している場合、収入が減少し、学校は休校でも学費は納めなければならない状況もありえるのです。
事故などで父親をなくした遺児の奨学金支援を行っているあしなが育英会では、高校3年生になる遺児家庭に緊急アンケートを行いました。そこにあるリアルな声を受け、募金のストックを切り崩し、遺児ひとりあたり15万円を生活費として支給することを決定しました。
アンケートの一部から、前回の記事ではご紹介しきれなかったリアルな声をそのままお届けします。進路がどうなるのか、学びがどうなるのかという問題は、貧困家庭だけの問題ではありません。もちろん今は感染拡大を防ぐことが一番ですが、すべての子どももきちんと教育を受けることのできる環境作りはとても大切です。同時に、教育の前に生活が苦しい家庭がある。そういう現状を忘れてはなりません。
スポーツ推薦や奨学金がどうなるのか…
「あしなが育英会 奨学生保護者(おかあさん)緊急アンケート」
【調査内容と方法】 「今困っていること」「今後不安なこと」「政府にのぞむこと」「あしなが育英会にのぞむこと」の4つを、QRコードからWEBで回答
【回答率】 50.8%(281/553)
【回答時期】 2020年4月1日~4月10日
【対象と回答数】 全都道府県で、2019年度に高校2年生(この4月に新3年生)の奨学生がいる553世帯
*以下、アンケートの回答は、回答時期に返答のあったものです。一律10万円支給公表の前のものですが、原文ママ公開いたします。
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三重県
【今、一番困っていることは】
子供が家にいるので食費や光熱費が例年より高くなっている。トイレットペーパーやティッシュなどの日用品の消耗も早い。副業でしていたデイケアでのバイトがなくなり、約4万円、手取りの収入が減って困っている。生活の援助をしてくれている祖父母が飲食店を経営しているが 、給食の納品ができなくなり、さらに来店客も激減し売上が減ったため、弟の中学入学の準備用品の援助をしてもらえなくなった。
【今後、不安なことはなんですか】
部活動の大会の開催が中止になりそうで心配。春の全国選抜も中止になったため、内申書に書ける結果が減ってしまった。インターハイがどうなるのか、大会がなくなると大学へのスポーツ推薦がどうなるのか? 大会が無くなるなら、勉強での受験に切り替えていく方向に進ませた方がよいのか、進路を悩んでいる。
【政府にのぞむことはなんですか】
生活費の支給。車の税金の免除。年金や健康保険の減額もしくは免除など。
広島県
【今、一番困っていることは】
子供が休みでほとんど家にいます。塾や学校の入学式卒業式などマスク着用が義務付けられていますが、マスクがなく、出席できません。
【今後、不安なことはなんですか】
子供が専門学校で他県に通学しているが、ちょうど春休みで帰省しています。春休み明け後など専門学校のコロナウィルスへの対策状況などがHPに詳しく載っていないのが不安なのと、学校の対応が遅いのが困ります。学校があるのが感染者が多い都市の為、新学期から通学させるのが不安です。新学期からの学費は支払いましたが、出席しなければ単位が足りなくなり他の奨学金の審査から落ちてしまうのではないかと思います。なので 学校側が出席停止にしない限りは、通学させるために感染が多い都市に行かなければいけないのが 不安です。
【政府にのぞむことはなんですか】
マスクを購入できるようにしてほしい。新学期になると更に患者が増えると思うので、医療崩壊にならないような対策。
自粛で就活もできない
長崎県
【今、一番困っていることは】
子供の不登校も落ち着いたので就活をしようとした矢先の学校休校と自粛で、ハローワークにも行けなくなりました。現在収入もなく、食べ盛りの兄弟は常にお腹を空かせた状態で食費がすごくかかります。
【今後、不安なことはなんですか】
部活動ができないので、閉鎖するまで体育館を有料で借りて自主練させていました。閉鎖中は公園に連れていって運動させていました。就活しないといけないのに、今仕事を開始する勇気がでません。遺族年金と、あしながさんが頼りです。長男は県外のオープンスクールも自粛していて、これが長引くとどうなるか不安です。
【政府にのぞむことはなんですか】
生活費支給をお願いしたいです。
岐阜県
【今、一番困っていることは】
3月にあるはずだった、むすめの研修旅行が中止になりました。ずいぶん前から研修旅行費用を、積みたてで支払っていました。ひとり約15万円です。電話で担任先生にうかがいをたてましたが、 先生からもはっきりとした返事はいただけません でした。その後も、返金に関してのことでは、なにも進展がありません。政府からの対応さえあれば、学生や、先生、旅行業者や、わたくしたち保護者も、今のような、不安や心配ばかりする必要はなかったはずです。
【今後、不安なことはなんですか】
むすめの大学受験や、生活費などの心配と、わたしの、就活したいのに、職安に行くとコロナウイルスに感染しないかという心配。会社が、求人を取り消したりするのではという心配。
【政府にのぞむことはなんですか】
両親がいない学生や、片親の学生に、生活費や学費の支給をしてほしいです。
石川県
【今、一番困っていることは】
収入が減って来てるところに、毎日子供も一緒にいるので食費がすごくかかって大変。今年度高校入学する子がいるので準備費もかかります。控除とかは後からになるので最初は全額支払わないといけないので何かと苦しいです。
【今後、不安なことはなんですか】
収入の面が不安定で子供にかかる費用がすぐ出せるか不安。
【政府にのぞむことはなんですか】
生活費の支給、学費の支援。
正社員は守っても、アルバイトは守ってくれない
岡山県
【今、一番困っていることは】
仕事は、「暇なので来なくて結構です」という感じでほぼ行けないです。食費も普段よりかかります。本当に不安です。夫を病気で亡くし、母ひとり子ひとりです。嫌だけどカードを作ってお金を借りる事を考えています。
【今後、不安なことはなんですか】
感染が一番怖いです。私が死んだら息子がひとりになるので。
【政府にのぞむことはなんですか】
本当に助けて欲しいです。
福岡県
【今、一番困っていることは】
子供がいるので光熱費がかかり、更に自宅待機で収入が減りました。学費が払えない。
【今後、不安なことはなんですか】
在宅は社員のみで、アルバイトは出社で、上司からの話も無い。社員はコロナから守るのですが、アルバイトは無視。コロナ感染が怖い。収入も減った。学費が払えないのでどうしようかと思っています。
【政府にのぞむことはなんですか】
学費の支援。私学は設備費や修学旅行で年間100万かかる。
岡山県
【今、一番困っていることは】
政府が打ち出している休業補償は小学生までの子供がいる家庭に限られており、私の職場でも休業した場合はそれに準じることになりうちは中高生のため対象外です。ですが、やはり日中の食事の用意や、子供に関する手続きや家事などに追われて週に3日しか職場に行けません。末締めの給料のためおそらく4月はいつもの半分くらいに給料が落ち込みます。新学期の準備や進学準備にお金 のかかる4月、5月をどう乗り越えていったらいい のか途方に暮れています。
【今後、不安なことはなんですか】
このままいけば学校の休みがまた増えるのではないか? とビクビクしている状況ですが、子供を危険にさらしてまで行かせたいとも思わないので、 国の方針に従って行動するしかないのがつらいところです。リモートワークが出来ない仕事をしていますので、子供たちが家にいる以上、休みを取って対応するしかない日が続きます。時給で働いているので来月、再来月と給料が激減するのがわかっていて、心配で夜もなかなか眠れません。
【政府にのぞむことはなんですか】
休業補償する世帯の子供の年齢を18歳までに上げて補償してほしい。また生活困窮世帯がすぐに手に出来る一時金を早く成立してほしい。