歌う介護士

看取りをしたご入居者から「あなたの声は癒される」と。お一人一人を思い浮かべながら、ずっと歌い続けています。

うちの子どこへつれてったの!?

2008-10-18 01:40:02 | Weblog
夕食後から訴えが決まって多くなるCさんである。
今夜は食後は落ち着いていた。(担当スタッフは、ホッ)

20時。
自分の担当フロアが片付いたので、Cさんのフロアの体調不良の人の様子見がてら訪室していたらCさんの声がする。
ノックと共に、
「ねえ、うちの子どこにいるの?」
「え?*一さんのこと?」
「違うわよ、3番目の、まだ2ヶ月の子よ。」

さすがの私も一瞬返答に迷う。(なんのこと?)
「3番目の子?なんて名前の子なの?」
「え~とね、なんていったっけな、シュンイチだったかな、忘れちゃった。」
「シュンチャン?赤ちゃんは別のところに預かってるのよ.」
「そりゃそうでしょけど、つれてきて欲しいのよ。」


いわゆる認知症の周辺症状で、混乱したり作話するには必ず原因がある。
身近なところでは、テレビを見ていて現実と結びつけたり、
テレビドラマやニュースが作話や不穏の原因になっているのがけっこう多い。
ただ、本人とずっと一緒にいるわけでないので気づかないだけだ。

Cさんは83歳。
女性は痔の出血を生理が始まった!になるし、
施設入居しておなか周りが太った奥さんが「浮気して!」と大喧嘩している場面に出くわしたこともある。(これは嫉妬妄想だが)

さすがに、赤ちゃんを連れてきて!には困った。
「もう寝ているから寝かしてあげてよ。」
「どこにいるの?」
「上の階のお部屋よ。」
「くたびれちゃって、膝が痛いのよ。」
「じゃ、暖めて休みましょう。明日の朝まで預かるから心配しないでね。」
居室まで送ってパジャマに着替えるように勧める。
「良かったわ、この年で赤ん坊なんて育てられないもの。」

と、一旦落ち着いてベッドに入ったのだが、
2時間後(もう私は帰る時間)、血相変えて「子供を連れてくるっていうから待ってたのに!」と、エレベーターで申し送りしていたフロアまで来て、私じゃなく20代の男性スタッフにいきなり怒り出す。
「え?え?え?僕ですか!?」
こういうときは思い込まれるスタッフがいる。
恐らく普段の対応が原因ではないかと思う。

入居者のターゲットになるスタッフというのは同じスタッフ。
「あの人はだますから大嫌い。」といわれていた若い女性スタッフ、
別な入居者には「うちの主人に色目を使う。」と焼餅の対象にされていた。
今の施設ではないが、こういうこともあった。


認知症の人たちは本音で生きている。
もし嫌われたとしたら、その原因は自分にある。
一緒にいて楽しく心地良い感情は残るし、傷つけられた心も残る。
人物誤認をするといわれるが、
人の識別は最後まで可能ではないかと私は思う。


3人目の子供?を探していたCさん、深夜になって息子さんが電話に出てくれたので、やっと落ち着いたそうだ。
息子さんは、3人目の子供なんかいるはずがない!と話したと思うが、
最初の段階で、私がそういったら反応はどうだったか?
現実から離れている最中の人に、現実を認識させると、
不穏が増大する時と、納得できる時がある。
Cさんはレビー小体型。
一旦穏やかになったので良しとしたのだが・・・。