歌う介護士

看取りをしたご入居者から「あなたの声は癒される」と。お一人一人を思い浮かべながら、ずっと歌い続けています。

介護される理由、されない自由?

2008-10-20 21:27:47 | Weblog
介護でよく使われる「その人らしく生きる」。

うちの会社のケアの考え方に、
入居者のなさりたいように生活をフォローする。
起きたい時に起きて、寝たいときに休み、食べたい時に食べる。
(と、言っても食事を取っておけるのは調理後2時間である)


社内研修で出たいくつかの事例を紹介しよう。

*生活リズムが出来てきて、毎日が活性化しADL評価が上昇している方。
「その方は、ホントは居室で自由にしていたかったのでは?
  その方にとって生活が活性化してよかったと思っているんでしょうか?」

『この方は発症するまで精力的に働いてきた方です。引きこもりでも人嫌いでもなかった。アルツハイマーという病気が引き起こした症状ではありませんか?その方に合わせるケアというのは、その方の発症までの生活や性格も背景にしなくてはいけないのでは?』

*超高齢者で、終末期と見られている方の食事形態変更
「今、おかゆに刻み食ですが、ミキサー食に変更した方が食べられるのでは?」

『前に調子が悪かった時、ミキサー食にしたことがあったけれど、嫌われました。
食事の形を変えて食べられる状態ではないのでは?栄養補助食は多少飲めるのだから、そちらで対応しませんか?』
気分が良いと「かゆ・キザミ」でも自分で食べようとする方です。

*甘い菓子とか菓子パンしか食べない
「今のままでいいんでしょうか?」

『ピック病の症状の一つだから、そこを判っていて欲しい。甘い食べ物を大量に摂るという症状がある。(最近知りました) 栄養状態には良くないのは判っているけど、とにかくカロリーを取る方が先。2ヶ月で3キロ以上減っている。家族も甘いものは食べるという認識は持っている。』
この方、栄養補助食品も全くダメ。水分の補給も苦心している。
(過去に同じ症状の経験があるが、そのときは経験不足で苦い思い出となった。)

*体調を崩す前は、パン・常食で半分摂取していた方。体調不良で食べられなくなり、1ヶ月経過して、かゆ・キザミで全量食べている。
「体調も戻ったし、入れ歯も直ったし、常食に戻しては?」

『ご本人に聞いたら、いまのママが食べやすいと。硬いものは噛み難くて食べられないそう。常食の時は半分しか食べてなかったが、今は全量食べられている。』
(本人の意思ということで、しばらく継続。)

*「よく似合うと誉めてくれた!」と、3週間も洋服を着替えてくれない方。
「どうしましょう?」

『誰が誉めたの!(笑い)』
次の入浴日まで待てずに、ちょうど帰る途中ばったり出会った娘さんに依頼。
家族ぐるみのケアの助かるところ。本人は3週間もたっているとは考えもしていない。この方、こだわり始めるとなかなか手ごわい方である。

*座る場所にこだわる方

他の入居者が座っていてもどかせて座らないときがすまない。場所への執着が強くなるタイプ。一度決めてしまうと移動できなくなる。


認知症の人は、座る場所も変えないほうが良いといわれることがある。
認知症の症状によって異なるので全てに当てはまるわけではない。元来の性格も影響すると私は考えている。


スタッフが起きていて欲しいと勧める入居者の別な一面(思い)を聞いた。
「何をするにも手を借りないと出来ないから、起こしてもらうのも悪いと思うよ。おやつは好きだから起きて食べたいと思うけどね。」
これも本音だろう。
「面倒だ、起きたくない!」のも本音。

阿修羅の如く多面的なのだ。